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冒険家 関口裕樹の冒険人生 〜DIVE INTO THE WILD〜 その3

現在、冬季極北カナダの3つの湖と凍結したIce roadをつないで極地冒険の聖地レゾリュートへの自力到達を目指す4年越しの壮大な冒険にチャレンジ中の関口裕樹さんとの雑談インタビューも今回で三回目。

今回は普段の山でのトレーニングについてのお話から、今、チャレンジ真っ最中の今度の冒険についての話、そして最後は冒険中の通信機器に対する考えなどをざっくばらんに
関口さんの冒険計画概要はコチラです。
http://ameblo.jp/timl40000k/entry-12147390552.html
(文:池ノ谷英郎、山本喜昭 / 写真:関口裕樹、池ノ谷英郎)


山本>

関口さんは遠征に行く時以外は日本ではどういうトレーニングをしているんですか?

 

関口>

僕は山ですね。

山ではなんでもやります。

縦走、沢登り、クライミング…クライミングはアルパインもフリーもボルダーもやります。

僕個人の考えで行くと日本で出来るトレーニングは山かなって思うんです。

 

山本>その理由はどんなところですか。

 

関口>

さっき冒険家の素質のひとつは「生命力」ってお話しをしましたが、日本にいる時にいくらジムに通ってトレーニングをしても身体能力は上がるかもしれないけど生命力は上がらないなって思うんです。

 

山本>

なるほど!

 

関口>

ジムは快適な環境ですからね。

生命力を上げるためにはやっぱり自然の中にいなければいけないな、というのがありますね。

トレーニングのためというよりは山が好きで楽しいから行っているんですけど、山をやるから北極にもそれが生きて、北極に行くとそれが山にも生きて、という相乗効果になっているんです。

それこそ室内でのボルダリングだって北極に繋がっている。

直接どう繋がっているんだと思われるかもしれないけど、僕の中ではどれも繋がっているんです。

極地冒険家でも山をやっている人は強いですよね。

植村直己さんもそうでしたし、田中幹也さんももともとクライマーですし、厳冬のシベリア横断をした安東浩正さんももともとは登山家ですからね。

そうやって見ていると山をやっている人はやはり強いですね。

僕も時間が無い時はランニングや筋トレもするんですけど、山は通年でやっていますね。

 

山本>

いわゆる生命力って体力だけではない部分も含まれていますよね。

それって、どんなものなんでしょうね?

 

関口>

植村直己さんの生命力は特にすごいな、というのはありますね。

 

山本>

都会や室内で同じくらいの重いものを持ったり坂道を登ったりしても、自然の中でそれをするのとではおそらく違うんだろうなというのはなんとなくわかるんですよ。

僕は冒険家じゃないけど時々山に登るし、これを読んでいる人もそうだと思うんですね。その辺について関口さんはどういう風に感じているんですか?

 

関口>

そうですね…。

普通の状況なら諦めてしまうような状況でも諦めない、ものすごい単純なことですけど、最後は諦めるか諦めないかで違ってくるんじゃないかと思うんですよ。

 

山本>

なるほど、そういうことですか。

 

関口>

山野井泰史さんがギャチュンカン下降中に悪天候での過酷な状況から自力で下山された時なんて、あの状況なら普通は諦めていると思うんですよ。

僕だって諦めると思います。

 

山本>

あれはアンビリーバブルな世界ですよね。

ある程度身の危険にさらされた状況の中でのトレーニングだからというのは大きいんですかね?

 

関口>

自然と関わっているところが大きいですよね。

スポーツ選手としての能力の高さというよりも、人として、生き物としての根本的な強さみたいなところですかね。

 

山本>

いいなぁ~憧れるな、そういうの。

 

関口>

僕も憧れていますよ(笑)

 

山本>

何言っているんですか、関口さんはめっちゃあるじゃないですか(笑)

 

関口>

いやいや、全然無いんで(笑)

 

山本>

関口さんは山でトレーニングをしているけれども、山の冒険の世界には行かなかったんですか?

 

関口>

うーん、そうですね。

気持ちとしては僕自身はアルパインクライマーってすごいなって思っていて、極端な言い方をするとアルパインクライマーは全員尊敬しているんですね。

僕らがやっている”水平の”冒険に比べて山のリスクってはるかに高いですし、何かひとつ間違えば一発で死んでしまうような状況でやっている彼らへの尊敬もあります。

それならなぜやらないのか?というと、これはもう感覚的というか好みの部分が大きくて、僕としてはこっちの方が合っていたということですね。

 

山本>

トレーニングでは垂直の壁を登ったりもするじゃないですか。

でもやっぱり自分の帰る場所は北極だな、という感じですか?

 

関口>

感覚的なことですけど、自分の中では一番はやっぱり北極だな、というのはありますね。

 

山本>

以前、南極の生態学者の田邊優貴子さんにインタビューしたんですけど、

「なんで極地の生物を研究しているんですか?」

って聞いたんです。

いろいろ旅をしていたんだけど初めてアラスカの北極圏に行った時に「ここだ!」って思ったそうなんですよ。

 

 

関口>

まさにそれですね。感覚です。

 

 

山本>

そういうことですよね。やっていることは違えど。

 

関口>

僕がなぜ冒険をしているかというと、僕の中で「厳しい自然環境に挑みたい」という思いがあって、それを求めた結果北極に行ったんだな、というのはありますね。

例えば荻田泰永さんは「北極男」と呼ばれていて、北極が好きなのが先に来ているのかなと思うんですね。

もちろん僕も北極が好きで素晴らしい場所だと思うんですけど、それはあくまで二次的なことで根本的な部分では自分の限界を出し尽くせる場所を探してたどり着いたのが北極だった、というのが大きいですね。

 

山本>

今後のことを聴かせてもらえますか?

関口さんのブログで「次回も500km歩こうと思っていたけど止めました」というのがありましたけど、その辺のこともお聴きしたいのですが。

 

関口>

そうですね。

今年と来年は2年計画で考えていて、今年の遠征はトレーニングの年と位置付けて来年はカナダ北極圏の島しょ部を500km歩こうと思っていたんですね。

その当時の僕にとっては「海の上」というのは正直まだ怖くて、経験も無くて。

500km歩くというのは僕にとって自分が成長するうえで重要なステップだったんですよ。

ただ、今回の冒険に行く前あたりから感じ始めていたんですけど、今回の冒険を通じて「500km歩くだけなら出来るだろう」と手応えを感じることが出来たんですよ。

 

山本>

なるほど。

 

関口>

僕にとって「出来るだろう」と思えることをやるのは冒険とか挑戦ではなく”作業”なんですね。

そういう作業をするつもりはないので(500kmは)止めたんです。

それで「じゃあ来年はどうしよう?」と考えていたんですけど、今回発表した(※2017年3月現在進行中)川、湖、ice roadを繋げて海へ抜ける冒険の他に1,000km歩くというのがあったり1,500㎞歩こうというのもあったんです。

でも、さっきも話した通り最初から数字ありきの冒険というのはいまいち燃えなかったんですね。

 

山本>

それは感覚としてですね?

 

関口>

そうですね。

やっぱり凍った海を歩ける期間は限られていて、その間に歩ける距離もある程度限られてくるので、今度は1,000kmで次は1,500kmとか言っても上限はある程度決まっているわけだからいつかは行き詰るんですよ。

世間的には1,000km歩くとか1,500km歩くとかっていうのは一般的には分かりやすいかも知れないですけど、個人的な動機のもとに行っていることなので世間的にはどうでもいいんです(笑)

 

山本>

世間体は置いといて(笑)

 

関口>

はい(笑)

で、そこで今回発表した計画に移ったんです。

あと、ちょっと個人的に話したかったことがあるんですけど…

 

山本>

はい、どうぞどうぞ。ぜひ!

 

関口>

通信機器とかについてちょっと話したいんです。

今回、僕は通信機器は持って行かずに最低限SOSを出せる一方通行のSPOT(衛星経由でSOSを発信出来るGPS機器)だけ持って行ったんですけど、僕自身は出来るだけ通信機器を持つことは嫌で出来れば持ちたくないと思っているんですね。

阿部雅龍さんとかは冒険中も頻繁に情報発信していますが、僕は冒険中はSNSとかブログは一切更新しないことにしているんです。

ただGPSを持つことには抵抗が無くて、それはなぜかと言うと要するに冒険中に人の意志が入ることが嫌だということなんですよ。

 

山本>

人っていうのは”他人の”ということですか?

 

関口>

僕以外の、他の人の意志が入るのが嫌なんです。

GPSはそういうのが無いじゃないですか。

例えば服部文祥さんは冒険において電子機器すべてを否定してああいう「サバイバル登山」という形を取ったと思うんですね。

僕は今までアラスカに行ったり凍った川の上を走ったりしていたんですけど、ちょこちょこ人は通るんですよ。

なので一応人との関わりはあったんですね。

 

山本>

リアルな関わりはあったわけですね。

でもそれはしょうがないですよね(笑)

 

関口>

ただ今回は他に誰もいない状況で1ヶ月を過ごしたんですよ。

それでどうなるかと思ったんですけど、やっぱり他の冒険家にも「独りでいるのがつらい」という人もいたりしますけど、それはまったく感じなくて会話欲求とかも別になかったですし。

これが半年とかになれば分からないですけど、1ヶ月くらいではまったく感じなかったですね。

独りでいることに対して強いというのもあるのかな、というのは感じていましたね。

他の人が言っていた「孤独に耐えられない」というのはまったく共感できませんでした(笑)

今回は完全無人で1人で過ごしましたけど、僕にとっては大自然の中で1人でいることがすごく自然に感じられたんですね。

いるべき場所にいるという感じがして。

何にもないと言う人もいますけどものすごい大自然がそこにはあって、これがホントに無機質で真っ白な所だったら別ですけど、そこには”自然”いうものがあるので、そういう場所に1人でいることに関してはまったく苦にならなかったです。

 

(つづく)


本シリーズは文中に多数の冒険家や登山家の方々のお名前が登場しますが、ご興味ある人はぜひご自身で調べてみてくださいね。

 

第一回目の雑談はコチラ

冒険家 関口裕樹の冒険人生 〜DIVE INTO THE WILD〜 その1

 

第二回目の雑談はコチラ

冒険家 関口裕樹の冒険人生 〜DIVE INTO THE WILD〜 その2

 

関口さんのプロフィールはコチラ

冒険家 関口裕樹(せきぐちゆうき)