さて、少しはコンペ(競技会)のことも書こう。
アメリカはドランゴで開催されたW杯の壁は高さ約15M前後と思われ、横幅は2選手が同時に登れる程度の壁だ。
地上から約2Mはほぼ垂壁で、残りは傾斜のついた一面の壁を後ろからクレーンで吊るという構造。
12月なので氷の部分はなく、今のトレンドであるロシア製のホールド(カラフルな石)に金属部分が組み込まれた特殊なホールドがふんだんに使われたルート(課題)になっていた。
今回の方式は男女2ルート同一課題で予選を行い、男子、女子それぞれの上位18人が準決勝に進む。(ちなみに決勝進出は男女それぞれ上位8名)
開催期間は4日間。前半の2日間はユース(20歳以下の選手)の大会、後半の2日間は全米選手権兼、W杯という内容。
想像よりスケールが小さめな壁に男女同一ルートとなると、一体どんなタイプの課題が出るんだろうと、あれこれ妄想してしまう。
とは言え、勝手に妄想して怖がっていても仕方がないので、ユースが登るところを観戦しつつ研究する。
研究するといっても大げさなものではなく、ルートセッター(コンペの課題を作る人たち)の癖や、どの様なホールド、身体の動きが多いのかなどを見ている。
ホールドも数に限りがあるので同じものが予選で使われる可能性だってある。
また、たいていはコンペの前日には予選から決勝までの課題が準備済みで、あとは印や順番に従ってホールドをつけていけば良いだけになっているハズだから、その壁にペンでかかれた小さな小さなヒントを見たりして、まだ現れていないルートを想像してみたりする。(ホールドは壁につけたり、外したりできる)
こういう見方もある。イベントやショーアップという側面からコンペを観た時にどの辺りでクライマー(選手)が落ちたら盛り上がるのか?ということを見たり、ここで落ちると危険だからこの辺りまでは難易度はそれほど上がらないだろうとか、そういったことも想像してみる。
ルートの作り手の気持ちも考えてみる。なぜならルートセッターは絵描きさんと似ていると私は思っていて、キャンバス(=壁)に自由に絵(=ルート)を描き、クライマーを動かしていく。
クライマーにさせたいと思う動きの課題を出し、順位を上手くバラけさせるのが仕事の要素のひとつだ。
現地で大会受付完了後、ユースの大会をサラッと観戦し、ホテルにチェックインをしに行って、次にやるべきことは買い出し。
3人でスーパーへお出かけ。2~3日分の朝食や簡単な補給食などを買う。
どうして、海外のスーパーって楽しいんだろうか?見たことないものがいっぱいある様にみえて、おもちゃ箱の中をかき回すような気持になる。
一通り買い物を終えて荷物を置き、今度は再びコンペ会場に戻りテクニカルミーティングというものに出席する。
テクニカルミーティングとは、今シーズンから変更になったルールの確認や、会場の特徴を踏まえた特別なルールをアナウンスするものだ。
同時に翌日の予選の試技順が発表されたりもする。
もちろん、英語でミーティングは進む。私にとっては中々の難易度で、結構集中力を使う。
スターティングリスト(試技順)はweb上でも確認できるようになっている。恐ろしいくらい便利な時代だ。
今回は、現地の大会側が選手やスタッフに食事を用意してくれていた。とても美味しいし、有難い。食事が参加費に含まれている大会もあれば、そうでない大会もある。
ちなみに今回は参加費が150ドルで、事前にweb決済できる。
改めて各国の選手達と挨拶を交わし、翌日の朝が早いので切り上げてホテルに戻った。
私は早起きがとても苦手で所謂「夜型」な人間だ。
しかし、スポーツに取り組むにあたり「朝型」の方が何かと過ごし易いのではないか?と思っている。
若い頃は朝型人間になる様に考えたり、悩んだり、工夫したりしてみた。失敗する度に自分のことを「ダメなヤツだなぁ。」と笑ったり、落ち込んだりしていた。
今は夜更かし好きで朝に弱い主婦である自分をほんの少しは認められる様になった。
(その4へつづく)
(文:八木名恵)
※この文章は八木名恵の主観であり、クライミングに対する意見ではありません。 八木名恵はコンペティターであり、山岳全般の専門家ではありません。アウトドアアクティビティーを楽しまれる際は専門家の意見を参考にして頂き、安全やマナーに十分配慮して無理のない計画をお願い致します。
その1はコチラ↓
その2はコチラ↓
八木名恵プロフィール