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河口から山頂へ 〜ランニングジャーニー・Zero to Summit〜Vol. 1 山梨篇その5

【2日目】 富士吉田─剣ヶ峰─五合目 30.0km

04:00 起床。6人部屋の二段ベッドを抜け出し、無料サービスのパンとシリアルをいただき、宿をあとにする。富士山駅のコインロッカーに不要な荷物を預け、仕上げにトイレを探すも駅周辺にはみあたらずあせった。しかたなく先ほど出たばかりの宿に戻る。朝から読書をしていた男にこれから走りに行くんですかときかれ、えぇ富士山までと答えると、ヒャーとかヒューとか声にならない声をあげた。

05:13 スタート。標高八百メートルの富士山駅から三千メートル上までひたすら登るのみ。これまで富士山には馬返しからトレランで2度、富士宮口と須走口から山スキーで2度の計4度登ったことがあるが、この高度差を一気に登るのははじめてだ。ましてや100キロを走った翌日なので自分でもどうなるのか想像もつかず、ただ己を信じるしかない。
 コンビニで一日分の食糧を調達。このさき水は入手不可と思われるので、量には気をつかった。宿で詰めた水1.5リットルに加え、0.5リットルのペットボトル4本の計3.5リットルはさすがに重く、ザックがタップンタップン揺れる。六合目から上はピストン登山なので、余るようならデポすればいいのだが、Zero to Summit秋田編で経験した水不足がトラウマとなってやや過剰気味だ。でもあとで足りなくなるよりは絶対マシである。
 富士浅間神社で神様に手を合わせ、仕切り直し。薄暗い遊歩道ルートを走りはじめたが微妙に走りづらい。先は長いので省エネのためすぐに舗装道に戻る。数台の車が追い越していった。中の茶屋につくと十数人の男たちがいてこれから何かをおっぱじめるようである。何があるんだろう。

頂上までは登りません

 じつは懸念していることがある。富士山は先々週で山じまいをしている。なのでもしかしたら、とくに軽装であるぼくは誰かにとがめられるのではないか。バツが悪いことに計画書は出してないし、登山条例も調べていない。アタマの固い人たちにイチャモンをつけられたとき、ここまで100キロ走ってきたんだから登らせてくれと泣きついて通るかどうか。小心者のぼくはそれが気になっているのである。
 中の茶屋のさきで作業着の男たちが四、五人で歩いていたので、何をしているんですかとおそるおそるきいてみると、禁止されているキノコ採取のみまわりをしているとのこと。そうなんですか、お疲れさまです。ちなみにキノコは福島原発事故の影響で放射線量が高く、食用にはならないらしい。と、ここで敵の応酬がきた。
「ところでオタクはどこまで?」(ほらきた!)
「まさか上まで行かないでしょ」(え、えぇ、もちろんです)
「五合目まで?」(は、はい、そうです、もう上までは登れませんもんねぇ・・・)
「そうか。うんうん、そうだよな。お気をつけて!」(ふぅ〜)
 ひとまずやり過ごしたが、まさか頂上まで登るつもりじゃないよな! という正義オーラがばんばん出ていた(気がした)。ひと安心どころか、ますます気になってきた。この先どうなるんだろう。さきを急ぐと、パトロール隊をあざ笑うかのように、どうみてもキノコ狩り風情の家族づれがけっこうウロウロしている。いいぞいいぞ、もっと彼らの注意を引いて、違反登山者から気をそらせてくれ。

 

 

文・写真提供:二神浩晃

(その6へつづく)


“Zero to Summit 47” Vol. 1 山梨編

実施日:2017年9月23日(土)~24日(日)

最高峰:富士山(剣ヶ峰)3,775.5m

ルート:相模川水系(相模川、桂川)

距 離:135.7km

 

本連載の「河口から山頂へ 〜ランニングジャーニー・Zero to Summit〜」プロローグはコチラ

河口から山頂へ 〜ランニングジャーニー・Zero to Summit〜プロローグ

VOL.1山梨篇その1はコチラ

河口から山頂へ 〜ランニングジャーニー・Zero to Summit〜Vol. 1 山梨篇その1

VOL.1山梨篇その2はコチラ

河口から山頂へ 〜ランニングジャーニー・Zero to Summit〜Vol. 1 山梨篇その2

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河口から山頂へ 〜ランニングジャーニー・Zero to Summit〜Vol. 1 山梨篇その3

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河口から山頂へ 〜ランニングジャーニー・Zero to Summit〜Vol. 1 山梨篇その4

 

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水流ランナー 二神浩晃(ふたがみひろあき)