突撃!雑談インタビュー、ウルトラマラソンランナー佐藤良一篇の最終回。
小学生の時の作文で
「僕は普通の社会人にはなりたくないです。
もし棺桶に入る時は、僕はニンマリしたいです」
と書いて以来、
「やるためにはどうしたらいいか」
を実践してきた佐藤さん。
多くの人はやれない理由を考えたりする中、
「やりたい」をとことん突き詰める佐藤さんのお話は
とっても刺激的なんです。
(文章・写真=池ノ谷英郎/聞き手=山本喜昭)
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佐藤>
僕も最初は職業として1つのテニススクールで
コーチをやっていたんですけど、
(こういう長期の休暇を取ってレースに出るのは)
1回2回くらいなら許してくれそうだけど、
それが今度はラダックで4週間留守にしちゃうんですよ。
そういう時って何十レッスン、何百レッスンを抜けるから
すごく迷惑をかけちゃうんですよね。
許してくれないですよね。
で、やっぱり年に4~5回は海外の250km以上・24時間以上の競技に
出たいと思ってそこのコーチを辞めたんです。
でも無職になったわけではなくて、
プライベートレッスンをやったり
毎日違うテニススクールに行ってアルバイトコーチを
したりしていました。
そうすれば1回や2回いなくても迷惑は掛からないだろうって思って。
(最初のテニススクールで)実際にそれで怒られたことは
無いんですけど、僕がそういうのが嫌だったので。
だから毎日違うところに行くんです。
そうやって生活の基盤を作ってあちこちの国に行っています。
山本>
行ける環境づくりからですね。
佐藤>
はい、やりたかったんで。
山本>
良一さんは基本的に
「やるためにはどうしたらいいか」
っていうところから考えてますよね。
多くの人はやれない理由を考えたりするじゃないですか。
良一さんは「やりたい」というのが一番上にあって、
そのためにどうしようか?と考えてらっしゃる。
佐藤>
そうですね。それがまた不思議なんです。
で、なんでみんなやらないんだろう?って考えてみたんです。
そしたら、「やりたいかやりたくないか」
ではなく「出来るか出来ないか」を考えているんだなこの人たちは、
って思ったんです。
山本>
なるほど、気持ちは置いといて、ね。
佐藤>
「あ、出来ない⇒やらない」って感じ。
僕は「やりたい⇒やる」(笑)。
出来るかどうかなんて考えていたら何にも出来ないんですよ。
山本>
出来るようにしよう!ですね。
佐藤>
だからフルマラソンで3時間9分で翌年1秒遅かった、
それからウルトラを走り出したけど、
117kmを出来る(走れる)なんて思っていないんですよ。
でもやりたいと思ったんです。
そしたら出来たんです。
その後、その倍以上の250kmに挑戦したけど、
そんなの絶対出来っこないって思ったけど出来たんです。
山本>
やりたいから。
佐藤>
そう、やりたいから出来たんです。
出来なくても当たり前だと思っているから、
リタイアしたらその後どうすればいいんだ?って考えればいい。
でも毎日誰かに「完走するぞ!」って言いふらしてましたね(笑)
周りは「絶対出来っこない」って言う。
そういう足を引っ張る連中って世の中には多いんだなって
思いますけどね。「無理だ無理だ」って。
山本>
「やめなさい」とかね。
佐藤>
子供の頃から言われてますもんね。
やめなさい、こうしなさい、あれはダメです、とかね。
そんなことを昔から言われてそれはおかしいって
ずっと思っていました。
山本>
では、子供の頃からそういうことがあったんですね。
佐藤>
あったんです!溜まっていたんです。
母親に言わせると僕はすごく扱いにくい子供だったみたいです。
正論なんだけど大人っぽいというか怖いというか、
それに対する答え方が難しかった、扱いにくかったって。
うちの家系は両家ともすごく勉強が出来てある意味一流なんですよ。
学校も一流、大学も一流、企業も一流、
その中の長男長女に生まれたのが僕だったんです。
すごく期待が大きかったんです。
最初のうちはすごくかわいがられたんですけど、
そのうち何にも頭角が現れないっていうんで
「この子はおかしい」って思い出したみたいです。
家族会議が始まって、僕を精神病院に連れて行ったんです。
祖父が会社の偉い人だったんで、その友達に病院の院長がいて、
そこに連れていかれたんです。
僕はこれまでみんなと同じだと思っていたんだけど、
普通じゃないって思われてここに連れてこられた、
お先真っ暗って思ったんです。
で、いろんな検査が終わった後、看護師が僕のところに来て、
「どこも悪くない」って紙を持ってきたんです。
それを見た瞬間、
「ちくしょう!あいつら!俺、どこも悪くないじゃないか!
どれだけショックを受けたと思ってるんだよ!もう誰も信じない!」
ってそのときは思いました。
で、その頃に小学校で作文を書かされたんです。
それは将来の夢とかそういうやつだったんですけど、
最後に「僕は普通の社会人にはなりたくないです。
もし棺桶に入る時は、僕はニンマリしたいです」
って書いてあった(笑)
山本>
小学生が(笑)。卒業文集とかですか?
佐藤>
すごいでしょ?(笑)。卒業文集とかじゃなくて3年生くらいの時の
作文なんですけどね。
山本>
「死ぬ時ニンマリしたい」って。名言ですね!
佐藤>
そしたらそれがまた問題になっちゃって。
親が呼び出されて「この子はおかしい」って(苦笑)
だからそれと同じなんですよ。
やりたいことをやって、がんばったぞ!
って思いながら死にたいって。
それがそういう言い方になっちゃったんです。
だから僕は精神病院に連れて行かれたことで
そういう発想が出来てよかったと思っているんです。
あの出来事が無かったら僕は普通の大人になっていたかもしれない。
精神病院に連れて行かれた、
フルマラソンで自己ベストより1秒遅かった、
ヘルニアになった、
どれもあって良かったのかもしれないって思ったんです。
山本>
それらの出来事が無かったら今の佐藤さんはいない、
ということですよね。
佐藤>
そう、どれもつながっているから、
これからどの方向につながっていくんだろうって
ワクワクしますね(笑)
昔から僕はテニスをやる人ではない、走る人でもない、
じゃあ何をやりたいんだろうって思いながら
今はとりあえず走っているんです。
分からないから走っているんです。
山本>
分かるために、ですね。
プロセスを楽しみながら生きているって感じですね。
何か目標があるというよりも。
佐藤>
いろんな人たちに出会ううちに
「あ、面白そう!」ってなって・・・
そういうつながりですよね。
チベットは本との出会いからですからね。
山本>
「棺桶の中でニンマリしたい」
っていうのは終始一貫していて今も続いているんでしょうね。
だからそういう行動に出られる。
佐藤>
「おとなしくしなさい」って言われて
そのままおとなしくしていたらニンマリできないですよね。
「来世に持ち越しかよ!」ってなっちゃいますよね。
チベット仏教とかに触れていると
来世とか思うようになっちゃうんですけど(笑)
山本>
ラダックの333kmを走った後は何か考えているんですか?
佐藤>
10月にマナスル・ウルトラトレイルっていう200km超のレースがあって、
それに出たいって妻に言っているんですけど、
「今回だけはやめて」って言われているんです。
でも、部分的には許してくれているみたいなんですね。
(僕に)絶対にダメとは言わない方がいいだろうって
思っているんでしょうね。生きるエネルギーですから(笑)
山本>
そうなのですね(笑)
佐藤>
「来年は申し込んでもいいよ」って言ってくれているんです。
ただし、「そしたら来年のスパルタスロンはダメだよ、お金かかるから」(笑)
山本>
どれかひとつにしなさい!って感じなんでしょうね(笑)
佐藤>
来年はチーム凰(http://ameblo.jp/teamootori/)で7人くらい
スパルタスロン出場を考えているんです。
みんな出場権を獲得してね。そこに俺がいないのはつらいなって(笑)
だから両方行かせてよ~って言ってるんですけどね。
山本>
マナスルとスパルタスロンの両方(笑)
佐藤>
でも、それは無謀なんですよ。
スパルタスロンは9月の終わりなので、
そこから1か月半でマナスルは・・・。
でも、行きたいんです。
山本>
マナスルは日本人が初登頂した山ですからね!
佐藤>
そうなんですよ。旗を見ることは出来ないですけど、
結構上の方まで、標高5,000m以上は行きますからね。
ぜひ走ってみたい。
山本>
トレイルなんですよね?マナスルは。
佐藤>
そうです。ま、向こうでは生活の道なんですけどね。
細いシングルトラックを走りながら
お寺に泊まりながら進む感じで、すごく面白そうなんです。
山本>
これからも「(棺桶で)ニンマリ」への道が続きそうですね。
佐藤>
やりたいことがたくさんあるんですけど、
今のところ全部ネパールとかヒマラヤばっかりなんです。
山本>
何か呼んでいるんでしょうね。
向こうの人ってイメージですもん、良一さんの風貌(笑)
佐藤>
僕も向こうの人だと思っています(笑)
向こうの人には、僕はチベットのカンパ族に似てるって
言われることが多いです。
向こうにはテンジン・ヒラリー・エベレストマラソンとか
マンダラトレイルとかいろんなレースがあるんですよ。
ヒマラヤの端から端まで行くようなとんでもないレースも。
それはちょっと出られないですけどね、死んじゃいます(笑)
あ、それと今、エベレストって登れない山じゃないです。
先日は13歳の女の子が登頂しているんですね。
13歳の女の子と14歳の男の子で、
現実にはほとんど引っ張り上げているんですけど。
だからエベレストは絶対に無理じゃないなって思っているんですね。
ということはやっぱり海からかなって思って。
誰でもやっていることじゃダメなんですよ(笑)
山本>
そこであの「槍ヶ岳メソッド」(海から槍ヶ岳登山)が来ましたか(笑)
佐藤>
そうなんですよ。ベンガル湾のガンジスデルタから・・・
山本>
いいですねー。壮大ですね!
佐藤>
壮大です!これが今の最終的な「やりたいこと」ですね。
でも、これは間違いなくお金がかかります。
この前、野口健さんと会ったんですけど、
エベレストをベースキャンプから上に行くだけで
700万円はかかるんです。
山本>
それはシェルパとかを雇うとかも含めてですよね。
佐藤>
そうですね。安く見積もっても、それくらいです。
山本>
さらにその前があるわけですからね。
ベンガル湾からとなると。
歩くんですか?走っていくんですか?
佐藤>
とりあえず走ります。
でもサポートがいれば遠慮なく走れますけど、
荷物を背負っちゃったらちょっときついですね。
あんなくそ暑い中を走りたくないなって思いますけどね。
山本>
それは楽しみですね~。
佐藤>
誰か思いっきりこの話に乗っかってくれる人がいたら
うれしいですけどね。
山本>
でも、言い続けるとスパルタスロンの時と一緒で・・・(笑)
佐藤>
「ここ掘れワンワン」と一緒で、
「ここに何かすごいものがあるよ!」ってね。
1回だけ「ワン!」じゃなくて、何度もしつこく騒ぎを起こすくらいに
「ワン!ワン!ワン!ワン!」って(笑)
山本>
「あいつ何か言ってるぞ!でも面白そうだから行かせてやれ!」
みたいなね(笑)
佐藤>
そうそう(笑)
山本>
楽しみは尽きませんね。
佐藤>
でもこれは・・・かなり遠いですね。
前はちょっと近いかなって思っていたけど、
今はこう(心臓病に)なっちゃったから、
スパルタスロン完走とか333km完走とかで
自信を取り戻さないとダメなんですよね。
山本>
なるほど。
佐藤>
明日のICD友の会でヘタなこと言えないなって。ついペロッて言っちゃいそう
です(笑)
山本>
今の話なんてやばいですよね。ベンガル湾からエベレスト登山なんて(笑)
佐藤>
将来の最終的な夢は?って聞かれて頭をポンとたたかれたら「エベレスト登山
です」って言っちゃいそうです(笑)
山本>
でも、それはまわりに夢を与えますよね。楽しみだな~。
佐藤>
「チベット巡礼チャリンコの旅」もまだ頭の隅っこにありますからね。
山本>
あるんでしょうね。トランスヒマラヤもしたいんでしょ?(笑)
佐藤>
したいです(笑)。魅力的ですよね。
でも、レースはちゃんと運営者に見守ってもらってますから
まだいいんですけどね。
山本>
一人プロジェクトだとね。
佐藤>
そうですね、トラブルがあると大変なことになっちゃいますからね。
道も分からないし言葉も分からないし。
山本>
逆に言うと刺激だらけですね。
佐藤>
ホントは一人でやるのが正解に近いんだけど、
やっぱりフォローがないとエベレストは絶対に無理ですからね。
そもそも許可が下りないですし。
荷物を持ってあげる、酸素をたくさん吸わせてあげる、
ロープやはしごのセッティングをちゃんとやってあげる、
そういう状態を作らないと、僕の場合はちょっと難しいから。
でも、100%無理じゃないなっていうのもよく分かっているから。
だから誰か先に行かないでって(笑)
日本のトランス・ジャパン・アルプス・レースも
誰もやってなかったからよかったんですよ。
チベットも誰もやってなかったからやりたいと思ったんですよ。
でも、今はやっちゃってる人が結構いるから
「まあ、いいか」って思ってるんですけど(笑)
山本>
いやあ、ほんと楽しみにしています。ありがとうございました。
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4回にわたる雑談におつきあいありがとうございました。
いかがでしたか?
幾多の困難を乗り越える佐藤さんの原動力がちょこっとだけ見えてきた気がします。
ド級!では、今後も佐藤さんのすばらしい人生のチャレンジを応援します!
それでも走り続けるワケとは? 〜ウルトラランナー佐藤良一の挑戦 〜
第一回はコチラ↓↓↓
http://docue.net/archives/contents/ultrarunner-sato-1
それでも走り続けるワケとは? 〜ウルトラランナー佐藤良一の挑戦その2 〜
第二回はコチラ↓↓↓
http://docue.net/archives/contents/ultrarunner-sato-2
それでも走り続けるワケとは? 〜ウルトラランナー佐藤良一の挑戦その3〜
第三回はコチラ↓↓↓
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<佐藤良一さんのプロフィール>
ブログ:「走り出したチャンドラ〜佐藤良一〜」 http://blog-ryo.jugem.jp/
佐藤さんへの応援やメッセージはこちらにどうぞ。
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スポーツ冒険マガジン・ド級! 編集部宛
いただいたメッセージは大切に読ませていただきます。
おもしろいメッセージはサイト内でご紹介いたします!