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田邊優貴子の研究と旅「そんな極地に魅せられて」その4

長池カメラ

極地のフィールドワーカーの田邊優貴子さんとの

突撃!雑談インタビューもいよいよ第四回です。

今回は北極やヒマラヤのこと、ダイビングについて、

そして昭和基地のことなどなど。

興味深い極地のお話をしていただきました。

 

(文章・写真=池ノ谷英郎/聞き手=山本喜昭)

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山本>

ちょっと話は変わりますけど、南極だけじゃなくて北極にも、

どちらも行かれるんですよね?

 

 

田邊>

行きますね。

 

 

山本>

生態系は全然違うんでしょ?

 

 

田邊>

まったく違いますね。

 

 

山本>

そこから分かる共通項とかあるんですか?

 

 

田邊>

ま、普通の人からしたらすごく似ている場所だと

思うんですけど(笑)

 

 

山本>

イメージは、ね(笑)

 

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田邊>

それが意外と似ていなくて、

でも共通している部分が少しあって、

じゃあその共通しているところってなぜなんだろう?

って思ったり、逆に、似たような極地にあるのに

何でこんなに違いが生まれるんだろう?

って比較するのも面白いですね。

で、比較していると、あんなに地球の真反対にあるのに、

同じ種が結構いたりするんですよ。

北極・南極にしかいなかったり、北極・南極・ヒマラヤにしかいなかったり。

 

 

山本>

へぇ~。

 

 

田邊>

昔、何億年も前に地球が全凍結した

「スノーボール・アース時代」

っていうのがあるんですけど、

最大の氷河期が来て、その時に地球全体が寒冷化したので、

その時の末裔が今は北極と南極とヒマラヤだけに

飛び地のように残っている、というのがあるんです。

そういうのも知ることができて、それを比較するのも面白さですね。

 

 

山本>

ヒマラヤには行かないんですか(笑)

 

 

田邊>

ヒマラヤには行かないです(笑)

 

 

山本>

お話を聴いたり映像を見たりしていると、

南極でのフィールドワークはかなりハードそうじゃないですか。

 

 

田邊>

そうですね~。

 

 

山本>

体を動かすこと自体は結構お好きなんですか?

苦じゃない、というか。

 

 

田邊>

苦じゃないですね。

フィールドワークってバランスがいいと思うんですよ。

ひたすら汗をかいて動き回って疲れて…

でもそれだけじゃなくて、フィールドからテントや小屋に

戻ってきたら採取したサンプル処理したり測定をしたりして

頭を使う作業もあるし、それでいて料理を作ったり

キャンプのことや生活のことを考えたり、

そういうのが全部あるのがすごく自分にとってちょうどよくて。

 

 

山本>

バランスがいいんですね(笑)

 

 

田邊>

そうなんですよ。

頭だけ動かすのもちょっと疲れるし、

動き回るだけでも何か物足りないですね。

 

 

山本>

「情熱大陸」の映像では、めちゃめちゃ搬入で

力仕事してましたもんね。

すごい量を持って行かれるんですね(笑)

 

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田邊>

すごいです。大量です(笑)

大量に持っていくし、湖の研究って今回はすべてドリル

(ドリルで凍った湖面に穴を開けて調査)だったんですけど、

昭和基地で夏に調査する時はボートを担いで行くんです。

ボートって20㎏くらいあるんですよ。

山登りってご飯食べたりすると荷物が減るじゃないですか。

 

 

山本>

はいはい。

 

 

田邊>

フィールドワークは行くと(採取した)サンプルの分だけ

増えてくるんです(笑)

 

 

山本>

あ、むしろ増えてくるんだ(笑)。

疲れた後の方が荷物が重いと。

 

 

田邊>

例えば水って結構重くって、

10リットルくらいのサンプルを取ったら

10㎏増えて帰ってくるんですよ。

 

 

山本>

20㎏担いで行って30㎏で帰ってくると。

 

 

田邊>

そうなんです。湖研究、ハードですよ(笑)

 

 

山本>

ハードそうですよね。いつも潜ってますもんね(笑)

 

 

田邊>

はい。さらに潜るっていう(笑)

 

 

山本>

潜っているのは、研究で潜るようになったんですか?

もともとダイビングとかやっていたとか?

 

 

田邊>

それまでダイビングをやったことは無いんです。

研究を始めて、湖の研究もするから

ダイビングのライセンスを取ろうと思ったんです。

海にはあまり興味が無かったんです。

 

 

山本>

はっきりしてますよね(笑)

 

 

田邊>

別に海に惹かれることが無くて、

むしろ怖いイメージもあったんです。

どこまでも繋がっているし深いし。陸は足で歩けるから。

 

 

山本>

そうですね、安心ですね(笑)

 

 

田邊>

そうだったのが、ダイビングのライセンスを取りに行って

初めて海に潜ったら、「水の中もすごいな!」って思ったんです。

陸地とは別世界が広がっていて。

 

 

山本>

宇宙みたいでしたよね、南極の湖の映像は。

 

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田邊>

すごかったです。

だからそれからはもう、すごくダイビングをするようになりました。

南極の湖なんだけど、宇宙に生命が生誕したみたいな雰囲気が

漂っているんですよ。

潜りながら「これはCGなんじゃないか」と思ったり(笑)

 

 

山本>

でもそんな感じでしたよね~。

僕らがあの映像を通して見てもそうなんだけど、

実際に見たらその衝撃は全然違うんでしょうね。

 

 

田邊>

水の色がバァ~!っと群青色で、

潜っていったらピンク色というか紫色の湖底が広がっていて、

何か怪物が生まれそうな卵みたいで

「うわぁ~!」って思っちゃいます。

で、すごく静かで、上を見たら氷に塞がれていて。

 

 

山本>

田邊さんの「マイワールド」ですね 笑

 

 

田邊>

そう。

で、氷に穴を開けて入ったところから

太陽みたいな光が入ってきていて…。

すごかったですねぇ。

 

 

山本>

やめられないですね。

聴いているだけで、やめられない感じがします。

 

 

田邊>

湖も番組の冒頭に出てきたアンターセー湖の

CGみたいなSFの世界があり、

昭和基地ではあの緑の不思議なポストカードのような…。

(貼ってあるポストカードを指差して)

 

 

山本>

あ、これですか!

 

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田邊>

(ポストカードを手に取って)これですね。

緑の不思議な森のような世界があって、

で、南極半島に行くとエビが泳いでる。

だから本当に30億年前から今に

タイプトリップしているような気持ちになるんです。

だからもっといろんな湖に潜りたいなって思いますね。

こんなに違うんだから。

 

 

山本>

へぇ~…すごいな。

 

 

田邊>

あ、このポストカードは昭和基地から知り合いの研究者が

送ってくれたんですけど、昭和基地の消印なんです。

 

 

山本>

日本郵便が昭和基地にもあるってことなんですね。

 

 

田邊>

これ、「日本郵便 銀座郵便局 昭和基地内分室」なんですよ(笑)

 

 

山本>

銀座なんだ!昭和基地は(笑)

 

 

田邊>

千代田区?中央区?どっちだろ?(笑)

 

 

山本>

面白い!

 

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田邊>

あと極地研のこの電話から昭和基地は内線電話4ケタでつながりますよ(笑)

 

 

山本>

内線なんですか!マジですか!

どうやってつながっているんだろ?

 

 

田邊>

衛星でつながっているんですけど、昭和基地のサーバーって

アンテナを通してつながるようになっていて、

昭和基地から東京にかけても東京都内の料金しかかからないです。

 

 

山本>

あ、そうなんですか。

 

 

田邊>

ここ(立川)に関してはもう内線だけという状況でして(笑)

 

 

山本>

すごいなぁ~。

 

 

田邊>

この前、南極半島に一緒に行って

「情熱大陸」にも映っていた工藤さんという人がいるんですけど、

工藤さんが4年前に越冬隊長をしていた時にメールで

「何時頃に電話ちょうだい」みたいなことを書いてきて、

この部屋から内線で昭和基地の隊長室に電話を掛けたこともありました(笑)

 

 

山本>

第1次越冬隊の人たちから見たら「何それ!?」という世界ですよね。

 

 

田邊>

インターネットが繋がっているより驚かれますね(笑)

 

 

山本>

それは驚かれますね!

(電話は)内線でしかも(郵便は)銀座ですからね(笑)

 

 

田邊>

銀座郵便局内分室(笑)

 

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極ガールとの対談は、まだまだつづきます。

 

次回も乞うご期待!

これまでの記事はコチラ↓↓↓↓↓

田邊優貴子の研究と旅「そんな極地に魅せられて」その1

 

http://docue.net/archives/contents/yukikotanabe_1

 

田邊優貴子の研究と旅「そんな極地に魅せられて」その2

 

 

http://docue.net/archives/contents/yukikotanabe_2

 

田邊優貴子の研究と旅「そんな極地に魅せられて」その3

 

 

 

http://docue.net/archives/contents/yukikotanabe_3

 

 

 

 

 

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