「100年後の山に想いをはせる」という大胆不敵な?!テーマで開催したYAMANOVAの車座トークライブの怒涛の書き起こしの後篇です。
当日は平日にもかかわらず甲府のELKさんに山小屋の小屋番さんと山の愛好者約80名が集まる熱い夜となりました。
<CONTENTS>
【ご挨拶】
YAMANOVA山本 喜昭、田中 ゆうじん、大谷 拓哉、ELK社長 柳澤 仁、店長 中込 真太郎、
山梨県山岳連盟会長 古屋 寿隆
【山小屋関係者ご紹介】今田公基・北ア穂高岳山荘/井上 義景・富士山八合目の太子館/森本 千尋・北岳肩の小屋/
小林 樹里・南ア薬師岳小屋/塩沢 顯慈・南ア広河原山荘/相川 竜比古,光海・富士見平小屋/
吉木 真一・金峰山小屋/竹元 直亮・南アこもれび山荘/齋藤 しのぶ・南ア馬の背ヒュッテ/
中村 光吉・三つ峠山荘/西川 敏正・南御室小屋/高妻 潤一郎・白根御池小屋/井上 佳之・長衛小屋/
猪俣 健之助・北岳山荘(紹介順)
甲斐駒七丈小屋・花谷 泰広(後ページ)
【トレイルランナー、どうみる?】
あれは怒られる存在?/技術・体力があってのこと/無知な登山者のほうがよっぽどこわい/
一般登山者の事故が圧倒的におおい/”トレラン”とレッテルを貼るのは間違い/
トレイルランナーの事故率は統計的に少ない/見た目だけで山小屋の人に怒鳴られるって?/
重荷で岩を登っているご年輩のほうが気をつけるべきでは?/イベントでは主催者に教育します/
山はマナーといった人間性がでやすい場所/江戸時代からつづく富士行の妙/
【山での事故に対処できますか?】
事故が起こったときあなたはどうする?/報告と実情の誤謬/
ウィルダネスでの対処は災害現場でも役立つ/まずは状況判断と安全退避/
対処はハチに刺されたことの延長に似てる/互助の精神/倒れてる人がいたら軽装備で助けられる?/
山は、野球やサッカーと違って死ぬ確率が高い/
【海外からみた日本固有の注意書きと山事情】
山小屋は唯一無二のオリジナル性がおもしろい/ピークもいいけど山小屋がかなり面白い!/
これからのインバウンド時代、怒る怒らないを超越した事態に!?/海外の山小屋はほったらかし/
日本はお節介と注意書きが多い?/自分で考える、が基本です/
良いサービスが欲しけりゃおカネを払えばいい/欧米にくらべるとファストエイドは遅れてる/
日本アルプスを縦断してみて思ったこと/気持ちいい山小屋、心地悪い山小屋…/
山小屋も街といっしょで個性があってもいい/
【再び、山小屋がなぜ怒るか】
殴られて育った時代と現代とのかい離/水源があるって言ってるのになんで立小便!?/
注意看板を立てるこの屈辱感/100人弱マナーがわかってても数%そうじゃない人がいる/
もう疲れて怒る気力なんてない/東南アジアからの登山客はたくさんのゴミを残す?/
文化レベルの違い/日本も40年前はそうだった?/逆手にとって知恵を使うしかないでしょ/
いかにこちらのイライラを無くすかも商売の一/他力本願な登山客が増えた現状
【甲斐駒ケ岳の七丈小屋を継承する花谷泰広さんの抱負は!?】
愛する甲斐駒/この時代、英知の継承はいかに/エアリアマップでは情報過少なり/
スキー場並みのグレーディングガイドマップを業界全体でつくるべき/
山小屋事情を聞いて大変だなって/
【後書きに代えて】
田中ゆうじん
穂高岳山荘・今田:数年前までは目茶苦茶怒鳴っている山小屋だったんですけど、今現在は、落石を意図的か知らずか落とす方などにはもちろん注意をしますが、基本的には事情を聞いて対応してます。
いま登山客を怒るという話題がでてて、なぜ怒るのか?と考えてました。もしかしたら、登山客のことを考えて怒る場合もあるけど、実際は山小屋の事情もあって怒ってることもあるかなと。私は山小屋に入ってまだ3年なんですけど、例えば、以前こんな光景が目にしたんです。夜遅く着いた登山客を怒る従業員がいまして、じつはその前に、「まったく、いまからまた夕飯の支度をしなきゃならないじゃないかよ」と。
こちらの都合で機嫌の良し悪しって多々あると思うんですね。なので、うちはその点に関しては見直そうということに。
山本喜昭(司会、以下:山):怒られた登山者の方いますか?
【トレイルランナー、どうみる?】
参加者A:いま思ったことですけど、トレイルランナーといわれる方たちが山を走り回ってますね。この会場にもいらっしゃると思うんですけど、あれは怒られる存在なんですかね? いまの山小屋の方たちのお話を聞いてると、トレイルランナーって皆に迷惑をかけてるんじゃないか、普通に歩いて山小屋に来る人だけ山に来ていいんだという風に私には聞こえるんですけどね(笑)
広河原山荘・塩沢:トレイルランナーに関して僕は否定的ではないですね。彼らは、そこまでの技術があってそこまで入り込んでいるということだと思うんです。怒る怒らないの基準でいえば、自分の技術をどこまで持ってるか知っているかってとても重要で、あと荷物もなんのためにその道具を持っているのか、その容量のザックなのかなど、分からない人がじつは多く、そことても重要だと思ってて。
また、富士山に登ったあとに北岳に登ってくる方たちはとても多く、段階的にも技術的にもまったく違う山でして、そんな人が事故を起こす可能性があるのかなと。なので、森本くん(北岳肩の小屋)にも、こんな人たちがこれから登っていくから、注意してねと言うこともあります(笑)
そこへいくと、トレイルランの方たちは自分たちの力量を知ってる方が多いように感じますね。少なくとも、私どものいる南アルプスでは、トレイルランナーの死亡事故は過去にありましたけど、一般登山者の事故のほうが圧倒的に多いという現実があります。
あと、以前、夜下山してきてバスがないので、仕方なくうちに泊まるという若者がいましてね。もうちょっと早く行動したほうがいいね、と言ったら、なんで降りて来てそんなこと言われなきゃいけないんですか?と言われましてね。君の友人とかが真似する可能性があるし危ないでしょうと。その点、トレイルランをすぐに真似しようとしても出来ませんよね。そこのとこのなんというか棲み分けが出来てるのかなと思いますね。
長衛小屋・井上:小屋番の立場ではなく一個人の意見としてですけど、私も走るの好きでよく走ってます。よく、トレランが事故を起こす、トレランが迷惑、トレランがトレランがって言われてますけど、まったく違ってて、あくまで一個人のやってることであって。例えば、昔あったスキーVSスノーボードみたいなそんなつまんないことにされてしまってると。
だから、その個人がマナーがいいのか、ちゃんとしてるのかということだと思うんですよ。
あと、小屋で怒る怒らないということで言えば、うちは年間1万弱くらいテントを張る場所でして、まあ色んなトラブルはあるんですけど、お客さんが他のお客さんに迷惑をかける行為に関しては言わないとと思いますね。
例えば、他のお客さんのお弁当をかすめ取ってしまった人とか。(会場 笑)
うちはそんなに険しい山ではないので、深刻な事故はないんですけど、怒るとこちらもとても疲れるので、なるべく怒らないようにはしてますね。
田中ゆうじん(主催、以下:ゆ):ありがとうございます。トレイルランは山を走るという意味においては、シンボリックな存在として取沙汰されている昨今ですよね。わたしも山は走りますし、よく言うんですけどじつは体に見えない装備を普段からトレーニングして身に着けている意識がとてもあります。そういう意味で会場にいる走る方どうですか?
参加者B:そうですね、私はもともとランナーから山へ入ったので、山のルールなんかはあとから教わっていきました。トレランのバッシングが声高にいわれてて、仕方ないとも思いますけど、遭難に関しては統計的にはやはりご年配の方が圧倒的に多いですよね。
また、トレイルラン(注:レースに関して)は、日本の場合は例外はあれど里山でおこなわれることが多く、わりとすぐに下山できる環境下にあるので、そういった意味でも安全面に考慮してることが多いですよね。
ぜんぜん回答になってないですね?
ゆ:はい(会場 笑)
横にいるCさんいかがですか? いつも素晴らしい写真をSNSにアップされてますよね(笑)
参加者C:山に入るときは、トレイルランナーとして入るんですけど、きょうは山小屋の方たちのお話を聞いてて、普段あまりお世話になることがないのでとても新鮮ですね。
で、じつは過去に山小屋の方に怒られた経験がありまして。わたしはチーム短パンというものに入ってまして、その日は雪が降ったあとだったんですけど、私たちをみるなり「おれたちに迷惑かけんなよ!」と(笑)
こちらもちょっとびっくりして。思うに、そんな一言に目が覚めた部分と、なんで怒られなければいけないんだという複雑な思いがありましたね。でも、先ほどの話じゃないですけど、それぞれのレベルに応じて、もっと言うとそこらの話を聞いてから、色々と言われるならこちらも納得しますけどね。
今までの積み重ねがあってこうしてやっているところに、外見だけみて怒られると、なんでかな?と思いますよね。
それと、アンチトレイルランということで言いますと、山に入る人は山が好きで入ってるわけですから、それは登山者もなにも同じだと思うんですよね。よく登山道で行きかうときに、「あ、特急が来た」なんて揶揄されますけど、その高齢の方が大きなザックに登山靴で岩場をよじ登って、ひっくり返りそうになってるほうがよっぽど危険じゃないか?(笑)っておもうこともありますよ。
あ、ゆうじんさんのスタイルはいつも見てて刺激うけてます(笑)
ゆ:ありがとうございます。
えっと、トレイルランについて賛否の話題が出たついでにどなたかご意見あります?
富士見平小屋・相川:分水嶺トレイルというイベントのうちは中継点になってるんです。うちは反対はしてないです。ただし、やるからには主催者の人をうちにお呼びして教育してます。吉木さん(金峰山小屋)の言うように山は自由だと思うし。ただやるからには覚悟してほしいです。具体的には、登山者を追い越すときにトレイルランナーはびっくりさせないように声掛けするとか、右側通りますとか、細かいことなんですけどね。
その代わり主催者の方には、一回でも事故を起こしたらやめると言ってます。
みんな仲良くやってもらいたいですね、それが一番。
山本喜昭(司会・主催、以下:山):いいですね、皆仲良くしたいですね(笑)
きょうは山の集まりゆえの話題ですけど、街でも同じなのかなと思いながら聞いてました。山は自然でリスクが高い場所なのでそれがわかりやすいですけど、東京の満員電車なんかマナーが最悪ですよね(笑) それと比べるなという話かもしれないけど。でも、マナーといった相手への気遣いという根本的なことは一緒で、とくに山だと目立ってしまうというのがあるのかなと。
大谷拓哉(主催、以下:大):たしかに。わたしは伴走伴歩といって、見えない方と一緒に走ったり歩いたりしてるんですけど、見えない体験を提供してたりするんですね。見えてる方にアイマスクをつけてもらって、視覚障碍者の疑似体験をしてもらうんです。そうすると、相手を頼らないとどうにもならないんですよね。このように相手を直接頼る行為って、社会にはそうそうなくって、それを一度体験してもらうと非常に仲良くなったりその逆もあったりで、自然その人となりが見えてくるんですよね。
いま山本さんが言ったように、普段の生活態度がそのまま山へもでてくるのかなと。とくに山は自然と対峙してるので、そういったマナーや人間性というものが出やすいのかなと思いますね。
先日の那須岳の事故は残念でしたけど、またあの震災もふくめて自然の脅威をまざまざと見せつけられて、色々と思うことはあるんですけどね。ただ、長野県の教育委員会が学校へ、冬山はやめなさいと勧告したんですが、なんてこというんだと思いますね。冬山ってとても素晴らしいし、そうやって萎縮してしまわずにいければと思いますね。話が変わってしまいました(笑)
富士山太子館・井上:いまの話を聞いてて、富士山には富士行といって信仰登山が江戸時代からつづいているんですね。白装束を着て町から山頂を目指すというものでして。で面白いのが、おカネ持ちも貧乏な人もいっしょに助けあったり励まし合ったりしつつ登山するんですね。なので、江戸時代の町民の気質は富士山の影響がおおきいなどともいわれているんですね。すごいなぁと思いますよね。しかも、すべての江戸の町民が数ある富士行のグループに属していたなんてことも聞きます。
山:なるほどですね。
ちなみにこの会は、なにかの結論をだそうとかいうことではないので、気兼ねなく言いたいこと皆さん言ってくださいね。
【山での事故に対処できますか?】
広河原山荘・塩沢:マナーといった話題ではないですけど、ここにいる山小屋関係者以外で登られる方たくさんいらっしゃると思うんですけど、もし事故が起こった場合にどうしたらいいかわかる方って、いらっしゃいますか? まずこうして、あーしてと、とにかくその場の対処に自信ある方いらっしゃいますか?
というのは、車の事故であれば、保険屋さんと警察に電話してって皆さんわかると思うんですけど、山の場合は意外に知らない方多いですよね。メディアの方とお話したとき、けっこう雑誌などでもそういうこと書くんですが、あまり好んで読む方は少ないと言ってましたね。
例えば、山小屋でよくあることなんですけど、上で誰々がケガして動けなくなってたと登山者の方がこちらに報告してくれるんですけど、男なのか女なのか、体のどこをどんな風にケガしてる感じだったのか、場所はどのへんか、など。それでぼくらも装備準備していざ行ってみると誰もいないとか。本当にあるんですよ(笑)
おそらく、分かってないからだと思うんですね。
山ってレジャーとかスポーツのなかでは圧倒的に死亡事故の数が多いですよね。サッカーしてて死ぬことなんて、ほとんどないわけですから。
山も大きな事故はニュースとして大きく報道されますけど、1人2人の死亡事故が起きても、せいぜい一日記事になるくらいじゃないですか。山小屋サイドのぼくたちがいくら分かっていても、当事者や実際現場にいる方たちがわかってないと、死亡事故は減らないと思うんです。
また、レスキュー講習会など、よく開催されてると思うんですけど、もちろんここのELKさんでもやることもあるかもしれませんが、そいういったことを推進していくのも、ここにいるぼくらの役目なんじゃないかなと思います。
ゆ:ありがとうございます。わたしも、某山岳業界の社長ではないですけど、登山人口の増加と安全登山の推進、という二つのテーマは重要だと意識してるんですけど、昨秋に私も講習会に出させていただいた、主催者のドクターがそこにいらっしゃいますので、なにかコメントいかがですか?
柴田:槍ヶ岳診療所に入ってます。ファストエイドの講習会などのお手伝いもしてます。ケガした人がどういう状況かということですね。自分で歩けるのか、もしくは人出がいるのかなど、なるべく早い段階でその人の状況を伝えてもらえると、ヘリコプターが飛べる状況であれば診療所までの時間が短縮されますね。
ただ、自分で処置して自力下山出来る状態であれば、早く危険な場所から退避してもらうってことが、本当は一番重要な行為でもあるんですね。また、いきなりそんな状況に出くわしてもなかなか対応できないので、日頃からシミュレーション講習をやるとか、また実際の登山では最短で下りれる下山ルートをつねに意識しておくとか大事です。
ただ、私もそんな立場でありながら実際の現場でどこまで対処できるかというと、分からない部分はあります。
なので、先ほども言いましたが、その人いまどんな状況下で、安全な場所に移動できるかということを早い段階で伝えられること、というのを皆さんに周知していただくことは大事ですね。
これは実は、日常にもとても役に立つことなんです。とっさのとき、救急車を呼ぶのか、それとも一晩様子をみてもいいのかとか。生きる上での判断の材料にもなるはずです。出来れば中学性くらいからこういったファストエイド知識や、ウィルダネス(注:冬山などの過酷な自然環境下だけではなく、自然、都市災害などを含めた「医療アクセス*が劣悪な環境や状態」)でどのように行動したらいいかという知識はあっていいと思ってます。
震災のときなど見ててわかると思いますが、医療機関がすべてには対応できないですから、危険なことと安全なことのイメージを早い段階から持っていただくことは、生きるうえでも力になりますね。
医療知識って、じつはそんなに大変なものではないと思ってます。へんな話、虫に刺されたあと普段どうしてるかとか、そういったことの延長だと。
アナフィラキシーなど特別なことは別ですが、ファストエイドでまず最初にやることは、息をしているか、心臓は動いているかです。AEDは山にはないですが、心臓マッサージや人工呼吸はシミュレーションしていれば、実際それで助かることがあるかもしれません。
宣伝になりますが、JPTECという救急医学会がやってる医療者以外でも受けられる講習会もあります。
ゆ:ありがとうございました。まずは早急な状況判断と安全エリアへの退避。状況判断のなかでも、呼吸と心臓は正常か?ということですね。
柳澤社長、この流れで互助のお話なんてどうですか?
ELK柳澤社長:お互いを助け合う互助、いまここにいる山小屋の方々はまさに、最たる互助の方々だと思うんです。
田中正人さん(アドベンチャーレーサーでイーストウインド代表)っていらっしゃいますね。わたしもトレイルランニングを毎週土曜日にやってるんですが、田中正人さんと以前興味深いお話しをしたんです。
あるトップランナーが大会のレギュレーションである2ℓの水をスタートしたらほとんど捨てたと。もちろん、重いからですね。彼はそれでいいんですけど、途中でケガ人に遇ったと。血が出てて傷口を洗ってやりたいという状況なんですけど、水は持ってないというね。
なにが言いたいかというと、個人の問題としては好きにやっても自分の責任ということで済むけど、山で誰か倒れてたら絶対に助けるじゃないですか。知らんぷりしていく人はまずいないと思いますよ。そういった人を助けるためには、道具なりその他装備なりが絶対必要だと思うんですよ。
昨年は、この山梨県のエリアだけで23人亡くなっているんですよね。さきほども出ましたが、野球やサッカーと違って、山というスポーツはそういった事故に遭う可能性が極めて高いですよね。なので、この互助という言葉はとても大切だと思っています。
山:いいですね、互助って言葉。
ゆ:互助ということで、装備等によって助けることもあれば、それがなかったとしても、別の方法で助ける方法があればいいなと私なんかは思うんですけどね。やはり私のやってるスタイルなんかだと、単純に重荷をもった方たちとは装備が圧倒的に違いますからね。かといって、同様に持つとなるとやはりいまのスタイルで山で行動できなくなりますからね。
山:海外とかどうなんですかね。海外事情に詳しいかたいらっしゃらないですか?
【海外からみた日本固有の山事情】
柳澤社長:斎藤さん!(笑)
シェルパ斎藤:シェルパ斎藤というペンネームで本書いてます。旅をしてそれを本に書くという仕事をずっとやってまして、山もその対象なのでテントを背負って自由に寝泊りということやってました。
7年前くらいから、PEAKSという雑誌で山小屋24時間滞在記という連載をやってまして、いままで80数件取材してきました。ですから、山小屋を利用する立場としてきょう会場にいる方たちにもお世話になってます。
海外の山小屋のお話なんかもしようと思うんですが、そもそもなぜ山小屋を取材しようと思ったかというと、面白いからなんですね。
ぼくはあちこち旅をしてて山小屋を宿として考えたときに、これほど面白いところはない、なんですね。山小屋滞在記をはじめるとき山小屋の間取りをぜんぶ書きたいと思ったんです。なぜかというと、山小屋って同じ建物が二つとないんですよね。それぞれがその地形に合った作りになってますし、ご主人が工夫を重ねて建てたものですから。
なので、きょういらっしゃる山小屋の皆さまには、本当にご自分のいる山小屋を誇りにもっていただいてると思ってますし、ぜひとも誇りをもっていただきたいですよね。
もともと、ぼくはワンウェイの旅をよくしてて、山もここからあそこへとピークを経由していきますね。そのピークが気持ち良いんですが、この取材をはじめて変わったんですね。いまはピークよりも山小屋に着いたときが一番嬉しかったり、ホッとするんですね。ましてや歓迎されたりするとなおさらですよね。
泊まる側からすると、山小屋って憩いの場であって、安らぎもあって、オアシスであって、心の拠りどころであって… といことを山小屋の皆さん一生懸命考えてくれてるからこそ、さっきから怒る怒らないとかの話題がでてきてると思うんですが、それは泊まる側からしてみれば感謝の気持ちはもってます。おべっかつかうわけじゃなくて。
で、100年後という視点で海外のお話をしようと思うんですけど、とくにここ10年で海外からの旅行者増えてますね。とくに2020年の東京オリンピックにむけてインバウンドにとても力をいれていると。
100年前というと、日本に外国人なんてほとんどいなかったわけですよね。でも今後は山もふくめてどんどん増えていくと思うんですよ。そうすると、怒る怒らないという問題もふくめて、言って分かればいいんだけど、分からない外国人が必ず増えてくるので、山小屋の人たちはこれから本当に大変だなと思いますね。
もちろんここで結論をだすとかじゃなくて、これから考えていくことが増えていくということですね。
また、海外の山小屋にも行くことはあるんですけど、基本ほったらかしです。あーしなさいこーしなさいじゃなくて、オマエ自分で考えろと。もちろん考えろとも言わないです。
言い方は悪いですが、日本の山小屋というか山事情が、かなりお節介型だと。あーすればいいこーすればいいという注意書きもいっぱいあって。海外にはそういうのはないです。
それは逆にいえば、自分で考えなければいけないので、自主性がうまれるなと。色々な国行ってみて思うのはそんなことです。もちろんおカネ多く払うところは、サービスが良かったり食事が美味しかったり、寝具がきれいだったりしますよね。
ただ、基本は自分の荷物は自分で管理して、食事も持って、使ったものはもとに戻すということですね。
もちろん、アジアとヨーロッパ、またはアメリカでそこは違うんだと思います。ヨーロッパはおもにそういう感じですね。
最近は、日本でもとくにアジアの人がどんどん増えて来てますよね。ブラジルなんかもそうだし。現在はSNSの発展もあって、世界的にここが面白そうとか、話題だぞってなると、わーっと押し寄せてくることは充分あり得ますよね。もちろん日本もそうですね。
ゆ:ありがとうございました。
注意書きについては本当に日本は多いって話をこのあいだ山本さんとしてたところですよね。鶏と卵の話にもなるんですけどね。うちなんかだと、うえの娘が朝なかなか起きなくて、奥さんが何度も起きなさいとやってるんですけど、わたしはほっとけよ!というんですね。いちど寝坊させて遅刻して自分が大変な思いをすれば、自分で起きるようになるんじゃないかと。
それが教育であって、ひいては自立とか自由とかにもつながると思うんですよ。
富士見平小屋・相川:……えーっと、なに言うか忘れてしまいました(笑)
ちょっと話は戻りますけど、先日JPTECのファストエイドの講習を受けてきました。山小屋の管理人が受けることは当然だと思うんですけど、アメリカなんかでは、一般人も受けてるということを聞きまして。
うちの小屋は幸いにも40分くらい歩いて来れる場所で、色々な方たちがいらっしゃるので、今後はうちでそんなイベントや訓練みたいなことが出来たらとおもってます。
えっと、思い出したらまたあとで喋ります。 (会場 笑)
山:さっきの注意看板の話ですけど、ぼくは普段そんなにばりばりと山に入っている人間ではないんですけど、ニュージーランド行ったときにおなじこと感じましたよね。本当にほっとかれてるみたいな。注意書きなんて必要最低限しかなかったです。日本は、山もそうかもしれないし街もふくめて、注意書きだらけですもんね。
斎藤さんのお話を聞いててそんなこと思いますね。
なぜなんだろ?と。さっきの教育かもしれないし、自発的のあるないという国民性の違いかもしれませんが、そういった自発性は、生きるチカラとして持っていたいなと思いますよね~。
馬の背ヒュッテ・斎藤:今年から馬の背ヒュッテに入らせていただくんですけど、じつはまだ小屋に入ったことがありません(笑) いままでは、北アルプスの舟窪小屋と御岳山の五の池小屋で働かせていただいていて、シェルパ斎藤さんにも二度取材をしていただきました。
山はわたしは旅だと思ってて、日帰りでも小さな旅だなと思ってます。山小屋で過ごす時間も好きで、そこで飲むコーヒーだったりビールだったり、また出会いだったりと。自分自身そいういった場所で楽しんできたので、そんな場づくりをしていきたいと思ってて。
昨年は、夏から秋に53日間かけて、日本海から太平洋まで山旅をしました。おカネもかかるので、すべての山小屋には泊まれず、テント泊が中心だったんですけど、色々な山小屋をみてきて、温かい対応のところもあれば、お客さんの対応に疲れてるのかな?という山小屋もありました。
自分自身は、純粋に登山者としてせっかく行く山で心地よくすごしたいなと思うので、そんな場所をつくっていけたらと思ってます。
そんな場所でリフレッシュして帰ってくれたら、日常も元気に過ごせると思いますので、100年後の未来もきっと明るい未来になるんじゃないかと思ってます。
山:ありがとうございました。場づくりという話で繋がっていきましたけど、未来へつながる山小屋でのイベントなんかや場づくりということ、単純にいいなぁと思いました。ところで、そういった山小屋でのイベントみたいなことって、今までもけっこうやられるところって多いんですか?
そうやって行ってみたいな…と思わせるようなことって素敵ですよね。
ゆ:山小屋もそれぞれの特色や個性があっていいなと思いましたね!
なんか今日は怒られたい気持ちだなぁなんてときは、相川さんとこ行くとか。(会場 笑)
なんか今日は放っておいてほしいなとか、のんびりしたいなとかだとあそこが最適!とか。あそこの食事最高!とか、人が少ないあの穴場な感じがいいとかね。
100年後だったらわからないですよ、ヘリスキーがあるように稜線までヘリで行ったり、山小屋で個室完備だけど高額ですみたいなDELUXE登山だってあるかもわからないし、シャワー完備の山小屋が技術進化によってあるかもしれないですしね。その賛否はともかくとしても、そうやってそれぞれ個性があれば、それによって行く人の趣向で多彩な選択肢があったっていいわけですよね。
【再び、山小屋がなぜ怒るか】
富士見平小屋・相川:たとえば親父の代の育ち方って、殴られて育ったってあると思うんです。それがいまの時代にむかないのはもちろんわかってます。ぼくが最初に山小屋に入ったときは、親父が怒鳴りまくってて、そのとき俺は絶対に怒鳴らないって思ってました(笑) ただ、小屋のことを頑張れば頑張るほど頭にくることがありますよね。小屋に小便かけれれるとか(笑)
あと、うちの山小屋の70mくらい下に水場があるんですが、テラスの上からそちらに小便をする登山者が多いんですよ。最初は怒鳴りまくってたんですけど、「下は水源です」という看板を立てたんですね。すると、こんどは看板とロープをまたいで小便をするんです。仕方なく、「小便禁止」の看板を立てたんですけど、とても悔しかったですよね。もし、漢字が読める外国人がヨーロッパなんかから来たら、日本人レベル低いな…となるでしょう。
なので、ときにズバッと言うことも必要だと思うけど、基本的には小屋の中に注意看板なんか書きたくないですし、いまはこういう時代だから、わからない人には丁寧に教えてあげることが重要だと思ってます。
こもれび山荘・竹元:ぼくはけっこう怒るんですよね。どこまでが注意でどこからが怒るとか、ぼくの中では境目がないのでわからないですけど、サービスと媚びるというのは違うとおもってるので、ぼくはぼくのやり方でやらせてもらおうと思ってます。
山登りというのは、自分で考えることがすごい多いスポーツだと思ってます。自分の生き死にを他のスポーツと比べて自分の判断ですることが多いですしね。
あと、ここに年輩の方いましたら一般論として言ってるので誤解しないでほしいんですけど、指示されないと自分でなにも判断しない大人が多いなと思います。それは若者よりもはるかに多いです。おそらく、ツアーから登山をはじめたからかもしれないです。そこらへん他の山小屋の方どうでしょうか? なんかうちの小屋はとても多いんですよ(笑)
世の中的にですか? それともうちの小屋だけ?(会場 笑)
とくに昨年多かったのが、使用済みコップと使用前コップの分別がつかない人がとてもいて(笑) これ、もう、誰が見ても一目瞭然なわけですよ!(笑) さすがにぼくもいい加減にしてくれと言いましたよ。すると、2ちゃんねるに、チビのヒゲに怒られた、コップ如きで、と書かれました。(会場 笑)
えっと、皆さん本当に怒らないんですか? (会場 笑)
あと、えーと、もうぼくの愚痴を皆さん聞いてください(笑)
山:いいですね(笑)
こもれび山荘・竹元:ぼくの小屋で朝5時にでて夜8時くらいに帰ってくる人いるんですけど、もうちょっと早く帰ってきませんか?というわけですよ。もちろん、疲れて遅れたとかじゃなくて、星を撮ってたと。わかるんですけど、それから夕食用意してくれとこうくるわけです。そうやって注意すると、「北アルプスじゃそんなこと言われなかったですと」(笑)
で、北アルプスの人に聞いてみると、「もう疲れてそんな怒るなんてことしてせん」と(笑)
なんかすごい疑問なんですよね。
ゆ:いま聞いてて思ってのが、松本に住んでる私なんですがね。木造の家で冬なんかスース―として寒いわけですが、私も暖房のきいた家の戸をよく開けっ放しにするので、家族に怒られるんですが、それと変わらないなと思いました。 (会場 笑)
竹元:それネコと一緒ですよ(笑)
太子館・井上:怒る気力もない富士山なんですけど。(会場 笑)
ゴミ問題なんですけど、最近もっとも登山者が多かった4,5年前よりもじつは今のほうが多いんです。
なぜかというと、シェルパ斎藤さんも言ってましたが外国人の登山者が増えたんですね。県の調査では、2~3割は外国人といわれていて、なかでも東南アジアの方が増えているんですね。
彼らは、ツアーで夜の7時くらいに五合目を出発して、ご来光をみる前の11時くらいにうちなんかにもワーっと200~300人で休憩しに来るんですけど、彼らが去ったあとには、山小屋周辺はゴミだらけなんですね。
それってなんなんだろう? と思ってたんですけど、東南アジアは街とかゴミだらけで汚いところありますよね、なのでゴミは捨てるものという感覚でいるから、こういうことは長い目で見なきゃいけないのかなぁなんて。
40年くらいまえの話ですかね、うちの親父が唖然とした光景があったと聞いたんですけど、親子で子供が飲みかけのジュースを片手に持って歩いてたら、「あなたいつまで持ってるの、はやくそこらに捨てなさい!」と(笑)
さすがに、うちの父親もこりゃ無理だ…と。
そう考えると、時間をかけて長い目でみることが必要で、国の発展や教育と似たようなとこがあって、すぐに変わらないのはある意味しょうがないのかなと思いますね。
ただ、日本みたいな教育水準の高いところで、竹元さんが言うようなマナーの悪い人がいるっていうのは、なんなんだろう?って思いますけどね。
広河原山荘・塩沢:すごい言ってることわかるんですけど、もうしゃあねぇな!って。(会場 笑)
うちなんかもコップとかいろいろあるんで、位置とか変えちゃったです。あと、中履きとかで外でてしまう人多いので、ぜんぶ土足にしました。面倒くさいんですよ注意とかするのが。
だから、そこら根本的に変えていくというサービスをしないとなかなか難しいですね。
また、登山口にある山小屋の人はわかると思うんですけど、杖の墓場ができますよね?(会場 笑)
枝拾って杖に使うんですけど、あれは誰かが置くからどんどん集まっていくんですけど、だからわざとまとめて置くと、今度はそれを利用する人もいると(笑) 逆手にとればいいわけで。
ゴミなんかも一人が捨てると皆捨てることあるじゃないですか、だから一つ見つけたらこちらで捨ててしまえば、
一つのストレスで終わるので、それで忘れられるじゃないですか。そういう形態にしないとだめですね。
食事後の食器類もそうで、100人がちゃんとしてても一人くらいは勝手においていく人いますよね?(笑)
だから、一人ずつ返してくださいって言ってます。
男子用のトイレがそうだと思うんですよ。汚れるから的をつけてますね? あれで回りに飛び散るのが30%おさえられるらしんですよね。そんな変換が必要なんだと。的つけるのに100円で済むんであれば、そういうおカネを使う商売の仕方で、自分のイライラする時間を無くしたほうがいいですよね。
山:はい、スゲー生々しいいい感じの話になってきてるんですけど、そろそろ時間も迫ってきましたので、あと2人くらいかな? 喋り足りねーぞって方どうです?
薬師岳小屋・小林:ルールとかマナーとかについてなんですけど、最近はツアーでくっついてきて、何も知らない登山者の方でよくみるのが、ご自分の道具を使えない人。
たとえば、バーナーを箱ごともってきて、どうやって使うんだろ?とか。(会場 笑)
カッパとかレインカバーとか値札がついたままとか(笑)
あととんでもないのが、ツアーガイドが枯れ葉のとこにタバコをポイ捨てなんてことも。それだけは目の前で怒りましたけどね。街の感覚なのか、自分さえ良ければって。ガイドなのに何やってんだって!
ELK柳澤社長:山のガイドなの?
薬師岳小屋・小林:そう言ってましたね。おれはガイドで偉いんだぞ!みたいな感じで、食事の時間でもないのに勝手に来てお茶飲んでたりとか。北アルプスであった偽ガイドのおカネの話とか、なんかへんな世の中になっちゃったなって。
山:はい、あと一人どなたか。
ゆ:リクエストがありましたので、今シーズンより七丈小屋で始められる花谷さん、豊富はなどあれば?
【七丈小屋を継承する花谷さんの泰広さん抱負】
七丈小屋・花谷:はい、シメですか? (会場 笑) すみません、途中からの参加だったんですけど、ぼくが七丈小屋のお話をきいて手を挙げたのは、甲斐駒ケ岳を愛してるからで、これ以上のお話はないと。
ただ、じつはもっと先をみてまして。
山の世界は、山岳会や山岳部もそうですし、ぼくもそうだったんですけど、ある程度まで人に教えてもらったり着いていかせてもらうことで学べたんじゃないかと。たとえば先輩なんかが、「おまえまだ10年早い!」なんて言うと、それが抑止力になったり、または良いか悪いかはべつにして、ある程度の秩序が保たれていたんじゃないかと思うんですよ。
それが、いまは時代が変わって皆さん個人で山に来られるようになった。そして情報も良い悪いべつとしてたくさんの情報を手に入れられるようになったと。敷居が低くなり始めやすくなった一方で、おかしな事故が起こったり、一昔前には考えられなかったような山小屋でのあれこれがあったりと。
ぼくはそこの根本のところは、「皆知ってるだろ、これくらいのことは分かってるだろ」というのが崩れて来てるんじゃないかと。本当に山登りはじめたばかりの人って、本当に皆さんなにも知らないです。それに対して、勉強してこいよ、とかそういったことでは解決しないと思うんですね。
で、ひとつ自分でいま考えているのが、ぼくはいま北杜市に住んでまして、八ヶ岳や甲斐駒もあるし、とてもフィールドが豊かです。じつは様々な山があるけど、それぞれ求められるスキルや体力などによって、ちゃんと分けられているんですね。
例えば、日向山であればいわゆるハイキングの装備で行けますけど、瑞牆山となるとその装備あるいはそのスキルでは厳しい、となるし。さらに甲斐駒になればもう一段上のものが求められるんじゃないかと。やはりそういうものを情報として見せてあげたほうがいいんじゃないかと思ってて。
いま日本の山にはエリアマップというものがあるけど、実線と点線しかない。それだとわからないんですよ。
それだったら、スキー場の様にね、初心者なら赤、中級車は緑、上級者は黒色とかで分けてあげたらいいんじゃないかと。
スキー始めたての人がいきなり黒色のコースに突っ込まないですよね? 例外はあれど。そんな情報が必要なんだと思います。もちろんそれがすべて解決するとはおもってないです。
今後、インバウンドでいっぱい外国からも登山者来ますけど、いまの地図じゃわからないんですよ。じゃあ穂高の稜線ぜんぶ一緒ですか? 槍から南岳は比較的簡単に歩けても、その先の大キレットは全然違いますよね?ましてや奥穂から西穂となると完全にあれはもう別物ですよね?
そういうものを、ちょっと見せ方を変えると色んなことが色んな人に伝わると思うんですよ。
実際ヨーロッパのトレイルとかみてると、例えば氷河のルートなら何色とか、色分けされてて初めて行った人でもわかりやすいんですね。やっぱりそういうものが日本にもある意味目印となって、共通言語みたいなものがあれば、ハンドルネーム同士でいきなり山に来ても、お互いにレベルがわかれば…。
もちろんぼくもいま練ってる最中なんですけど、そういう共通言語でおかしな事故とかは減るんじゃないかと思ってます。
ただし、それは山小屋だけじゃなくて登山業界全体で取り組まないと、それこそおかしな事になるんじゃないかと思います。一方で山に来る人も増やしていかないと、今後成り立たなくなる仕事もでますね。登山ショップとか山小屋とかガイドとかそうですしね。
なかなか難しい舵取りかもしれませんが、ぼくはそんな事も見据えて、甲斐駒、いや北杜という恵まれたフィールドをつかって、実験的にも発信していきたいなと。
実際、小屋の苦労というのはぜんぜん知らなくて、きょう皆さんのお話を聞いてて、参ったなぁ~と…(会場 笑)
ホント大変なんですね?小屋ってね。実際自分も色々準備してて思うんですけど、裏でこんなことしてるんだなぁ~って、身に染みて感じてるので、今度は小屋に来ていただく立場として良い場を提供できたらいいなと思います。
七丈小屋は通年でやるので、まず自分がちゃんと過ごせるってのが第一の目標になるのかなと思ったり、まあそうも言ってられないので、山小屋の皆さまに色々とご指導いただきながら頑張っていきたいと思ってます。
こんなシメていいの? (会場 笑)
山:素晴らしいシメをしていただきありがとうございました。いやあ、最初は皆さん遠慮がちでどうなるかと思いましたが、話は尽きずあっという間で、とても面白かったんですけど、どうですか皆さん?
なんか話し足らないのでまたやりたいなぁと。テーマを変えてもいいですし、皆さんまた集まっていただけます?(笑)
ゆ:はい、今後この場所もですね、転々としていってもいいのかなとも思ってまして。例えばつぎは茅野でもいいし、松本って話もありますし、いえいえ、この山小屋に関するディスカッションはやっぱりELKでやりましょうでもいいですしね!一回で終わるつもりは毛頭ないので。今後もよろしくお願いします。今日はありがとうございました。
ELK柳澤社長:皆さん、我さきへと先を急いでクルマぶつけないでくださいね(笑)
駐車場でたまにあるんです。(会場 笑)
山:それでは皆さん、約2時間ありがとうございました。
残りの時間でぜひ交流を深めて帰ってくださいね!
【後書きに代えて】
あれはたしか2012年頃だったでしょうか。
2011年11月から山の情報番組と題してMt-channel(通称やまちゃん)という本邦初?である山のWEB-TVに全精力をそそぎつつ、自分たちや投稿者の山の簡易動画をたくさん公開してたのですが、番組ゲストに穂高岳山荘3代目の今田恵さんがいらっしゃったんですね。そのときに番組中におっしゃった一言が、
「やまちゃんは、ジャンルを超えた山の人が集まるので、その架け橋となって皆仲良くなるといいですね」
たしかそんな感じだったかと。
そもそも、わたしの趣向する登山のキーワードがMixed(最近はあまり進化してないが)で、歩く・走る・滑る・よじ登る・泳ぐ・漕ぐ等ジャンルレスと思ってるんですが、さしずめ山岳界において新興勢力と認識されている”山を走る人”も私はやってることから、その筋に友人がおおかったので、自然そんな番組になっていったんですね。
で、その今田さんの一言が、どういうわけかずーっとわたしの頭の中に残ってて、とかく山小屋と接点のない、さながら山で、「特急」なんて揶揄か敬意かわからない別称(蔑称?)もある”山を走る人”と”山小屋”をつなげたい!なんてことがこの企画へと繋がった経緯もあるんです。
世は、異業種交流、異ジャンル、はたまたジャンルレスと、とかく退屈な画一化からボーダレスの風潮になって久しいし、また、異端、異彩、異色と人と違ってることこそ本来であり、ネット時代の特性もあってか、異国へいったりするとよくあるカルチャーショック、それが、山や街問わず”人間”に感じることが多くなってきたことは、没個性なんていわれてた一昔前以前にくらべると、喜ばしいことだと思います。
人と異なってていいじゃないか、本心からそう思うし、それは山も街もいっしょだと。
イベント中も話題にあがりましたが、「今後インバウンドで登山客が増えてカオスの心配」、「登山客が増えないと、山小屋もショップもガイドも商売にならない」の二項。
くわえて、ふと思い出したのですが、以前北海道の大雪山系に山の仕事でおとずれた際に、地元の方がボソッと言った本音が、
「こんないい山だって、人なんかほとんど来ないから、自然の猛威で登山道なんかすぐなくなっちゃうよ」
山は見るものではなく、登山するということでいうなら、人が来てなんぼです、と。
もちろんある程度バランスのうえに成り立っているところもあるだろうけど、ここで無理矢理、さきの今田恵さんの言葉と結びつけると、
「様々な異なる人たちが山に来て仲良くしましょう」だと思うのです。
それが、この変遷の時代において、あと30~50年くらいは生きるであろう、山と関わっていくであろう私たち世代の本音かもしれないと勝手に思ってます。
もちろん、温故知新を尊びつつ、偉大な先人に感謝しつつです。
山を走る人一つとっても、なかにはいずれ重荷を背負ったり、山小屋泊したりする人も確実に出てくるわけですから、3年先の想像力よりは、やはり最低30年くらいの想像力を働かせないと、なかなか理解できないことってあるはずだし。
ともあれ、このたびの「100年後の山に想いをはせる」YAMANOVAトークイベント。わたしも足しげく通う甲府ELKさんの全面協力をえて、80名近い参加者の皆さまと、フォーラムでも、よくあるトークイベントでもなく、車座スタイルで1/80の想いをそれぞれが話せる場をもてたことに、大変感謝いたしております。
今回、話さなかった方もおおいにありだと思ってます。沈黙も一つの意見だと思ってますので。
ただし、話したかったけどどうしても話せなかった、という方はつぎの機会にご意見どうぞお願いします(笑)
本来わたしどもが望む車座トークセッションは、あたかも下山後に焚き火を囲みながら、年端も経験もジャンルも男女も立場も関係なく、缶ビール片手に談笑してるしゃべり場。さすれば、普段でてこない貴重な意見だって聞けるかもしれないですよ?(笑)
口論の心配、アルコールの心配、事故の心配、温度差の心配などは、結局は山におけるマナー同様、下界もおなじで、参加者それぞれに問われること。自由や自立ってそういうことだと思うのです。
そのハードルを超えるべく、つぎはまた仕掛けてみたいとおもいます。この山小屋シリーズもぜひ継続していきたいですね!
このたび、ご参加の皆さま、そして会場提供と準備をしていただきましたELKの皆さま、メディアの皆さま、そして無償で音響協力していただいた方、重ねて本当にありがとうございました。
YAMANOVA主宰 ・田中ゆうじん
(おわり)
前編記事はコチラ
YAMANOVAとは?
本メディア、ドキュウ!の運営母体。
もともと”山のある暮らしをカルチャーに”をコンセプトに今回のようなトークイベントをしてこうぜ!という比較的安易な?!発送でスタートした突発的自由奔放遊び暮しネイチャーライフユニット。山のある暮らしの共同体を目指している。