「山のある暮らしをカルチャーに!」をスローガンに”山”に関わる様々な人たちが混じり合い、意見を交わす持続可能なコミュニティーを目指しスタートしたYAMANOVA(ヤマノヴァ)。
最初の取り組みとして、毎回異なるテーマや人たちをフィーチャーし、ゲスト、ホスト、参加者の三者が入り乱れる(笑)双方向型のトークイベントを「YAMANOVA VOL.0 〜山楽体験を語る宴」と題して2016年11月のおわりに東京は大井町のムーヴアクションさんのイベント会場をお借りしてキックオフ的に始めた次第です。
その模様を前篇・後篇に分けてドキュウ!得意?!の書き起こし垂れ流し方式でお送りします。
VOL.0のゲストはプロのトレイルランナーの奥宮俊祐さん、ホストであるYAMANOVAメンバーは、田中ゆうじん、大谷拓哉、宇梶義男、山本喜昭の4人。参加者は総勢40名ほどと熱い夜になったのでした。
では、はじまりはじまり。
田中 ゆうじん(以下、ゆ):皆さんこんばんは。きょうはご来場いただき大変ありがとうございます! ゆうじんと申します。
海のものとも山のものとも(山のものなんですけどね笑)よくわからぬこのイベントへのご参加、大変ありがとうございます。じつは私どももどんなふうになるかは、まだまだ想像つきません(笑)
イベントコンセプトについては、プロデューサーである山本さんがSNSやフライヤーなどでご紹介してると思いますが、私も春夏秋冬、北アルプスで登山してまして、もっとも言いたいことは、「それぞれのスタイルを認め合う」ことです。それは、人生も一緒だと思うんです。そんなことを山サイドから創っていければと思います。
それで、きょうは受付で皆さんにリンゴをお配りしたかと思うんですけど、こちらは私たちのささやかなお礼といいますか、信州に住む私が毎年大事な人たちに贈答する、安曇野の広瀬農園さんのリンゴです。残念ながら今年は例年よりも出来が良くなかったらしく、小ぶりで蜜の少ないものしかご用意できなかったのですが、それでも格別の美味しさだと思いますので、ぜひお試しください。
あとですね、こちらも長野県で作られているというお米、みなさんに一袋(二合)ずつお配りした思うのですけど、その作り手であるFUBICファームの八重樫さんをご紹介します。(拍手)
八重樫 聡(以下、八):はじめましてこんにちは。今回は協賛というかたちで、松本で作っているお米のほうをご提供させていただきました。FUBICという企業の一事業として、農薬と化学肥料を使わないスタイルでやってます。いわゆる安心安全な食材を提供するということにポリシーをもってますので、ぜひいますぐ食べてみてください。
(会場(笑))
ゆ:いますぐは無理ですよね!?(笑)
はい、長野県の三水と松本で作られたということですね。じつは彼、いまは長野県でこうして農業をしているんですが、もともとは東京八王子で生まれ育ち、30代で岩手で就農しまして、その後あの東日本大震災で被災し、いまは企業の方向性もあって、長野で農業しているということなんですね。もっというと、私たちは高校のときの同級生なんです(笑)
八:はい、31歳のときに岩手に移住して、10年間農業しました。最後の2年間はいまのこのFUBICの一事業の農業を任されてまして、いまにいたるわけですね。 えーと…、なにが言いたいのかわからなくなってしまいました(笑)
(会場(笑))
ゆ:じゃ、そろそろいいですか?(笑)
八:えっと、もう少しいいですか?
(会場(笑))
このようにこだわりをもって農業しているのですが、いままでは全国のFUBIC社員向けに販売していた農産物を、今後はさらに拡げていきたいと思ってます。長野に続いて次は宮崎県にも進出して、研修からスタートし、ゆくゆくはそのような安心安全の野菜も作る予定なんです。そして、宮崎も長野も、それで有名な場所にしたいなと”いま”思いつきました。
(会場(笑))
つきましては、サボりがちなブログやFacebookなどの発信をもっとしていかないと、せっかくの活動も伝わりませんので、いまこうして皆さんのまえで言わせていただきます(笑)
ゆ:昔から、そこらへんナマケ癖ありますもんね(笑) ということで、皆さまお米のほうぜひ食べていただいて気に入っていただけたらと思います!
以上、FUBICファーム代表の、八重樫さんでした! (拍手)
【Forum1】 SAFE&HEALTH “安全登山と健康維持の大放談” 大谷 拓哉&宇梶 義男
(ギョサンで北ア燕岳を走る、大谷氏の映像を紹介)
大谷拓哉(以下、大):皆さんこんばんは。いまギョサンで走っていたのは私です。そのとき履いていたのはコレです。紐で止めているわけでもなく、そのまま走ってます。ぜんぜんセイフティじゃないじゃないかと言われそうですが、自分の体が山に対応できるということを一番言いたいですね。
私はゼロランニングクラブというところのコーチをしてて、整骨院をおおく開業してらっしゃるこちらの宇梶さんのゼロスポと“ゼロ”という共通する部分があるんですね、それはまたお話ししますが。
サンダルで山に行くなんて、リスクやデメリットしかありませんよね?岩に足をぶつけたり、落石があったりするなど、危険ですよね。ただ、私は現在の一般登山者の人たちに言いたいのは、ギョサンで登山できなければ、極論言うと山に行かないほうがいいよ、なんです。
ギョサンで歩けるということは、きちっと足の裏で立って、片足でも直立することができて、もう片方の足はぶらぶらと振れるし、自由に動かすことができるということなんです。登山靴を履けば岩に多少ぶつけても痛くはないですよね。もちろんわざとぶつけるわけでもないけど、ギョサンだとさらにぶつけられないんです、痛いので。なので、ギョサンでも歩けるようにしておいたほうがいいよ!なんです。
ところで、いま走ってる映像みていただいて、宇梶さんどうですか?
宇梶 義男(以下、宇):ぼくが最初にギョサンで登山してると聞いて思ったのは、なんのために?との第一印象でした。そもそも、ギョサンをちゃんと履ける人が現代は少ないように思います。靴に慣れた子供が履いて歩けばすっぽ抜けてしまうだろうし、外反母趾の人はどうやって足を着いていいのかわからないと思います。本来人間の足の機能として、ギョサンを正しく履けるはずなのに、加齢や経験とともにその機能を無くしてしまってるということが言えると思います。
大:走るってことでいえば、蹴らないことが前提なんですけど、マンガみたく砂埃がたつような走りかたをしてると、ギョサンだと脱げてしまうんですね。
宇:(ここで、さきほどの動画を再度視聴して)これを見てるとびっくりします。砂埃が立ってないですよね。よく足裏には線香のセンサーが着いてるなんていいますが、僕たちはそのセンサーを失ってきたんだなと思いますよね。すごく熱いものが当たれば分るでしょうけど、むしろ鈍感な場所になってしまってますよね。
大:ところで、登山をする行為は体にはとても健康的でいいと思うんですが、一歩間違えると、膝を痛めたりと、そういったことになると思いますが、そこらへんはどうですか?
宇:荷重ということになるんですが、痛めるということは荷重のかかり方がおかしいんですね。それはなにかっていうと、やはり足裏のセンサーや足首ということが必ずでてきますね。そういう意味でも、痛みにくい走法で走らないとそもそもだめなわけですよね。
例えば、四十肩や五十肩っていうのは、神経が弱っていく、筋肉がなくなっていくという老化や退化する際に起こる、体の反射が痛みとなってでているんですね。痛めてるわけではないんです。足も使わなければ使わないほどに、外反母趾や巻き爪の症状となって出てくることは、もしかすると退化の症状なのかなと、最近では考えるようになってきていますね。
大:なるほど、わたしは学生時代に競歩をやってたんですが、なぜか痛めやすくて左足だけ外反母趾にも巻き爪にもなってたんですよ。でもいまはうまく体を使えているのかそういうことはないですね。
宇:機能を取り戻したんでしょうね。よく田舎の農業やってるお婆ちゃんの背中が曲がっているというのも、やはり生活環境に適応していくからなんだと思います。都会のお婆ちゃんはあまりないということは、その様に前かがみになることが少ないからなんですね。
大:どなたか、山登るうえで、膝が痛いなどなにか不調について聞きたい方います?
参加者Aさん:比較的長い距離でのトレイルランレースの後半の下りのときに膝が痛くなるんですが、先日は膝の裏が、その後歩けないくらい痛くなったんです。それは、私の脚力が足りないのか、またはフォームが悪いのかよくわからないんです。
宇:山というフラットではない特殊な形状に対してすぐ答えることはできないですけど、ぼくたちが見るのは、その下りのときの骨盤の位置や角度がどうなっているのか、また荷重がどのようい行われているかをビデオ等で確認しなければ正直わかりませんよね。ただ、ケアの仕方としてはいろいろあるんですけど、例えば太ももの裏側が痛いのであれば、お尻、または太もも全体を使えるようなトレーニングしたりして、回復させていくことは僕たちはよくしますね。やはり、使って鍛えていくことが大事ですよね。ただ正しくやらないといけませんよね。
大:やはり、ランニングクラブでも、フロントランジ(片足ずつまえに踏み込むスクワットの様なもの)とかやると、着地の瞬間に膝が内側にはいってしまう人がいますよね。そういう方はお尻の筋肉が弱かったりするのかなぁとね。あと、誤解ないように言いますが、私もサンダルで山に行けとも、走れとも思ってません。安全登山第一で、そのための体づくりをしっかりしていきましょうと言ってるんですよ(笑)
田中ゆうじん(以下、ゆ):奥宮さん、年間相当走ってると思うけど、故障とかなんかありますか?
奥宮 俊祐(以下、奥):3年前に大腿骨の疲労骨折というのを経験しました。
宇:うわぁ~それは酷いし、珍しいですね。まず聞かないですよ。
奥:ただし、そこからフォームを改造しそれからは故障知らずですね。長い距離(注:100マイル以上)を走っても問題なしです。(前に出て来てレクチャーはじめる)
例えば、以前は後ろ足で地面を蹴ってストライドを延ばす走法だったんです。すると、その足は蹴った反動で前に移動して地面に着地する際、衝撃があるのでそれで大腿骨に負担がかかったんでしょうね。
いまは、地面を蹴るんじゃなくて、股関節を使って足を前方に着きに行くという感じですね。なんという体の重心が移動していく感じですね。
ゆ:私は、10年くらいまえに山もロードも走り始めたのだけど、最初やり過ぎたのか腰を痛めましてね。2週間くらいウダウダしてたのです。それであるときふと山をおそるおそるゆっくり歩いたんです。すると、なんと治ってしまったんですよ!おそらく、フラットじゃない山の起伏に自分が体を合わせていくことが、とても体にとって自然というか、喜んだんだと感じましたね。
大:おそらく、骨盤を引き上げて一歩一歩移動するとか、太ももに負担かけないなど歩き方も良かったのでしょうね。
宇:はい、そう思いますね。山は路面が不規則なのでさきほどの足裏のセンサーの話じゃないけど、バランスをとろうとして全身がセンサーみたいになるんですね。だから治って当たり前みたいな…。
例えばダルマ落としみたいに、下が減っていって衝撃で上も崩れてくるじゃないですか?でもバランスとれてるうちは崩れないし、全体のバランスでなんとかなってるという…。
ゆ:不思議なのは、登山で歩いたり走ったりしてると、1~3万歩平気であるくんだけど、ロード走ってるのと違って一歩一歩に集中するわけじゃないですか。そんな3万歩に集中してるなんてこうやって改めて考えると気が遠くなりそうですが、苦も無く自然にやってるんですよね。
大:サンダルもまさに一緒ですね!一歩一歩集中して出していって、石があるのか、尖ってないのか、または安全なのかなど、毎回瞬時に考えながら進んでるという意味ではまったく同じですよね。
宇:うちも、明日から”サンダル治療法”というのやってみようかな。皆でギョサン履いて登山したら、患者さん皆治っちゃったりして(笑)
ところで大谷さん、ギョサンで登山しててヒモ(鼻緒)切れたりしないですか?
大:切れることは今のところないですね。ただ、100均ショップで買った、いわゆる鼻緒が抜けるタイプはダメですね。抜けるし、すぐへたって薄くなって痛くてしょうがない。あと、苦手な状況はもちろんあります。ことしは剣岳にギョサンで登ったんですけど、岩場でトラバースするときはやはり滑りやすいし、また泥だらけのところは、泥が入って滑りやすくなりますよね。あとは、砂礫の道も泥と同様で砂が入ると滑るので、しっかりと上から足を置いていくことが大事ですね。
なので、オススメはしません。
(一同笑)
宇:そもそもギョサンて、漁業サンダルだから濡れてるところに強いんですよね?
大:そうです。なので、北アルプスの常念岳の一の沢の登山道なんてのは、沢筋で濡れてるところがありますが、そういうところは非常に心地よく歩けますよ!
宇:話はずれますが、うちの患者さんの中では体の痛みと、あとは精神疾患のある患者さんが多いんですね。肩こりが酷かったり、または夜寝れなかったり。そんな人にはキャンプに行きなさいと言います。
要するに体内時計がおかしいですね。大体の人たちは陽が落ちてしばらくして寝る、陽が出てしばらくしてから起きる、ですよね。そんな生活を一度リセットしてほしいんです。キャンプと一緒に登山をして日光に当たればさらにいいのですけど、いきなり登山はむずかしいですから、キャンプ2泊お薦めしてます。
大:なるほど、やはり自然はいいですね。私は、伴走伴歩協会というものを立ち上げてるのですが、先日、視覚障害のある方たちと、それを体験したい方たちをお連れして上高地に行ったんですね。目的は目の見える方たちにも”見えない体験”といってアイマスクをしていただき盲目を体験してもらうんです。
すると、陽がでてきましたとか、暖かくなってきましたとか、木を抱きしめる人や葉の匂いを嗅ぐ人など、そんなちょっとした事が、眼を見えなくすることで感動にかわるんですね! ああ、自然というのはそんな浄化作用もあるんだと実感しましたよ。
宇:しかし、山いってる人はなんというか変な人おおいですよね(笑)
ギョサン履いて登山とか、ゆうじんとか。なんというか、解放されて自由な雰囲気を感じますよね。
さきほどから言ってる、体のセンサーというものが自然とシンクロして、素の人間の感覚に戻っていってるのを感じますよね。
参加者Bさん:高山病について質問していいですか?
大:はい、標高の高い山なんかに行きますと、平地にくらべて酸素も薄いし、天候その他と様々なリスクがありますよね。そんな危険と表裏一体の場所をときに素早く移動できるということはとてもリスク回避になると言う方もいますよ。そういう意味では、そんなところで体を動かせるトレーニングを日頃からすることは、自然を楽しむうえでも大事ですよね。
宇:山小屋というものは、ある意味標高に適応させるためのものでもあるんですか? ここで一度休んでおくと、つぎの山小屋まで効率よく行けるみたいな。
大:日本の山でいえば富士山なんか別の意味でそうかもしれませんね。五合目から山頂までありますからね。以前、キナバルで登山したんですが、4,000mあるので3,000m越えたあたりで山小屋ありましたから、そんな意味ももちろんあるんでしょうね。
宇:先日チベット行ったんですが、空港が3,000mのところにあるんです。着いたときから高山病です(笑)ただし、すぐに2,500mくらいまで下りることになるんですが、チベットの村に行くまでにはさらに、3,000mを越えたりともう目茶苦茶で、あぁ、俺は体のセンサーが壊れてるんだなと思った(笑)
大:高地に行ってすぐ寝るなっていいますよね。寝ないで血液をまわして順応させる行為なんだと思います。だからすぐ寝たらダメですよ(笑) 交感神経から副交感神経への切り替えといったことも関係してると思います。
参加者Cさん:話は戻りますが、そもそもギョサンで登山しようとおもったきっかけはなんですか?
大:登山靴が合わなかったんですね。重登山靴ってのは底が硬くて曲がらないようになってるので、足がなかで動いて靴擦れをして。替わりにランニングシューズを履いたんですが、私は山小屋相手の仕事をしていて、ときに重い荷物でいくものですから、シューズはすぐボロボロになるんです。それで、長靴、地下足袋、行きついたのがギョサンでした(笑) 一体成型なので安定感がありました!
参加者Dさん:30㎏の荷物でもギョサンですか?!
大:はいそのとおりです(笑)
ゆ:それってすごいことで、普通は重荷であればあるほど、重登山靴で足首の保護や耐久面をカバーしますからね。
参加者Eさん:いまもそうですが、いつもギョサンなんですか?
大:いえ、夏場はそうですが、さっきまで靴下履いてました! 脱げっ、ていわれて仕方なく(笑
はい、どこで買えるかって? ギョサンネットというのがあるので検索してください。AmazonもOKです。
参加者Fさん:サーファーでギョサン履いてる人おおいですよ。砂浜は夏は熱くてビーサンじゃもたないって人が、けっこう履いてるの見ました。
参加者Gさん:御蔵島行ったときは、全員ギョサン履いてました。なので、履き替えてと言われました。
(会場笑)
ワラーチがいま流行ってますが、いまは素足に近い感覚の履物がむしろ足裏センサーが活発になって良いというので、かなり増えて来てますよね。
宇:子供なんかまさにそうで、小さい頃から無理矢理靴を履かせるものだから、親指や小指が発達障害になったりと弊害がおおいですよ。なので、なるべく裸足で育てるのがいいのかもしれませんね。赤ちゃんがハイハイしますよね、あれには意味があって、手はセンサーの役目もあるんですが、四つん這いになることで、首や腰の役割を自然におぼえていってるんですね。ハイハイが速い子は走りも速いんですよ。
いまはトカゲ歩きとかね。
だから、山で手足をつかってよじ登る行為なんかはとてもいいですよね。普段そんな体の使い方しないですから。
大:とにかく皆さん、いまいちど山に登ってみてくださいね!
(Forum1おわり:イベントは後篇につづく)
◎大谷 拓哉:
山の広告代理店「あるぺん企画㈱」の代表。夏はギョサンで歩荷や登山を楽しみ、2016年には視覚障害者の伴走伴歩を世にひろめようと、伴走伴歩協会をみずから立ち上げ精力的に活動する。
◎宇梶 義男:
ムーブアクション㈱代表。みずからも施術をするプロでありながら、整骨院を複数経営しつつ、2016年には代々木にランステーション“&MOSH”をオープン。健康は体だけじゃなく心も重要と考え、2016年からは山に関するコラボレーションということで、このYAMA NOVAへも社を挙げての取り組みをスタート。
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山のアクティビティや自然の中での暮らしなど”山のある暮らし”をされている方、興味ある方はぜひご参加ください。