南極や北極を舞台に極地における生態学を研究されている
フィールドワーカーの田邊優貴子さんとの突撃!雑談インタビューの第二回です。
そもそも何故故に極地での研究をすることになったのか?
を存分に御話いただきました。
(文章・写真=池ノ谷英郎/聞き手=山本喜昭)
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山本>
以前お会いした時にも伺った話なので
重複するかもしれませんが、
そもそもなぜ極地に足を運ぶようになったんですか?
田邊>
最初のきっかけは小学校で見たテレビなんですけど、
それははっきり言ってしばらく忘れていたんです。
山本>
それはどこの映像だったんですか?
田邊>
アラスカのオーロラとか氷河とかグリズリーとかが映っていて
「わーっ!なんだこれ~!」
って思ったんです。
子供ながらに初めてすごい世界が
広がった気がした映像で、
「行ってみたいな~」
と思っていたんですけど
その時は行けるわけもなく。
で、それからすっかり忘れていました。
高校生くらいになると進路のこととか
考え始めるじゃないですか。
とりあえず理系の科目が得意だったし、
いろいろ観察したり考えたりするのも
好きだったので研究者になりたいなって
思っていたんですけど、
漠然とそれだけでどういう分野でとかは思っていなくて。
それで大学に入ってすごく自由を…
山本>
自由を謳歌した(笑)
田邊>
自由を謳歌しちゃったんです(笑)
山本>
京都の大学なんですよね。
田邊>
はい。京都でアルバイトばっかりして休みになると
バックパックを背負って世界中を旅していたんです。
山本>
1人旅だったんですか?
田邊>
1人の時もあれば高校の時の親友がいて
彼女と現地合流したりして一緒に旅することもあったり。
最初に行ったのがペルーとボリビアだったんですけど、
そこに行って2人で「インカ帝国だ!!」って騒いだり(笑)。
人種も違えば昔の遺跡もすごいし街並みもすごいし、
日々、いろんな面白いことがあって。
山本>
刺激の連続ですよね。
田邊>
そう、あっという間に1ヶ月が過ぎて、
最後の最後にチチカカ湖
(ペルーとボリビアの間にある標高3,800mの湖)
に行って、夜は現地の民家に泊まらせて
もらっていたんですけど、
山本>
それはいきなり「田舎に泊まろう」的に…?(笑)
田邊>
いえ(笑)
仲介する現地のインディヘナ(先住民)の人たちがいて、
泊まらせてくれる民家を紹介してくれるんです。
たぶんあれも観光資源として稼ぎになっているんだと思います。
山本>
ビジネスとして成り立っているんですね。
田邊>
で、泊まったんですけど、湖に浮かぶ島で
しかも標高3,800mで、電気も通ってないんですよ。
街も周りに無い所で蝋燭暮らしなんですけど、
ある夜に泊まらせてもらった家のご主人が
「今日、丘の方でお祭りやっているから見に行ったらどう?」
って言ってくれたので、
「じゃ、行くか」って
蝋燭を持って外に出て、
蝋燭を吹き消した瞬間の星空がすごかったんですよ。
山本>
おお~。
田邊>
なんか平衡感覚が無くなるくらい真っ暗な中に
満天の星空があって
「わぁ!」となって、
お祭りを忘れて2時間ただ…
山本>
空を見ていたんですか(笑)
田邊>
空を見ていたんです、寝っ転がって(笑)
すごい刺激を受けた1ヶ月だったのに、
最終的に圧倒的に感動したのがその星空だったんですね。
だから
「自分はそういう人間なんだ。人工物とか歴史もすごいけれど、
圧倒的な自然に惹かれる人間なんだな」
ってはっきりとそこで意識して、
そのうちカナダに行ったりノルウェーの北の方に行ったり、
すごく自然寄りな…
山本>
はいはいはい、人のいない方にね(笑)
田邊>
人のいない方にだんだん行って
旅をして大学3年が過ぎ、4年に上がる時も
周りが普通に就職活動を始める人がいたり、
理系だったので研究室に配属されて大学院進学を考える人が
いたりという頃だったんですけど、
「なんかこのまますんなり行っちゃいけないな」
と思って1年休学したんですよ。
そのとき思い出したのが小さい頃に見た
アラスカの映像だったんです。
で、お金を貯めて、まだ行っていないアラスカに行こうと。
山本>
「あー、そう言えば」って?
田邊>
「そう言えば、行ってないぞ」って。
それで冬のアラスカに行ったんですけど、
「この世界はすごい!今まで旅していたところとは全然違う!」
ってなってそのまま京都に戻ったんですけど、
かと言ってすぐアラスカの研究分野にしたいと言っても…
山本>
「何を研究すんねん!」って感じですね(笑)
田邊>
そう!(笑)
できなくて悶々とした日々を過ごして大学院に進学して、
またアラスカに今度は夏から秋にかけて行ったんです。
山本>
またバックパックで?
田邊>
バックパックです。
で、カヤックで氷河を旅してみたり、
デナリの辺りに入ってツンドラの中を歩き回ったりして、
「あ、やっぱりもうこの世界だ」って。
山本>
ここしかない!と二度目で確信したんですね。
田邊>
二度目で確信しました。
空間の広がりとかスケールもすごいし、
生き物たちが夏のある時期に一瞬という時間の中で
バッと命を燃やして、秋になると枯れていって、
そして冬が長くて…っていう命を凝縮した様が
すごいなと思ったのと、
あと空気の透明感を感じて、この感じは
もう言葉では説明できないなって思ったんです。
それで帰ってから
「北極とかあっちの方の研究をしよう」
と思って探して、行き当たったのが極地研(国立極地研究所)
だったんです(笑)
山本>
そうなんですね(笑)
田邊>
極地研は研究所なんですけど大学院生も受け入れていて、
「極地研の大学院に行けばもう北極に行き放題だ!」
と思って(笑)
山本>
しめた!と(笑)
田邊>
しめた!これはすごい!と思って極地研を訪ねにきて、
話を聴いていたら
「北極はいろいろされているから(人がやっているから)、
南極の方が何もされてなくて面白いよ!」って言われて、
初めてそこで南極を意識したんです。
博士論文では南極をテーマにしようと思って
南極の研究が始まりました。
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その3につづきます。
田邊さんとの雑談はまだまだ続きますよ〜
第一回はコチラ↓↓↓↓↓
田邊優貴子の研究と旅「そんな極地に魅せられて」その1
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