3月に甲府のアウトドアストアELKさんでの記念すべき?!第一回目のYAMANOVAのトークライブ。今回のYAMANOVAは当初から企んでいた登壇者のいないトークイベント、車座トークギャザリングというコンセプトで山で焚き火を囲んで語り合うといった趣向で開催した。
特テーマは「100年後の山に想いをはせる」。
山小屋の次世代の小屋番さんたちや登山の愛好家、メディア関連の方々約80名が甲府に集合し、誰もが生きていない100年後についてアツーく語り合ったのでした。
その模様を前後篇に分けてお送りします。
ぜひご覧ください。
<CONTENTS>
【ご挨拶】
YAMANOVA山本 喜昭、田中 ゆうじん、大谷 拓哉、ELK社長 柳澤 仁、店長 中込 真太郎、
山梨県山岳連盟会長 古屋 寿隆
【山小屋関係者ご紹介】
今田公基・北ア穂高岳山荘/井上 義景・富士山八合目の太子館/森本 千尋・北岳肩の小屋/
小林 樹里・南ア薬師岳小屋/塩沢 顯慈・南ア広河原山荘/相川 竜比古,光海・富士見平小屋/
吉木 真一・金峰山小屋/竹元 直亮・南アこもれび山荘/齋藤 しのぶ・南ア馬の背ヒュッテ/
中村 光吉・三つ峠山荘/西川 敏正・南御室小屋/高妻 潤一郎・白根御池小屋/井上 佳之・長衛小屋/
猪俣 健之助・北岳山荘(紹介順)
甲斐駒七丈小屋・花谷 泰広(後ページ)
【100年後の山ついて】
自由な登山スタイル/タケコプターで航空法関係なく飛ぶ?!/バーチャルリアリティーで登山をする時代/補助装置で救援活動/辛いキツイがむしろ価値になる!?/ネット時代の弊害/進化はシンプル/機械で登るようじゃぼくたちの失敗よ/100年前は自由だった/
【激論!山小屋がなぜ登山客を怒るか】
学校登山に警告/ふざけるな!顧問の先生ちゃんとしろ!/
怒っても登山客はちゃんとまた来てくれる/ハンドルネーム友だちの待ち合わせに…?/
ギョサンは真似するからNO!/ギョサンで登れないくらいならやめたほうがいい/
登山は究極の自己満足の世界、どんなスタイルでもOKでは?/私は怒らない/
発信はやめない、ただし数%勘違いする人がいる/
ぼくは怒りません、自由になりたくて山に来てるのになぜ?/
登山客を怒るのは、夕食をまた作るのか?とか、山小屋の勝手な事情もある?
【ご挨拶】
山本喜昭(以下:山):はい!皆さんこんばんは。お待たせしました、ほぼオンタイムでお集まりいただきありがとうございます。わたくし、本日司会をやりますYAMANOVAの山本と申します、よろしくお願いしまーす!(会場拍手)
YAMANOVAってなんやねん、ってわからずにお集まりいただいている方もたくさんいらっしゃると思うのでさらっとご説明します。
“山のある暮らしをカルチャーに”というスローガンで、2016年11月のイベントでキックオフしました。イベントでスタートはしたんですけど、それに限らず色々な山の遊びを共有できたらなと思ってますので、よろしくお願いします。
きょうは、ご覧のとおり車座風に皆さん座っていただいていると思うんですけど、一般的にありがちな話す側と聞く側というものではなく、皆で話そうよというコンセプトです。なので、ぜひどんどん話してくださいね、発言しなかったら当てますので(笑) よろしくお願いします。
きょうのテーマですが、”100年後の山に思いを馳せる”ですね。ここにいる皆さんおそらく100年後生きてないとおもうんですけど、想像力をはたらかせて山とか山のある暮らしとかを話せたらなと。
また、会場には次世代の山小屋オーナーの方々を中心に、山の愛好家の方たちが主だとおもうんですけど、いろいろジャンルを超えて混じり合ってですね、どうぞお仲間になって帰ってください!私語もOKですので、横の方ともどんどん喋ってください。
それでは、最初に主催のメンバーから一言ずつお願いします。
田中ゆうじん(以下:ゆ):主催者の一人です、ゆうじんと申します、どうぞよろしくお願いします!
簡単に自己紹介しますと、10年くらいまえに東京から長野の松本に移住しまして、いまは春夏秋冬登山をしてます。きのうは小谷にスキーで山に入ってました。夏は山を走ったりもするし、以前はテント泊もやってました。また、2011年から“やまちゃん”という山のWEB‐TVや、美ヶ原トレイルランでコース責任者なんかやってきたものですから、山の友人知人がどんどん増えましてね。そうすると、同年代の山小屋の方たちともお知り合いになるんですけど、山もなにもふくめて皆さん同じような悩みみたいなものを持ってるんだなと思いまして。
私も二児の父親なんですけど、これからの時代をどうやって生きるか、とかそんなことですね。
なので、普段は好き勝手に自分流の登山をやってるんですが、たまにはこうやって公のためになるようなことが出来ればと、こんな山に関するテーマ性のあることをやろうという企画なんです。
どうぞ忌憚ない意見を皆で出し合いクロストークしましょう!
山:ちなみに自由なトークと言ってもですね、ちょっとだけルールがあります。それは「自由と寛容」ということで、お互いの意見が違っても、なるべく認め合って建設的な楽しい場にしていければと思います。
なので、「おいそれ違うぞ!」なんて、言い過ぎはやめましょう(笑)
ということで、もう一人のメンバーである大谷さん。
大谷拓哉(以下:大):皆さんこんばんは、大谷拓哉と申しますよろしくお願いいたします。
私もきょうは松本市からやってきました。前のほうに座ってる方は私がギョサン(注:魚サンダルといって、ビーチサンダルの様なもの)を履いてるのが見えると思うんですけど、グリーンシーズンはなるべくこれで私は山に行くようにしてます。普段は山小屋さん相手に広告代理店をしてまして、またお土産として手拭いだとかバッヂなどを作ってます。きょうは、納品させていただいている業者としてご挨拶してる気にもなるんですけど(笑)
甲府はですね、4月生まれの娘がいるんですけど、当時甲府に来たときにナシの花が咲いてましてね。こんな真っ白な心をもった子に育ってほしいとおもって、梨花とつけたんですね。もう22歳で下の娘も成人しましてね、私も先日50歳になったばかりです。100年後の山、ということで、私もあと50年くらい生きられるのかななんて思ったりして(笑) どうぞよろしくお願いします。
山:つぎに、今回、会場のご提供からお声かけまで全面的にご協力いただきました、ELKの柳澤社長と中込店長から一言お願いします。
ELK柳澤社長:こんばんは。ELKの柳澤と申します、よろしくお願いします。いまお話にありましたように、色々なご意見をだしていただいて、よりよい山小屋の在り方を皆さんで話していただいて、皆がいっぱい山行って、ELKでたくさん物買っていただけたらと思います。(会場 笑)
一つお願いなんですが、お客さんで「おう、あそこの山小屋の人が来るんだったら、ひとこと言いたいことがある!」なんてあったんですが、そういうことはなしにしましょうね(笑) どうぞよろしくお願いいたします。
ELK中込店長:こんばんは、ELKの中込と申します。きょうは、私たちにとっても初めての試みでして、こんなに多くの山小屋の方たちや、山に行く登山者の方たちが集まっていただいたのも初めてです。色々なお話をどうぞ面白おかしくしていただいて、この2時間遠慮なく楽しんでいただければと思います!
山:そしてきょうは、山梨県の山岳連盟の会長の古屋さんにも来ていただいてます。
古屋寿隆:100年後の山のある生活ということで、いろいろ課題はあるんですけど、ぜひこの場でお話をしていただいて、次の世代や、そのまた次の世代へと残せるような、有意義なご意見を頂戴できればと思ってます。
よろしくお願いします。
山:それでは、せっかくですから山小屋の方たちに、小屋名とお名前と一言だけお願いしたいと思います。
今田公基:穂高岳山荘の今田と申します。きょうはよろしくお願いします。
井上義景:地元山梨は、富士山八合目の太子館の井上です。よろしくお願いいたします。
森本千尋:北岳肩の小屋の森本と申しましす、よろしくお願いします。
小林樹里:南アルプスの薬師岳小屋の小林です、よろしくお願いします。
塩沢顯慈:南アルプス広河原山荘の塩沢と申します、よろしくお願いします。
相川光海:富士見平小屋の相川光海と申します、よろしくお願いします。
相川竜比古:富士見平小屋の相川竜比古です、よろしくお願いします。
吉木真一:甲府の北側の金峰山にある金峰山小屋(きんぽうさんごや)の吉木です、よろしくお願いします。
竹元直亮:ぎりぎり山梨じゃない、北沢峠にあるこもれび山荘の竹元です、よろしくお願いします。
齋藤しのぶ:仙丈ヶ岳の馬の背ヒュッテ斎藤です。今年から管理人として入ることになりましたよろしくお願いします。
中村光吉:三つ峠で三つ峠山荘を経営しております、中村と申します。よろしくお願いします。
西川敏正:南アルプスは、鳳凰三山で南御室小屋の西川と申します、よろしくお願いします。
高妻潤一郎:白根御池小屋の高妻です、よろしくお願いします。
井上佳之:南アルプス長衛小屋を管理させてもらってます、井上です、夫婦で参加です。よろしくお願いします。
猪俣健之助:北岳山荘の猪俣です。よろしくお願いします。
山:はい、ありがとうございました。それでは話しますか(笑) といってもなに話せばってなると思うので、こんなテーマを用意してきました。
例えば、「100年後の山の楽しみ方」ですね。ぼくがもし100年後生きてたらこうしていたいとか…、
この場で先頭きるのはちょっと大変だと思うんですけど、我こそはって方いませんか?(シ—–ン)
どうすかゆうじんさん? 主催者として口火を切っていただいて(笑)
ちなみにパスするなら言ってくださいね。
【100年後の山について】
ゆ:はい、ではパスで。(会場 笑)
では、自己満足の登山のことしかネタはないですけど、春夏秋冬北アルプスに入ってます。で、友だちいま少ないのでソロで入ることが多いんですが、例えばつい最近でいえば、常念岳という地元の山を厳冬期にソロでやったことですかね。冬は林道ってゲート閉まってるんで歩かなきゃいけないんですけど、本当はスノーシューが一番適してるんですね。尾根通しで往復するんですが、森林限界までは藪がこくてターン切りづらいので。
だから、いまはショートスキーにシールを着けてそれでやってます(笑) ようやく部員が2名になりました(笑)
そこにいる安曇野の柴田さんが、テレマークをショートにしてやり始めたんですね。
山:100年後についてはどーです?
ゆ:うーん、マナーって大事だと思いますね。なるべくルールとか規制とかなければいいなと思うので。そんな風に決め事で縛りつけられない山の世界があればいいなと思います。ざっくりですみません!(会場 笑)
大:100年後って雪あるんですかね?
ゆ:短いスパンでみると年々減っていってると皆さん口をそろえて言ってますが、わかりませんね。
ところで、柴田さん、ショートテレマークスキーどうですか?
柴田:テレマークは不便なのでそこがとても楽しいですよね。ゆうじんさんのショートスキーもそうですが、踵がフリーなので歩くような感じで雪山を移動することができますよね。
話はボーンと跳びますが、100年後には人間は脚を使わずに移動してるんじゃないかと思ってまして…。
ゆ:お、出ました。具体的にどんなです?
柴田:たとえばタケコプターみたいなものが、航空法関係なく人々の移動手段になってて。(会場 笑)
すると、登山自体はかなりアナログなもので、人間の体をつかって移動する自転車やスキーや登山そのものも、もしかしたら、物好きだねぇ~という風になるんじゃないかと、ちょっと心配してます。
北村:北村亮です。さっきの話じゃないですけど、VR(バーチャルリアリティ)が進化してきてるので、バーチャルなところでどこへでも行けて、体験できてしまうことが、かなり流行ってくるんじゃないかと思ってます。
ですから、先ほどおっしゃった様に実際に登ってる人たちは、物好きだったり贅沢だったりと、稀少になるのかなぁって思います。
山:むしろ生身で登るのが贅沢だと。
穂高岳山荘・今田(以下:今田):現在、上高地から穂高岳山荘までのルートは、グーグルストリートビューで360°みえてしまうんですね。だから景色だけ楽しみたいという方々はすでにそういった楽しみ方をしると思うのですが、逆に自分の脚で登ることに喜びをみいだす人たちは多いのが現状ですね。
100年後は、脚に補助装置みたいなものをつけて、筋肉の負担を減らして登ることが出来る機械があるかもしれないですね。
大:介護の現場で開発されたりしてますよね。
今田:これを小屋側の目線からすると、レスキューの現場では有効活用できるのかな、なんて。
例えば、体重80㎏の人を2人で運ぶことってとても大変なので、そういった補助器具があれば喜ばしいですよね。反面、補助器具を着けて険しい山をどんどん登る人が増えた場合、登山行為の価値をそこ(自分の生身で登ること)に置いている場合は、その価値を損ねるのかなと思いますよね。
山:ここでいま来られました、山小屋の方をご紹介します。花谷さんどうぞ。
甲斐駒七丈小屋・花谷泰広:あす入山する準備で、すみません遅くなりました花谷と申します。小屋のことはド素人なんですけど、4月から甲斐駒ヶ岳の七丈小屋を指定管理者としてやらせていただきます。きょうは、山小屋の人間という立場で、本当に不思議な気持ちなんですけど参加させていただきます。どうぞよろしくお願いします。
堀内:同じく七丈小屋に4月から務めさせていただきます堀内と申します、よろしくお願いします。
山:ありがとうございます。先ほどテクノロジーという話題で盛り上がってきたわけですが、一方でギアやウェア類などでもテクノロジーの進歩は顕著です。そういったテクノロジーの話題でもいいですよね。どうですかね?
三つ峠山荘・中村(以下:中村):わたしも小さい頃から山荘のほうへ行くことがありましたし、とくにここ10年くらいの山の流れはなんとなく見てきたつもりです。最近スマホが現れてからは、様々なネットワークが発達して、以前は麓で待ち合わせて登山をするのが一般的だったんですが、なんと山頂集合とかもあるようでして、そんな広がり方も私はありだなと思ってみてますね。
山:山小屋の方々としては、そこはどう捉えていらっしゃるんです?
中村:そうですね。なかにはその場で集合して誰がリーダーだとか決めないで、どうかな?と思うこともありますが、山の仲間を募るということで山の社会みたいなものが繋がっていくので、悪いことではないと思いますね。
山:なるほど、集合場所が山小屋であったり、山頂だったりというわけですね。ありがとうございます。他にどうです?
こもれび山荘・竹元:さきほどのVRのお話に違和感を感じたんですけど、山の楽しみ方ってそもそも機械をつかって登ることが楽しいのか?と。自分の脚で登るというもっとも単純な行為が楽しいのであって、バーチャルで景色を見ることはそもそも登山ではなくべつのスポーツや遊びだと思いますね。
で、いまの登山もそうですが、どんなにギアが進化しようと逆に僕はシンプルになっていってると思います。
人間が本来もっているものをサポートするようなものはいいと思いますが、例えば握力が3倍になる装置とか、どんな寒さにも耐えうるウェアとか…、それを良しとする文化が100年後にあるとすれば、それはいまを生きてる僕たちの失敗だと思いますよ。
例えば、10年後20年後に花谷泰広くんのいまやってる先鋭的なクライミングが決して色あせることがないのと同じです。
大:確かに、物が進化した結果シンプルになってきてますよね。そうすると必然というか、軽く速くなっていって、トレイルランなどのアクティビティにもつながってるのかななんて。
ゆ:この大谷さんのギョサンで歩荷をするなんてのは、まさにシンプルの極みですよね。えっと進化とは関係ないですね(笑)
広河原山荘・塩沢:100年後はわからないけど、100年前はわかりますよね。登山は冒険だったんですけど、それをサポートするのが山小屋だったりしますよね。なにもないところに山小屋を建てたりすることが許された時代でしたが、いまは国有林だとか国有地だとかで規制が厳しくなって、木一本伐るのも大変な時代になりましたよね。
100年前なんてそんな規制なくて、とりあえずあそこの山頂にいってみたい…そこから始まりましたね。
それを、山小屋の人間が100年後にそう思ってもらえるように、楽しませることができたらなと。
それには、登山者に対してある意味甘やかす部分と厳しく怒ったりする部分が必要なんですけど、それが現在ですよね。おそらく、どこの山小屋もそこのところが難しくなってきてるので、こうしてお話してると参考になるし面白いですよね。
一昔前は、山小屋の親父が遠くから登山者を見てて、オマエなんでこんな時間に山小屋来てんだこのやろう!ってあったと思うんですよ。(会場 笑)
これ言うとみんな笑うんですけど(笑) これって僕は必要と思ってるんですけど、いまの時代だと叩かれてしまうんですよね。私も怒ったこともあればケンカしたこともあります。でも、100年後にもこういったときに本気で怒れる山小屋の人がやってないといけないと思います。山の楽しさを教える反面、厳しさも教えなきゃいけないと思うんですね。あそこの山小屋ではこれやったら許されたよ、ではなくて、日本全国どこへ行ってもこういうことやると怒られるよ、ということを認識してもらうことも大事だと思います。
【山小屋が登山者に怒る事情とは】
富士見平小屋・相川(以下:相川):ぼくはテクノロジーが進めば進むほど、登山人口は減らないと思ってます。よりシンプルになっていくと思うし、自分の力で登ることにより魅力がでてくると思うんですよね。
100年後のことはわかりませんけど、100年後を想って教育、それだけだと思います。ぼくは、山小屋に入って4年なんですけど、怒るのを我慢したことは一度もありません。怒鳴りまくってます。(会場 笑)
じゃなんで怒るかっていうと、山は厳しいし、その人の命が一番大事だからですね。そして、山の素晴らしさというものを大勢の人に見てほしいから。
あと、怒鳴る怒鳴らないということで言いますと、本当にコテンパンに怒鳴りますけど、お客さんはどんどん増えていくんです。あそこの小屋は怒ってくれるからいいよね、ということだと思うんです。
親父から教わったことでもあるんですけど。
なので、それを貫き通していきたいと思ってます。色々な事故がありますけど、本当に教育したいのは学校の先生ですね。(会場 笑)
ゆ:どういった意味でですか?
相川:うちに生徒が大勢登山に来たときに、生徒や仲間が登ってるときに、残った先生が酒を吞みはじめて…。
普通呑めないですよね? 仲間が登っててなにかあったときに助けにいけるのかと。そういった小さなことを見逃してはいけないと思うんですよ。周囲の先生からは怒鳴ってくれて感謝されましたけど。ぼくはそう思ってやってます。
山:ありがとうございます。山小屋の在り方みたいなお話に展開してますけど、登山者の方たちでいまのお話を受けて、なにかご意見ありませんか?
富士山太子館・井上:怒るということではすこしニュアンスが違うんですけど、うちはご来光を見に来る登山者がおおいので、禁酒をしてます。私自身はお酒大好きですけどね(笑)。
夜のうちに登山者は起きて山頂を目指すので、また標高が高いので高山病もよくありますし、登れない方がおおいのも見てきました。うちのモットーは一人でもおおくの登山者の方に山頂に行ってもらうことなので、お酒をご遠慮いただいていると。
なんでもかんでも楽しければいいやではなく、うちにいらっしゃる方々は山頂を目指すんですよね? なので、そこはお客さんを思ってのうちなりの厳しさでありますね。
山:ありがとうございます。禁酒だそうです。(会場 笑)
参加者A:先日那須岳で事故ありましたね。私も50年前くらいは高校の山岳部でして、そのときの教師もいまとおなじでまったくもってその程度でした。高校の山岳部の教師ってぜんぜん進歩してなくて…。雪山なんて知らないんです。今回の事故も一番の親方はどこかで酒吞んでまして、これとんでもないことです。刑事罰与えたほうが良いですよ。高校生殺されちゃったわけですから。
なので、あなた(相川さん)みたいな人はとても大事だと思ってて。それが言いたかったです。
薬師岳小屋・小林(以下:小林):テクノロジーの進化ということで、最近はネットでササっと見て計画をして、気軽に山に来てしまう人がいます。なかには情報は旧いこともあったりで、みてのとおりもう歩けないんだけど…とこちらに文句を言ってる来る登山者だっていました(笑) 例えばヤマレコをみて、ここは2時間で登れる予定だからあの時間に出たけど、全然違うじゃないかと(笑) 荷物や体力や経験や年齢など、様々な条件を無視した甘い考えの人がいますね。それはテクノロジーの弊害というか…。
こもれび山荘・竹元(以下:竹元):そういうときは注意したりします?
小林:はい、しますね。以前、午前9時くらいに山小屋に電話があって、いま新宿なんですけど、って。(会場 笑)
それなら高尾山にでも行ってくださいってなりますよね。
北岳肩の小屋・森本(以下:森本):三つ峠山荘の中村さんの言った、ネットで集まってきた登山者の話ですけど、集まることにはなったけど、皆ばらばらに登ってきたり下ったりで、また下の名前やニックネームしか分からなかったりと、けっこう困ったことありますね。
あと、さきほどのギョサンで登るというお話ありましたけど(笑) 相川さん(富士見平小屋)がそれみたら怒りますか?
相川:はい。必ずマネする人がでるので。
森本:はい、僕ももしかしたら言っちゃうかもしれないな、なんて思ってました(笑)
ゆ:これを聞いて、大谷さん(ギョサンで登山する当人)どうですか?
安易に真似してしまうことってあるかもしれないけど、それもテクノロジーの弊害の一部だと思うんですね。それは、ネットリテラシーといって、情報の受け手がどこまでその情報を解読するかというセンスも問われるし、かといって、発信する側もどこまで一々説明しなくちゃならないとかってなるじゃないですか。けっこうデリケートなところかなと。
大:そうですね。自分はギョサンで登山をおすすめはしてないです。
ただ、ギョサンで登れないくらいなら山登らないほうがいいですよ? とは思ってます。
そのくらい、自分の技術や身体のことを知ってるつもりですし、靴を履いてるから岩にぶつけても大丈夫とか、じつは可笑しな話だと思うんです。岩蹴りながら歩くということでもあるし、だったらしっかりと自分の足を置く場所を見定めて一歩一歩いくという繰り返しをしていくことが大事で。
実際、山をなめんなって怒られることもあります(笑) ただ、自分の経験からここは危険だなというところは回避したりもしますし、そこはわかってるつもりです。
ゆ:なるほど。私そういった意味でもとても興味あるのが、さきほどご挨拶された七丈小屋をはじめられる花谷さん。
万が一、ご存じない方いらっしゃるといけないので一応ご紹介しておきますと、国際山岳ガイドで、数年前にあのピオレドールを受賞した、ま、超有名なあの花谷さんです。
そういったことに、どんな意見お持ちですか?
七丈小屋・花谷(以下:花谷):国際山岳ガイドではなくて、普通の山岳ガイドです。(会場 笑)
さっきのテクノロジーの話を聞いてて、そもそも自分の登山が究極の自己満足の世界だと思ってるので、べつに何をつかって登ろうが、その人が満足するんであればいいんじゃないかというのが、基本的な意見です。
かといって、登山の価値というものは、普遍的に100年前も後も変わらないと思うので、それを分かる人が、客観的な評価をし、いや対外的には残るとおもうので。
だから、なんでもありの登山になったとしても、それをやる側も見る側もヨシとするなら満足するならば、ぼくはどんどんやるべきだと思う。
それをやるやらないは個人の自由なので、いいと思えばやってそれを深めていけばいいんじゃないかと思います。
あと、怒る怒らないという話がありましたが、僕は基本的には怒りません。
なぜか…、皆知らないんですよ。
わたしの任されてる小屋の場所を考えると、おろらく夜7時8時に来る人っていうのは、大変な思いをして来ると思うんですよね、前後の状況を考えると。這う這うの体で。だから怒れないと思うんですよ。
ただ、それで良しとはしないです。つぎの朝出発するときは、わかってるよね?と諭してあげるべきだし。
で、私もずーっとそんな気持ちでいられるかわからないですけどね。(会場 笑)
基本的に、かなり言うほうなので。一度言い出したら、なにも言わずに首を絞めてることも。(会場 笑)
富士山太子館・井上:いま怒る怒らないでトークしてますけど、皆さんご存知のとおり、富士山には非常に、色々な方たちが訪れてくるわけでして、一般的にいう山小屋さんたちが怒るレベルで考えてたら、もぅ~24hずーっと沸騰しっぱなし!(会場 笑)
数年前に、あるテレビ局から、芸能人が騎馬戦で五合目から山頂目まで行くという企画があがって、もぅ~ふざけんじゃねーよ!!って。それこそ富士見平小屋の相川さんじゃないけど、真似する人がでるんですね。
テレビですると、ノリのいい若者が、おし騎馬戦で富士山のぼろーぜ!!みたいな。
個人の趣向は大事だけど、全体として山小屋の人たちは、安易にそういった怪我人をうむようなことはしないように考えるべきかなと思ってます。
例えば、大谷さんがギョサンで、俺どこでも行ってるんだよスゲーだろ、ってネットでどこでも書いてたら、おかしな人だなって僕は思うだろうし、かといって、自分の考えでやってるってことを聞けば、そこも分かります。
ただ、なんだギョサンで行けるんだ!?って思って真似してやってしまう人がいることは、考えてほしいかなと。
ゆ:そこなんですよね、難しいのは!(笑)
わたしも、過去に波紋を呼んだ登山もそうだし、さきほど言ったショートスキーで冬山登山とか試してやってるんですけど、スキーそのものは世間的に馴染みはあっても、また違って。スピードの世界なんでけっこう危ないんですよ。小さなギャップを拾うので、大ゴケしたらそれこそ大ケガするんですね。
私は、どんどん写真も動画も発信しますので、ある一件以降、一時期、危ないから安易に真似しないで、と言ってました。
ただ、なんか偉そうだなとか、受け手の皆さん賢いから書くだけ野暮みたいな気持ちにもなるんです。ただ、数パーセントの勘違いの人が、安易に真似することはなくはないので、そこのサジ加減がね。
そういう意味でどうですか? ネットなんかの影響力って。
金峰山小屋・吉木:話は戻りますけど、山小屋が登山者に対して怒るとか、なんか上から目線であまり好きじゃないんです。
ぼくは、19歳のときプータローしてまして、そんなとき甲武信小屋にバイトに入ってたんです。
もともと、遊びというか自由だからこうやって山に入りたいというのがあって…。
もちろん自由だから色んなことやりたいわけですよ。ただ、自由といったってルールとか規制とかあるんで、最低限守ることはあるんですけど、それに則っていれば、なんで人に怒られなければいけないんだろう?って思うんですよ、遊んでてね。
守らなきゃいけないことはあるけど、街にいたら色々規制があるんで、山に来てまで、僕は色々と言われたくないなと思うんですよね。
まあ、山小屋の立地によっては来る人も偏ったりすると思うんですけど、たまたま僕のところはそんな変な人がこないので、あまり怒ることはないんですけどね。
うーーーん…。
なんかもっと自由に色んなことをやってもらいたいなぁとか、やりたいなぁと思うんですよね。
ゆうじんさんじゃないけど、西穂とかジャンダルム1DAYとか、いいなと思いますよ、自由で。
そういうの僕も思い立ったらやってますしね。登山届だして。それでスケジュール甘いとかちょっと違うと思うしね。
ゆ:見た目もありますしね? アイツ軽そうだなとか。(会場 笑)
(後篇につづく)
YAMANOVAとは?
本メディア、ドキュウ!の運営母体。
もともと”山のある暮らしをカルチャーに”をコンセプトに今回のようなトークイベントをしてこうぜ!という比較的安易な?!発送でスタートした突発的自由奔放遊び暮しネイチャーライフユニット。山のある暮らしの共同体を目指している。