YAMANOVA VOL.0 〜山楽体験を語る宴〜イベントレポート後篇

山のある暮らしをカルチャーに!

昨年開催したYAMANOVA(ヤマノヴァ)のキックオフトークイベントVOL.0の模様を書き起こすシリーズ後篇です。

 

田中ゆうじんと、ドキュウ!発行人でもある山本との移住トークからトレイルランナーの奥宮俊祐さんのトランスアルパインランのレース裏話へ。

 

さあ、はじまりはじまり。


 

【Forum2】    山のある暮らし1 “山岳フィールドに移住するということ” 田中 ゆうじん&山本 喜昭

(春夏秋冬、北アルプスで登山をするゆうじんの映像を紹介)

 

田中 ゆうじん(以下、ゆ):まあこんな感じで、自分が面白いと思う登山を考えてやってます。

 

山本 喜昭(以下、山):彼は、自分大好きなんで、いまも動画チャンネル作って公開をしているんですよね(笑)

 

ゆ:2011年から、Mt-channel、通称やまちゃんという山岳WEB番組を4年ほどやってきまして、いまはこうやって自由に一人でやることが多いですけどね。

 

山:ケンカしたんですか?(笑)

 

ゆ:バンドやグループと同じで、いっしょにいれば色々あります(笑)

 

山:ところで、いつ頃松本へ移住したんですか?

 

ゆ:2008年の3月ですね。それまで燻してたものが爆発したのが前年の8月だったですか(笑)

9月にはもう決定してマンションも売りに出してと。家族は奥さんと子供2人ですね。

 

山:ちなみに、この会場に今後移住とか二拠点生活とか考えている方いらっしゃいます?

(シーン…)

いないですね、そろそろ奥宮さんのフォーラム3にいったほうが良さそうですかね(笑)

 

ゆ:予想どおりだ(笑) えーと、私にとっては移住というものは別にどうでもいいことなので、きょうは冒頭のご挨拶でも言ったのですけど、山だけじゃなくそれぞれのスタイルを認め合うことを、お話したいですね。

それで、きょうは会場に私の恩師ともいえる、某山岳スキーメーカーの国内での普及に際してのパイオニアであります、Aさんに来ていただいています。じつは、私もレース含めてこんなことずーっとやってきたものですから、あるときAさんに、「ゆうじん、なかなか面白そうなことしてるから、もうちょっと頑張る?応援するから」と言ってもらいましてね!

Aさんどうですか? それぞれのスタイルということに関してですけど。

 

参加者Aさん:そうですね。日本では例えば雑誌でこうやらなきゃいけないとか、こう滑るべきとか、アウトドアの先進国である欧米のスタイルとはそういった意味では違うのですね。そこのところを自由に、どうやって滑ったら楽しいとか、どう登ったらいいかだと思います。で、当初はまったく業界で受け入れてもらえなかった山岳SKIの世界で徹底的に軽量化にこだわったギアを、国内で普及させてきました。軽く速く登山するSKIの世界です。

ただ、自由ってとてもむずかしくて、場合によってはマニュアルに則ってやるほうが便利で楽しいときもありますよね。だけど、自由にやる者同士が認め合うようになるといいなぁと。

 

山:なるほどですね。そのへんに関してはどうですか、Bさん? 彼は、アウトドアフィットネス関係でインストラクターをしてまして、教える立場なんです。自由についてどうです?

 

参加者Bさん:自由…。はい、私はこれが正しいですよ、という教える立場でもあるのでむずかしいところはあるんですけど、おおきな意味で運動は自由にしたほうがいいなと思ってて。いま世界遺産ランナーという活動をしてて、普段運動なんかしないようなところに運動を持ち込むんですね。なので、マニュアルというよりも、自由な発想で “ここでも運動しちゃおうよ” みたいな感じは、運動がひろがる可能性がありますしいいですよね。

 

山:彼は、”世界遺産ランナー”として、国内外で1,000を超える世界遺産を走りながら学ぼうとしてるんですよ。なかなか面白いですよね。どうです?

 

ゆ:面白いですね~!

いま自由って言葉がでてきましたが、よく私思うんですよ、自由ってじつはとても不自由なんだと(笑)

いつも例にだすんですけど、例えば、ここにいびつな形をした線も引いてない広い駐車場があって、どこでもクルマ止めていいよって言われたらちょっと困りますよね?

線引いてくれ、自由過ぎるって(笑)

私たちもいまゼロから色々と活動をスタートしているつもりですが、駐車場の話でいうと、じつは現実世界では線はもう何本も引いてあるので、ゼロからなんてあんまりないんです。ただ、この線に倣いなさいとか、選択肢はこのいくつかの線のなかからなんて考える必要、実はまったくどうでもよくて、じゃあ新しく線を引いていこうぜ!みたいなことがあっていいわけじゃないですか。

世界はこんなに広いのに、限られたエリアや選択肢のなかで生きるなんてもったいない!

 

山:うんわかります。皆さん彼はこのSKI動画にあるように、北アで日帰り槍ヶ岳やったりしてます。

 

ゆ:私も、こんなハット被ってSKIやったり、日帰り槍ヶ岳(北鎌尾根他)とかやれば、やっぱ怒られることもあるしネットでも批判されたりもしましたよ。ただ、言いたいのは、自分のなかでは順をおってやってきたしリスク分散はしっかりしてます。山を走るから軽い装備といったって、その分普段トレーニングして、身体には、じつは見えない装備がしっかりとあるということなんですよね。

 

山:見えない装備!なるほどね。見た目じゃわからないですもんね。えっと、移住の話にはまったくならないのですが…。

(会場(笑))

きょうは質問したいこといくつか用意してきたんですが、移住するにあたって皆さん悩むことは、住まい・仕事・コミュニティだと思うんですけど、私も移住予定の身として仕事はとくに悩みどころですよね。勤めてる人は仕事辞めないといけないですし。ぶっちゃけ仕事は何してるんですか?

 

ゆ:中古車の検査士という珍しい仕事を、企業から受託されて個人事業で20年やってます。移住するときはそれすらすべてリセットの旨を伝えて一から覚悟したんですが、山梨でやりませんか?と言われましてね(笑) で、いまは週2だけ山梨行って仕事してます。

 

山:え、仕事は週2だけしかしてないんですか?!

 

ゆ:そうです(笑) ただ、さきほど言ったWEB-TVとか自分流登山とかは、言ってみれば仕事同然に力を入れてきたので、振り返ればこれもそうですが、”見えない信用という財産”が出来ていたのは思いもしなかったですよね。なるほど、こういうことかと。そういったことが、美ヶ原トレイルランといったイベントでの責任者をやらせていただくこととかにも繋がっていったという。

 

山:なるほど、おカネじゃない部分での対価みたいなものが大きいということですか。

 

ゆ:あと、奥さんも “いらっしゃい” ますんで。

(会場(笑))

 

山:奥さんは移住について反対されなかったんですか?

 

ゆ:山口出身の方で東京大好きでしたから、移住する理由なんてまったくなかったですよ。

子供たちも上の娘が小1だったので無邪気だからワーイ!みたいな感じで。ただ、わたしは瀟洒なマンションに何不自由ない人間関係と豊かな収入に土日は休み、という一見満たされた生活に辟易してたんですよね。だから、プレゼンを奥さんによくしてました。

 

山:なるほど、それでターニングポイントを迎えたわけですね。実際、移住後もいろいろと大変なことはなかったですか?

 

ゆ:もちろん移住後からが大変ですよ。リーマンショックがその年のたしか9月にあったと思うんですが、他人事じゃなかったですよ。幾ばくかの資金を市場にだして堅く投資してたんですが、ほぼ吹っ飛びまして。あれだけでも家賃5年分はあったんじゃないのって(笑) 再び、決断を余儀なくされるわけです。

それで出した決断が、すべて自分の活動に投資しようと。またしても大きなターニングポイントでした。

 

山:会場にも、山の活動ふくめて、プロの方もいらっしゃいますし、そもそも趣味と仕事とのバランスって重要だと思うんですけど、ちょっとどなたかにお話をうかがってみようかと。あ、このゆうじんさんのバランスは参考になりませんが(笑)

Cさんいかがですか?

 

参加者Cさん:はい、奥さんを説得したということですけど、私も趣味で登山してても家族からブレーキがかかることもあるんですけど、そういうところ聞いてみたいです。

 

ゆ:2007年の9月に決断したんですけど、その前から私のなかでは折に触れて生活を変えたいと言ってたんですね。奥さんも私のつまらなさそうな日常をみてきただろうし。愚痴も多かったです。むずかしかったのが、実際に移住するにあたって、北アルプスに登りたいとか、畑をやりたいとか、子供たちを自然のおおい土地で育てたいとか、小さな目的はたくさんあるんですけど、決定打がないんですよ自分の中で。それが一番悩みました。移住前も後も。

えっと、質問にまったく答えてないですね(笑)

 

参加者Cさん:そんなこともふくめてお聞きしたいので大丈夫です(笑) ところで、奥さんはあなたばかり好きなことやって!とはならないんですか?とても気になります。

 

ゆ:そこ大事なところですね~。たまたまでしょうけど、うちの奥さんは趣味があまりなかった方で、一番の関心事は子育てという感じはしますね。それも活き活きとやってます。で、家族全体の生活というか方向性については、私が主に青写真を描いてプレゼンしましたよね。こんなワクワクする感じでとか、こんな生活をしたいと思わない?とか。それが奏功したのかなと(笑)

当時けっこう実感したことがあって、それは具体的な目的がないと移住しちゃいけないの?って。家探しのときに、移住の諸先輩がたにお会いする機会があったのですけど、”なんとなく”という自分の気持ちを言うと、絶対にうまくいきませんよ、と言われました。でも、自分のなかではそんな移住や生き方があってもいいじゃない?という、変な自信がありましたので、よし、目的や具体性がなくても、ワクワクや心の声に従って楽しく生きよう、そして自分がモデルになればいいと思ってました。

 

参加者Cさん:移住してみてデメリットみたいなことはありますか?

 

ゆ:具体的なことは特にないですけど、子供、とくに上の長女が学校になじめてないのを見たりしてて、自分で言ってることとは裏腹に、この移住の大義名分をずーっと探してました。また話がそれてしまうんですけどいいですか?

(会場(笑))

冒頭の映像にありましたが、北アルプス常念岳は私にとって特別な山なんです。移住した2008年の8月に満を持して単独でいきなり登ったんですね。テント背負って一泊で。とてもキツクて…。でも、街から見えるあの三角形の山の頂に立ったとき、そんな移住の大義名分みたいなものが見えるんじゃないか?と一方で藁をもすがる気持ちで登ったんですね。山頂ではまったく何も見えなかったんだけど(笑)

ただ、無心で下山して当然日常に戻るんですけど、とても心地良かったんです。そのときですね、もう理由なんていちいち探すのは止めようって。翌年ですか、この登山については、岳人さんという山岳雑誌の寄稿文に見開きで掲載していただきましたよ。で、この常念岳の一か月後には燕岳一人で日帰りで登ったりと、山のある暮らしがスタートしてましたね。

 

山:なんというか自分探ししてたんですね~。

 

ゆ:移住してもなお(笑)

それからは、いきなり山岳スキーレースに出たり、フルマラソンやったりとか、文字通り思ったことを考えずにやっていくうちに、周囲に自分よりも経験のある山の方たちが面白がって集まってきてくれたんですよ。思うに、登山してるときって自分が息せき切ってる音とか、いわゆるキツさしか感じないことが多いんですけど、それって無になれることでもあるんですよね。ともすれば、雑念だらけの日常じゃないですか?山にいくことでその都度ニュートラルになれるってことに、日を追って気づいていくんですね。それは、ひいては“今に生きる”にも繋がるんです。以降、迷いがなくなりましたよね。

考えずに一歩だすことで、向こう側から思いもよらない事象がこちらに勝手にやってくるんです。自然と様々なことが動きだしていきましたよ。ちょっと長くなりましたけど。(笑)

 

山:山で独自のスタイルを持つことと、いまの移住に関しても独特というか共通項がありますよね。

 

大谷拓哉(以下、大):この人は、とりあえず動くんですよ。それがいいんじゃないかと思います。

 

ゆ:このギョサンの大谷さんには、走りはじめて半年後にチャレンジしたフルマラソンで出会ったんです。その後、家から常念岳(登山口までの往復だけで50㎞)を私が一人でやって発信したら、「こんど、家から一緒に諏訪湖までウナギ食べに走っていかない?」と。

(会場(笑))

正味35㎞。塩尻峠越えて、諏訪湖着いて風呂入って、ビール飲んでウナギ食べて、で…

最後は電車で帰ると。(会場(笑))

 

山:自由ですね(笑)

 

ゆ:はい。そして友だちになりました(笑)

善光寺街道膝栗毛なんてネーミングつけて、走ったこともあったけど、途中で電車に乗って引き返して、帰ってビール飲んだり(笑) とにかく、この大谷さんに会わなければ今の自分はないですよね。

 

山:またしても転機ですね。

 

ゆ:はい、転機は毎日大小ありますね。あの2011年の大震災もその一つで、じつは長野県の栄村も大地震があって。私は時間あるのでとにかくボランティアで行こうと準備してたら、大谷さんも同日に行く予定だったみたいで。それなら、一緒に行こうよということになりました。東屋にテント張りつつ、大谷さんのバンのなかでビール飲んでましてね。

あの大震災は、被災者ではない大多数の日本人にも当然大きなダメージを与えたといわれてますが、私たちもこれから何をどうアクション起こそうか…って考えてました。それが、WEB-TVにつながってその秋にスタートするんですけどね。

 

山:なるほど。

 

ゆ:はい、私がせいぜい皆さんにお伝えできることはこの程度ですけど、今後もさらに自分流の登山みたいなものはやっていきますよ。また怒られることもあるかもしれないけど、まだまだぜんっぜん足りないですよ!

もちろん、世の中にはもっともっと凄い方たちがいらっしゃるし、私なんかまだまだ中途半端の部類かもしれないですけどね。でも、俺もやってみようかな、なんて言ってくれる方たちもいらっしゃいますし、こうやってちょっとでもなにかしら影響が生まれるっていいと思ってますよ。

 

山:ですね。皆さん、こうやってゆうじんや大谷さんみたく自分のスタイルを色濃くだしてやってる方たちがいるんですが、YAMANOVAはそれをやろう!ということではないんですね。ただ、それぞれのスタイルがあっていいじゃないか、ということでお互いに認め合うためにも、話し合っていけたらと思い、スタートしたんです。

 

ゆ:Aさんはもちろんご存じですが、白馬HAPPOバーティカルというSKIレースを2人で新宿西口で飲んでるときに発案しましてね(笑) スキー場の経営も色々大変だし、山スキーをBCエリアというリスクの高いところでやりたくないスキーヤーのためにも、ヨーロッパのようにスキー場を登れるようにする運動も起こしているんですが、ようやく風穴が開いてきたかなと。

 

参加者Aさん:ヨーロッパなんかだと、朝一でスキー場を自分で登って、一本滑って仕事にいくなんていうこともありますし、それぞれのスタイルが融合してて、なおかつしっかりとスキー場におカネが落ちる風潮もあるようなので、そうなるといいですよね。

 

ゆ:そうですね、そうやってそれぞれのスタイルを認め合って、地道にやっていくことで、なんと公然と登れるスキー場がでてきたんです!それって文字通り山が動いたことで、画期的なことなんです。いままでは、一言いってコソコソ登ってましたから(笑) やればできることもあるんだなぁと実感した一事例でございます。

 

大:ここでちょっと山の安全面ということで、さきほど言いそびれたことがありますのでご紹介します!

(レスキュー費用保険・やまきふ共済会の各々の代表から、YAMANOVAへの協賛主旨と保険のご説明)

 

ゆ:ちなみに私も遭難保険はちゃんと入ってます。レスキュー保険さんに(笑)

 

山:YAMANOVAは今日0回目ということで、皆さんにお越しいただきましたが、ゆくゆくは車座になって皆さんのリクエストや、またはストーリーをざっくばらんに披露し合いつつ、手探りではありますが、そんな場になっていければと思ってます。

 

(Forum2おわり)


 

◎山本 喜昭:

「生きるチカラ探究マガジン”ドキュウ!”プロデューサー」であり、その他様々なイベントや仕事を仕掛けるプロデュースを柱に活躍中。このYAMA NOVA(山の場、山の新しい潮流などの意)のコンセプトやネーミングの発案も手掛ける。近い将来、長野県に移住予定。

 

◎田中ゆうじん:

考えずにとにかく行動!を旨に、移住から山岳WEB-TV、地元ラジオパーソナリティ、動画チャンネル、オリジナル登山など、自由な発想でノー天気に活動中。

 

 


【Forum3】”トランスアルパインランを終えて”  奥宮 俊祐&田中ゆうじん

 

田中 ゆうじん(以下、ゆ):お待たせしました。プロトレイルランナーであり、レースプロデューサーでもあります、奥宮俊祐さんです。私との関係は、こちらから電話しても出ないくせに、用事があるときは執拗に電話をしてくる、そんな関係です。

(会場(笑))

さきほども、繰り返し電話してきたけど、なにやら大変だったようですね?

 

奥宮 俊祐(以下、奥):はい、事務所がプールのように水浸しになって、ギリギリまでもう大変だったんです。

先週は、ようやく自分がプロデューサーをつとめるFTRというレースイベントが終わったばかりだというのに。で、そんな忙しいなか、このゆうじんからイベントにも呼ばれて(笑)

 

ゆ:この奥宮くんと私が会う前は、何かがいつもありますね~。以前も、お互いに奥さん抜きで子供連れて戸隠にスキーに行ったんです。すると待ち合わせの数時間まえに電話がかかってきて、「…事故っちゃった~」と(笑)

 

奥:スタッドレスタイヤに履き替えて高速道路走ってたら、こともあろうにバーストして(笑) ありえないですよ、そんな心配があったのでそもそも履き替えたのに。そのときもこのゆうじんに呼ばれて(笑)

 

ゆ:いいえ、私が呼ばれたんですよ!(笑)

はい、こんな奥宮選手なんですけど、昨年、悲願だった日本山岳耐久レース、ハセツネで優勝したんですね。おめでとうございました。

(会場、拍手)

もちろん、海外レースにも精力的に取り組んでまして、このトランスアルパインというペアで247㎞を7日間かけて走るレースもそうだし、ほかになんか目ぼしいレースでいうとなんですか?

 

奥:アイガートレイルもそうですね。いま優先エントリー権付きで募集してます。もうすぐ一杯になってしまうのでよろしければ皆さん一緒に行きましょう。

 

ゆ:2017年の7月にスイスで開催ですよね。よろしければ、このおっくんと一緒に走ってみてはいかがですか? いっしょには走れないですけど(笑)

 

奥:そうですね(笑) ただ、事前のツアーやレース後のハイキングなど盛りだくさんでありますので、ぜひ!

 

ゆ:私も海外のレースの楽しみ方として感じたことは、綿密な登山や旅のプランを考えなくても、基本はマーキングに従ってすすめばある意味自分の足で旅や観光ができてしまうんですね。もちろん国内もそうだし、あと呑気にいくほど安易なレースじゃないことのほうが多いですけど、そんな楽しみかたもありますよね。

 

奥:そうですね。日本アルプスももちろん負けてないですけど、あちらのアルプスの壮大な景色を眺めながら走ることはとても気持ちよいですね。日本では見られないようなでっかい氷河なんかありますし。

 

ゆ:この奥宮選手なんですけど、こんな王子みたいなルックスで爽やかですよね。ただ、私どものやってきたWEB-TVなんかでよく動画撮らせてもらってたんですけど、たまに愚痴ったりしてるとこ、ブラック奥宮といってそんなところも公開してきたんですけど、あれはあれでどうでした?嬉しかった?(笑)

 

奥:もちろんです。はい(笑)

 

ゆ:で、そんなおっくんなんですけど、すごいなと思うことは、レースの頻度が目茶苦茶おおいですよね?もちろんプロなので、出なきゃいけないレースも多いのでしょうけど。尊敬してますよ、一応ね(笑)

 

奥:最近はちょっと減ってきましたけど、それでも月二くらい出てますかね。本命とかいろいろありますけど、レースはとても良いトレーニングにもなりますので。

 

ゆ:ところで、きょうのテーマでもありますこのトランスアルパインランですが、興味ある方どのくらいいらっしゃいますか?

(会場の半数くらいが挙手)

おお、さすがに皆さん興味ありますね!

 

奥:日本ではまったく知られてないと思うんですけど、じつは以前からパートナーである山田琢也と話はしていたんです。ただ、タイミング的に、お互い子供が小さかったり、このレース出ると秋のハセツネに間違いなく悪影響がでるので…。 そんなときに、NHK-BSで企画が持ち上がり打診を受けたんですね。昨年ハセツネも優勝できたことだし、ようやく機が熟したということです。

 

ゆ:なるほどですね。

 

奥:大学卒業したときに男2人でタイ旅行に行ったんですけど、それが人生で一番楽しかった海外で、それを超えましたね!今回のこのレースは。

 

ゆ:タイはレースではないですけどね(笑) ご興味ある方、なんでも聞いちゃってください!

そこの女性お2人なんて、ペアレースだからちょうどいいんじゃないですか?

 

参加者Aさん:壮大すぎて想像がつかないんですけど。仮眠とかシャワーとかどうなってるのかなと。

 

奥:7日間のステージレースなので、毎日コースが決まってるんですね。町から山を越えて町へ下りてホテルに宿泊するんです。一日大体30㎞くらいですね。

 

参加者Aさん:いいところで寝れるんですね(笑)

 

ゆ:デラックスですね~(笑)

 

奥:そうですね。ただ、今回エントリーが遅かったので、リーズナブルなホテルの予約がとれず、豪華なホテルばかりだったんですね。自分のおカネだったら絶対泊まらないような。

(会場(笑))

流れとしては、昼過ぎにゴールしてランチ、ホテルに行ってケアをしていただき、そして食事をして寝る、という感じなので、まったくサウナやプールなどのホテル施設やリゾートは満喫できないわけです(笑)

 

参加者Aさん:寝袋に寝ると思ってたので意外でした(笑)

 

奥:7日間のステージレースですが、準備ふくめると10日間くらいあって、なおかつUTMB後だったので、ほとんど家に帰ってなくて(笑) アイガーふくめるともっと。

 

ゆ:なるほど。話は変わりますけど、長い間行われるこんなステージレースですけど、山もなにもずっと一緒にいると色々あるじゃないですか。そこのとこどうでした?

 

奥:パートナーの山田琢也とは様々な経験をともにしてるので、ちょっと調子が変だぞ、なんて思ってもお互いに大体わかるので、そういう意味では喧嘩もなくまったく問題なかったですね。

 

ゆ:2週間だったらわかんないですよ!

(会場(笑))

えっと、こういうペアレースっておそらく調子が良い悪いとかリズムがあると思うんですけど、足並みとか。

 

奥:ありますね。基本的に私が前で琢也さんを引っ張るというスタイルなんですね。それで今回は、NHKの取材陣の方たちから、レース前中後で別々にインタビューを受けるんです。私は勝負レースとしてUTMBを途中リタイアしたりと、このレースに賭けてきたスタンス。琢也さんは、楽しみつつ結果も出していくスタンスなので、周囲も自分たちもそのことには気づいてたので、そういった意味での温度差はつねにありましたよね。

とにかく私は勝ちたい勝ちたいと(笑)

 

ゆ:そういう人間関係の綾みたいなものが、また面白いですよね。成長の場でもあるわけじゃないですか。

 

奥:はい。琢也さんはリードする私に、迷惑はかけたくない、という思いがあることはヒシヒシと伝わってきましたよ。もちろん彼は現役のトップアスリートなので、私との差がついて待ってたりすると屈辱的だと思うので、かなり食らいついてきてくれました。そんな細かいところをうまくこなしていくことも、ペアレースの味わいかもしれませんね!

 

ゆ:なるほど。ところで、さきほど当レースに興味あるといわれていたBさん!いかがです?

 

参加者Bさん:自分はなんちゃってトレイルランナーなので、食い入るように聞いてます(笑) 知り合いが先日アイガーに出ててとにかく景色が良かったと言ってましたが、トランスアルパインの景色はどうです?

 

奥:もちろん山に上がるたびに素晴らしい景色はありますよね。ただ、とても印象深かったのは、たしか4日目のコースは、ガレたりとてもトレイルと呼べるようなコースじゃないところを走ったり、急な沢筋の道で、一歩間違ったら谷底に一気に落ちてしまうような危険箇所も普通にコースなんです。コースディレクターの人、よくこんなところ通したものだと感心しましたよね。

 

ゆ:うん、私も某レースでコース作ってるんですけど、基本的にそこでは既存の登山道や林道を使用してますが、そこにおける日本の空気感ってとても過保護だなと思います。山本さんともよく話すんですけど、日本には注意看板や、あれはダメこれはダメってのが多い。それは教育の話にも繋がるんですけど、本来は自分で考えて判断し、ある種のサバイバルをしていかないと危険なことに対しての意識は希薄なままですよね。だから逆に、そんな危険なところを通るレースに限って事故が少なかったり。そこはどうですか?

 

奥:そうです。このレースの事故の報告は聞いてないんですよ。

これは、レース中のエピソードなんですけど、とても危険だけど景色が素晴らしいポイントで琢也さんと話してたんです。「ここで写真撮ってもらえたら最高にいいのに、さすがにいるわけないか~」と。

そうしたら、いるんですよ!(笑) 日本のアドヴェンチャーレーサーの方が取材に同行してたのですが、カメラ担いで(笑) 定かではないけど、その映像はこんどBSでやる予定です。

 

参加者Bさん:そのときのモントレイルはなに履いてたんですか?(笑)

 

奥:あはは、そのときはですね、“フリューイッドF.K.T”です。2足を交互に。

 

参加者Cさん:最近は、ソールが厚くクッション性の良いHOKKAみたいなシューズを使用する人が増えてきましたけど、モントレイルもそういう方向も視野に入れてるとか、また、奥宮さんの場合は、なにか使い分けている目安とかありますか?

 

奥:履き心地重視ですね! さきほども言いましたけど、走るフォームを変えてからは、故障もなくなりましたので特これといった目安はないんですね。あとは、スピードとロング系と分けて、そのときにベストはどちら?とチョイスはしてます。

あ、そうそう、えっと、ここでせっかくなのでトランスアルパインランのレースの写真をご紹介します。

ちなみに、スタートの街は、ドイツのガルビッシュ…なんとかという(笑)

で、この写真の山が、なんとかなんとか、えーと…

 

ゆ:まったくダメじゃん(笑)

(会場(笑))

皆さん、おっくん(奥宮)は、このような写真を50枚くらい一方的に送ってきて、「いいの選んでね、それじゃ!」って。そんな男ですよ。

(会場(笑))

 

奥:ごめんなさい(笑) この山、じつはロープウェイであがれるんですよ。私たちはレースまでは毎朝このロードを走って足慣らししてました。

 

大:写真のあの小屋は人が住んでるのですか?

 

奥:牛舎みたいなものだと思います。このとき泊まっていたホテルの部屋のカギの仕組みがどうも難しくて、ロックするたびに大変でした。朝になるとお隣の部屋の人も、「がちゃがちゃがちゃ!」と、みんな苦労してるんだなと(笑)

 

(会場(笑))

これは物議をかもしだす一枚です!のちほどお話しします(笑)

 

男3人での旅で、日本からお米をもちこんで現地で安いジャーを買ってカレー作って食べてました。ただ三日目くらいに飽きてしまって、腐らせたんです。旅のお供にシェフを1人ですね!(笑)こうして、たくさんの種類のあるパン屋さんで美味しいパンを買ってました。

琢也さんは、ドイツ語を喋るので。

 

ゆ:琢也さんは、もともとはクロスカントリーやってましたよね?

 

奥:そうです。スキーアーチェリーではドイツでプロ生活を3年ほどしてたので、ドイツ語をちょっと喋るんですね。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

これは、コースのマーキングなんですね。ゆうじんは美ヶ原でコース作ってるからわかると思うけど、ステージレースなので、スタート&ゴールやこういったマーキング準備というものが、毎日変わるわけですよ。わかりますよね?

 

ゆ:おっくんと数年前に北海道の大雪ウルトラトレイル(国内ではまだ珍しかった二つのステージレース)に仕事兼ねて一緒に行ったけど、あれが毎日あるんだ?!

 

奥:しかも、参加選手が総勢1,000人くらいいて、ゴールすると毎晩パスタパーティーでしょ。毎日毎日やるってすごいことですよ。

基本はこうやって私が先頭を走るスタイルですね。琢也さん、とちゅう足を痛めましてね。

琢也さんが言った印象的な言葉があるんですけど、

「たしかに景色もなにも素晴らしかったのだけど、レース中で一番見てて印象深いものは、おっくんのケツかな」と。

(会場(笑))

なるほどと(笑)

笑ってるけど、半べそ気味でスタートラインに立ったときもあります。

レースは、基本はわたしが登りを引っ張っていき、下りは得意な琢也さんに引っ張ってもらうというスタイルです。たしか6日目だったかな、琢也さんの両足の皮がペロンとむけてしまい。

「もうダメかも…」

なんて言いつつも、二人でなんとかがんばろーぜ!とスタートした日もありました。

ヘリ撮影が3回ほどありましたね!

しかも、岩稜のすぐそばまで飛んできて、その迫力というか文化の違いというか…。

すごいーなと思いましたよ。

 

ゆ:わたしも某メーカーさんへの提案で、スイスに取材クルー&選手として行ったことがあるんですけど、  むこうはわりと簡単にヘリを出してくれるんですよね! あすは、ヘリ飛ばすから未明から乗り込んで撮りにいくけどどうだ? みたいなね!

「ソーリー、あすから走るのでまた今度!」なんて言って遠慮したけど(笑)

慣れない各国取材陣との2日間で、レースにでるほうがまだマシだなんて逃げるように(笑)

ヨーロッパはそういった意味でも先進国ですね。

 

奥:そうそう! 毎日ゴールを迎えるステージレースなんだけど、最後は大体公園のようなところがゴール会場になってるんです。そこに川なんかあったりすると皆アイシングしてますよね。

そして、ビールなんかゴクゴク飲んでる光景があたりまえなんだけど、あるとき私たちもビール少しくくらい飲んじゃおうか? なんて言って琢也さんと飲んだんです。

酔っぱらってきたねぇ~なんて言ってたら、周囲の選手が近寄ってきて、ノンアルコールビール美味しい?なんて(笑)

(会場(笑))

 

ゆ:でもさ、海外なんかのレースだと、平気でワインとかビールとかエイドで飲みながら走ってる選手が多いなんて聞くよね。おそらく、肝臓のアルコールを分解する機能が日本人とはレベルが違うんだと思う(笑) 私もビール大好きなので、ある日北アルプスで走ってて、よしこれから1,000m登り返すぞ!なんていうときに調子にのってビール飲んだら、汗が噴き出して脱水気味になり、仲間から遅れて散々だったことも(笑)

 

奥:うん、むこうはビールとかワインのほうが水よりリーズナブルだったりしますからね。

アルコール2%くらいのビールを2人で分けあってよく飲みました。

翌日への影響ですか? そのぐらいならほとんど問題なかったですね。

7日目を終えてようやくゴールするんですけど、2人でどうやってゴールしようか? なんて考えてて結局はゴール後に大の字になって! 琢也さんの出し切った感伝わりますか?

ゴール後にスタッフの方にビール渡していただいて、飲んだんですけどそれは本物でしたね!

ところで、琢也さんの履いてたシューズは、長距離むけということでわざわざ提供元がワンサイズ大きいものを準備してくれたんですけど、それが中で泳いでしまってマメができてしまったんですね。

よりによって~こんなときに?! なんて感じでしたが(笑)

レース翌日は、嫌がる琢也さんをレンタカーに無理矢理乗っけて、ゴンドラで山のうえに上がったんですけど、そこからカートがあったんで2人して乗ったんですね。で、普通山のうえから下までだとまあ、大体4-5㎞くらいかな?なんて思って安易に乗ったら、10㎞もあって! いい加減飽きましたけど(笑)

レース後に、イタリアからドイツに移動する便の搭乗時刻を間違えて、エアーチケット買いなおしたりと、まあ最後までトラブルつづきではあったんですけど、最後ドイツのホテルに泊まったときですか、あいにく2人でダブルベッドという部屋しかとれず、仕方なく琢也さんと。

そしたらですね、やけに琢也さんが警戒してるんですよ(笑) え~? て私も思うんじゃないですか。

そんな過剰に反応してくるんで。おかしいなぁ~と思って話をしてたら、なんと私が前日くらいに、Facebookのメッセンジャーで、「愛してるよ…」みたいな絵文字スタンプを間違って送ってたらしくて(笑)

(会場爆笑)

誤解はとけたからよかったですけど(笑)

 

ゆ:旅でのそういったトラブルは、後々エピソードとなってじわじわきますよね。

 

奥:はい、一番思い出深いのは、スタートして5㎞、要するにあと242㎞ある時点で(笑)

 

ゆ:はい、トランスアルパインのご報告かねたトークをありがとうございました。

時間が相当おしてきてますが、そんな奥宮選手にこの際なにかご質問とかないですか?

 

参加者Dさん:体重管理とかどのようにしてますか?

 

奥:あまり太らない体質なんですかね、意識はしたことあまりないですね。ただ、レース前とかになると甘いものは控えるとか、揚げ物は食べ過ぎないとか、飲み過ぎないなどはしますね。基本的には、奥さんがつくってくれたものを、子供たちと同じものを毎日食べてます。

 

参加者Eさん:食事する時間は毎日決まってます?

 

奥:それもいっしょで、普段どおり夕食なら6-7時くらいには食べてます。

 

ゆ:いつもはどんなトレーニングしてますか?ほとんどロード練習なんですかね?

 

奥:埼玉県で山なんてないとこに住んでるので、基本はロードです。あと、近くにジムがあるのでそこでトレッドミルはやってますよ。あとは、大会の準備とか試走があれば、山に入って走りますしね。あとは、やはりレースが良いトレーニングになりますね。

 

参加者Gさん:トレッドミルの傾斜とか聞いてもいいですか?

 

奥:最初15パーセントに設定して時速8㎞で1時間くらいですね。ラストの10分くらいは時速をちょっとあげて追い込みます。最後は平坦に戻して、4分/㎞にあげて、30秒毎に1㎞ずつあげていって、最後は、時速20㎞、3分/㎞で、3分間我慢して終えます。

これやるとけっこう大汗かくし、時速20㎞ってけっこういい音するんですよ!なので、ジムでは周囲はドン引き、浮いてます(笑)

 

参加者Hさん:広島でトレイルラン開催すると聞いてますが、どんなコースなのか教えてください!

 

奥:湾岸トレイルですね。距離113㎞で累積標高差が10,000m超えるんです。海なので標高0mから

山に登ってギザギザと縦走してまた下りるとか繰り返すので、かなり走りごたえのあるレースになると思います。今年6月に2日かけて走ったんですけど、えらいきつかったです!

開催ですか? まだ未定ですが、やるためへの一歩なので、ぜひ進めていきたいと思ってます。

ぜひ、実現したら広島へお越しください!

 

ゆ:はい、時間もだいぶおしてきたということで、そろそろよろしいでしょうか。

奥宮俊祐さんでした、ありがとうございました!

 

 

(おわり)


 

◎奥宮俊祐:

Fun Trails代表・プロトレイルランナー。2015年の日本山岳耐久レース(ハセツネ)では悲願の初優勝をし、国内外でのショートからロングディスタンスのレースに精力的に出場している。

また、みずからもレースプロデューサーとして、関東や西日本を中心にレースイベントを開催中。

http://fun-trails.com/profile/