極地の生態学者でフィールドワーカーの
田邊優貴子さんとの突撃!雑談インタビューの第三回です。
今回は国立極地研で生態学者になるきっかけの話からはじまり、働き方、生き方まで
結構濃い内容ですよ〜
(文章・写真=池ノ谷英郎/聞き手=山本喜昭)
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山本>
大学・大学院の時、研究室にいらした時も
極地の研究をしてたんですか?
田邊>
全然違うんです。
もともと工学部にいて、生化学と言って
DNAとかタンパク質とかを使って
人工の光合成システムを開発しよう
というようなことをやっていたんです。
それは、小さなチューブの中でやる実験で、
「じゃ、このDNAを持っている生き物って
どういう所で暮らしているんだろうか?」って、
何も知らない中でやるんですよ。
誰もそれには興味を持ってなくて(笑)
山本>
なるほど。
田邊>
そんな時にもアラスカで見たオーロラとか
グリズリーが闊歩しているツンドラの風景を
実験室の窓から京都の夕焼けに重ねて見て
「違うぞ!違うぞ!」って気持ちがすごくつのっていって。
(自分には)合ってなかったんですね。
まさしく人や社会の役に立つ研究だったんですけど、
人に役立つことに興味が無かったので(笑)
山本>
いいですねー!さっぱりしていて!(笑)
田邊>
人によっては誰かの役立つことに意義を感じる人も
いると思うんですけど、たぶん私にはそれがまったくないんです。
山本>
うん、気持ちいい!(笑)
田邊>
だから、こうなってしまったんです(笑)
山本>
でも、一番最初の話で、(この研究が)
どこに行きつくか分からないけどやってみたいと
おっしゃっていたじゃないですか。
それってある意味すごくロングスパンの話なんですよね。
今、おっしゃった遺伝子のこととかも人類の歴史では長い話なんでしょうけど。
田邊>
でも、それは人間のいち人生で片付く話なんですよ。
山本>
田邊さんの研究は、いかに効率よく作り上げていこう
みたいなことではない部分だから、
短期的には役立つ・立たないという話になるかもしれないけど、
地球レベルなマクロな視点で考えてみたら…
田邊>
特に無いかもしれない(笑)
役に立つ・立たないの概念が人によって違っているんです。
たぶん分かりやすいのは実利的にすぐ社会の役に立つ
っていうのがあるので、みんな考えが
そっちに偏っているのかな、って思いますね。
山本>
そういうの(短期的に役立たない)って僕は良いと思いますね。
僕が良いとか判断する話じゃないですけど(笑)
要はそういうのが好きだなってことです。
今って世の中的にすごく忙しいじゃないですか。
例えば短期的に利益を上げないといけないとか、
打ち合わせひとつにしても「効率良く、効率良く」ばかり。
でも「ちょっと待てよ」と。
短いスパンで考えるより、もっと大きな視点で考えてみようよ、
ってすごく思うんですよね。
田邊>
そうだと思います。
意外と無駄なことが面白かったりすると思います。
合理的にやると無駄なことが生まれなくなって、
確かに最初から考えている目標には、
すぐに到達するんですけど何か面白みが生まれない気がして。
あと、ひたすら生産性の高い社会じゃないですか。
生産速度を上げる、人も物も。
でもそれだと単一の物ばかり生まれて
何か人間らしくないなと思うんですよね。
考えも短絡的になって、もうちょっとゆっくり
深く考えてみたら全然違うことに達することが
できたりするのが面白いのになって。
山本>
ホント、そう思います。
だから「役に立つ」とか置いておいて、
面白いからやってみます!っていうのがすごくいい。
田邊>
幸せですよね(笑)
山本>
どうせ人間の寿命なんて、早い人も遅い人もいるけど、
それこそ地球レベルにしたら大した長さではなくて、
同じ寿命をまっとうするんだったらプロセスが
楽しい方が絶対にいいよねって。
田邊>
そうだと思いますよね。
山本>
田邊さん、毎日楽しくてしょうがないんじゃないですか(笑)
田邊>
ま、そうですね(笑)
忙しいことは忙しいですけど、やりたいことをやるための
忙しさだと納得できるし苦にならないです。
山本>
京都の黄昏で考えていた時と比べる格段に違いますね(笑)
田邊>
心が違いますね。虚ろな気分にならない(笑)
山本>
やるべきことが見つかって良かったですよね!
田邊>
見つからなかったら、ずっと実験室で夕焼けを見ていたところです(笑)
山本>
(笑)
ぼくは、お仕事とライフワークって
本当は分けるべきじゃないと僕は思うんですけど、
多くの人は分かれていますよね。
分かれていることが必ずしも悪いとは思わないですけど、
田邊さんは一致しているのがすごくいいですね。
田邊>
分離しない方が何かいいですよね。
人によってかもしれないですけど。
真っ直ぐな人ほど切り替えられないから、
ライフワークと仕事が一緒になるんじゃないかな、
と思うんです。
山本>
分かります、分かります。
田邊>
うちの兄は、まったく別タイプで小学生の頃から
「将来は公務員になる!」って言っていたんですよ。
山本>
夢が公務員だったんですね?
田邊>
そう!
「そんなのクソつまらない」(笑)って言ったら、
「いやいや、安定して生きながら他のところで
好きなことをすればいいじゃん」と、
小学生の時にすでに言っていました。
山本>
すごいですね!
大人びたお兄さんですね。
田邊>
で、今は公務員をして奥さんと子供2人と楽しく暮らしていて、
週末は大好きなハンドボールに明け暮れ、
美味しいものが好きなので
「うまいもの食べに山形行くぞ!」とか
「函館行くぞ!」とか、楽しそうです(笑)
山本>
それはそれでいいですね~。
田邊>
そう、それができるなら、そういう人はそれでいいなって
思いますよね。
山本>
でも、共通するところは自分の気持ちいいところに
正直に生きる田邊家なんでしょうね(笑)
田邊>
たぶんそうですね(笑)、やり方が違うだけ。
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その4につづきます。
田邊さんとの雑談は 実験的にいつもより少し一回一回短めにしてお送りしてます。
次回も乞うご期待!
これまでの記事はコチラ↓↓↓↓↓
田邊優貴子の研究と旅「そんな極地に魅せられて」その1
http://docue.net/archives/contents/yukikotanabe_1
田邊優貴子の研究と旅「そんな極地に魅せられて」その2
http://docue.net/archives/contents/yukikotanabe_2
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