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田邊優貴子の研究と旅「そんな極地に魅せられて」その5

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極地のフィールドワーカーの田邊優貴子さんとの

突撃!雑談インタビュー第五回。

今回は南極のフィールドワークで大変だったこと、動物のことなどを

ぐぐーんと語っていただいてますよ。

 

(文章・写真=池ノ谷英郎/聞き手=山本喜昭)

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山本>

これまでの調査で、身の危険というか、

そういうリスクを感じたことは無いんですか?

 

 

田邊>

今回は湖の潜水の時ですね。

 

 

山本>

あ、ナショジオ(ナショナルジオグラフィック)に書いていらっしゃいましたね。

 

 

田邊>

昭和基地で潜る時はせいぜい気温マイナス5度とかなんですけど…

 

 

山本>

せいぜい、って言ってもマイナス5度ですよ(笑)

 

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田邊>

でも、マイナス5度だと水がすぐに凍る世界ではないんです。

じわじわ凍ってくるという感じで機材とかも大丈夫なんですけど、

アンターセー湖はマイナス20度で

しかも風がすごく強くて風速20mの風が

吹いたら体感がマイナス40度くらいになるんですね。

なので潜っているそばから穴の水面が凍っていくんです(笑)

 

 

山本>

それヤバいですね(笑)

 

 

田邊>

ちょっとでも機材が冷えた状態で水の中に入ると、

すごく冷えた機材に付く水は凍っちゃうんです。

なので最初はそれに慣れなくて、

ウエイト問題もあったんですけど、

機材自体が冷えていたので入った瞬間にBCとか

レギュレーターがだんだん凍っていってしまったんです。

その時は空気を入れて調節できないので

「このまま沈んだままなのかな」って思って(笑)

 

 

山本>

「湖の中はすごくきれいだけど、私このままサヨナラ?」って(笑)

 

 

田邊>

上に戻れないかもしれない、って一瞬怖くなりますね。

 

 

山本>

水中のパニックって一番怖いですよね。

 

 

田邊>

そうなんです。

さらにそこにフリーフローで空気がダダ漏れになったので

視界がブワーッてすごい音とともに無くなって(笑)

でも、まあ、上に上がれば大丈夫だったんですけどね。

まだナショジオには書いてないんですけど、

機材もギリギリまで断熱材を詰めた箱に入れて、

潜る直前に箱から出して着けるようにしたら凍らずに済みました。

 

 

山本>

へぇ~…

 

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田邊>

あとは、これは私じゃないんですけど、

2007年に初めて南極に行った時に一緒に行動していた隊員が、

歩いていたんですけど少し離れたところで滑落したんです。

「うわーっ!助けて!」

って声が聞こえたので見たら遠くに小さく見えて、

寄って行ったらその隊員は足が折れていたんですね。

それも完全に視界に入らないところにいたら

捜索できなくて救出できないんですよ。

で、昭和基地から離れたところにいるので、

単独行動して何かあるともうどうしようもないので、

それは絶対にしないでお互い見える範囲で行動しよう

というやり方をしています。

 

 

山本>

天候が急変することもしばしばありますもんね。

 

 

田邊>

あります。

変わったが最後で、日本だと土砂降りとか嵐とかって

せいぜい半日とかじゃないですか。

南極はそれが一週間続くんですよ。ブリザードとか。

 

 

山本>

そこも長いんですか。いろいろ長いんですね(笑)

 

 

田邊>

本当に長く続くんです。すぐに天候は変わる、そして長い。

 

 

山本>

(番組「情熱大陸」の中の映像で)テントの中でも割と厳しいって

コメントしてましたもんね(笑)

 

 

田邊>

そうですね(笑)

 

 

 

山本>

「寝れないかもしれません」って(笑)。

あれは寝れないだろうなって思いましたよ。

 

 

田邊>

番組の映像を撮っているときは

なかなかいい音(嵐の音)の時に

撮れなかったんですけど、ひどい時は

あんなの比じゃないくらいの音で

ギシギシギシギシなっていたんです。

かと言って、何かあったら危ないので耳栓はできないんです。

 

 

山本>

気づけないからね。

 

 

田邊>

だからずっと耳栓はせずに、さらに風が強く吹くと

2時間おきに張り綱をチェックしに行かないといけないんです。

だんだん緩んでいくんで。だから本当に眠れなくて。

 

 

山本>

それは大変だ~。

 

 

田邊>

だからそういう睡眠不足の疲れがありましたね。

 

 

山本>

向こうでいろんな動物たちとも写真も撮っていましたが、

すごく近くまで寄れるんですね!

 

 

田邊>

そうですね~警戒心が…

 

 

山本>

全然無いんですか?

 

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田邊>

あるにはあるんですけど、

日本にいる野生動物とはまったく違う感じです。

困難な状況に陥って食糧難になったら

すぐに捕まえて食べちゃえるくらい(笑)

 

 

山本>

人間が一番最初に南極に行った時から、

たぶん人間が動物たちにひどいことをしていない

からなんですかね?

 

 

田邊>

最初の探検が始まってから100年くらいと歴史が浅いですからね。

途中、南極半島エリアは捕鯨とかアザラシの捕獲に来ていた

時期があるんですけど、そのせいか南極半島の動物たちは

昭和基地の周りの動物に比べると警戒心が強いんですよ。

昭和基地のペンギンとかアザラシは逃げないんです。

むしろ寄ってきて興味深く「何?」って見て、

「違う」って去っていく(笑)

 

 

山本>

寂しい感じですね(笑)

 

 

田邊>

「あれ?違う」「友達?違う」みたいな感じ(笑)

 

 

山本>

へぇ~。

 

 

田邊>

そうなんです。だからほんと人に会わないし、

まったくひどいことをされた経験が無いので、

昭和基地の周辺の動物たちは本当にゆったりしています。

で、南極半島の動物はちょっと逃げて少し

「キーッ!」ってヒステリーになる(笑)

 

 

山本>

本(田邊さんの著書「すてきな地球の果て」)の中で

鳥とのふれあいの話があったじゃないですか。

 

 

田邊>

あー、ユキドリですね。

 

 

山本>

そういうふれあいを通じて、田邊さんの五感も

研ぎ澄まされてくるものなんですか?感受性というか。

 

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田邊>

そうですね。だんだん入っていきますね。

情報がすごく少なくて、静かだし(笑)

メールとかもできないし、そうすると小さなことが見えてきたりとか、

そこからすごくいろんなことを想像したりとかして、

想像力も豊かになるなぁ~と思いますね。

あと、原稿を書く時も南極だとすごく進むんです(笑)

 

 

山本>

いらないこと何もないですもんね。

 

 

田邊>

何もないし、その世界に入り込めているんで、

サーッと自然に。こっちに戻ってくると…全然進まない(笑)

 

 

山本>

じゃ、原稿とかは基本的に向こうに行った時に書いちゃうんですか?

 

 

田邊>

結構南極に行っている間に書いてましたね。

 

 

山本>

戻ってくる所が「東京」じゃないですか。その落差はすごいんじゃないですか?

 

 

田邊>

すごいんですよ(笑)

 

 

山本>

リハビリ期間とか要らないですか?(笑)

 

 

田邊>

しばらく使い物になりません(笑)

今回の外国隊は短いからこちらに戻ってから慣れるのに

せいぜい2~3週間で済んだんですけど、

4ヶ月行くと帰ってから4ヶ月くらいですかね(笑)

結局同じ期間掛かるんです。

 

 

山本>

そんなに掛かるんだ(笑)

 

 

田邊>

でも、「しらせ」に乗って日本の観測隊で行く時は、

帰りはシドニーに寄港して飛行機で東京に戻るので、

一応シドニーというステップを踏むんです(笑)

 

 

山本>

ワンクッション置くんだ(笑)

 

 

田邊>

東京ほどではないけどそれなりに文明の発達した都市に

寄って来るからまだマシなんです(笑)

 

 

山本>

いきなり来たらヤバいかもしれませんね!この忙しい都市に(笑)

 

 

田邊>

船で1ヶ月かけて帰ってきてビルが見えた時の何とも言えない

違和感がすごいです。

 

 

山本>

そうですか~

 

 

田邊 むしろSFなんじゃないかって(笑)

 

 

山本>

ぼくは2011年にパプアニューギニアに行ったことがあって、

ちょっとだけジャングルの人たちと交流があるようなことを

しに行ったんですけど、それも3泊か4泊だけで

そこから帰った時もすごく違和感がありましたね。

 

 

田邊>

まったくジャングルなんて人工物が無いですし…

 

 

山本>

ほとんど無いし、もちろん冷蔵庫もテレビも電気もガスも無いし。

行ったのが東日本大震災の後だったんですけど、

それでも帰りの飛行機から見えた東京はビカビカに明るいんですよ。

パプアの首都のポートモレスビーの空港は真っ暗なんですよ、

首都だけど(笑)。

この違いとか、社会復帰するのがホント大変でしたもん。

 

 

田邊>

(ちょっと咳き込む)

 

 

山本>

風邪ですか?

 

 

田邊>

花粉症です。咳が出て顔とかかゆくなるんです。

 

 

山本>

でも、向こうに行っているときはそういうことは無いんでしょう?

 

 

田邊>

無いです(笑)。空気がきれいなので。

 

 

山本>

絶対無いと思った!

 

 

田邊>

絶対に無いんですよ。風邪も引かないんです。

風邪のウイルスもいないので。

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いよいよ次回が最終回。

次回も乞うご期待!

これまでの記事はコチラ↓↓↓↓↓

田邊優貴子の研究と旅「そんな極地に魅せられて」その1

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田邊優貴子の研究と旅「そんな極地に魅せられて」その2

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田邊優貴子の研究と旅「そんな極地に魅せられて」その3

 

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田邊優貴子の研究と旅「そんな極地に魅せられて」その4

 

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