エクストリームスポーツ選手を追って世界を飛び回る映像作家の野澤邦男さん。
エアロバティクスパイロット室屋義秀さんを7年近く追っている野澤さんが綴るレッドブルエアレース2014での帯同記四回目。
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イギリス戦(8月16日、17日)
(アスコット競馬場)
イギリスのアスコットにある格式の高い競馬場。かつてはエリザベス女王も訪れた場所である。
広さは通常の競馬場より数倍大きく、ゴルフコースと隣接している。
イギリスからは2名のパイロットが参加している。
2010年のチャンピオン、ポール・ボノム。
そしてマレーシアで初の1位表彰台に上がったナイジェル・ラム。
ふたりの地元選手を迎えて会場は大盛り上がり、チケットは両日とも完売。
計7万人近くの観客が足を運んだ。
(ファンのサインに応えるナイジェル・ラム(中央)
その期待を背負ってホームグラウンドで戦う1戦はプレッシャーで押しつぶされそうに違いない。
今回のレースは大波乱だった。ふたりの地元ベテランパイロットがあわやトップ12で
外れるところであった。
ボノムが7位、ラムが8位でギリギリスーパー8に駒を進めた。
イギリス特有の曇りで雨の降りがちな天候がレース会場を襲った。
気温は夏だというのに低く、日中でも25度に達しない日々が続いた。
だがこれは機体にとっては好都合、オーバーヒートを避けてマシーンパワーが引き出せるからだ。
予選日、レース日の両日とも雨が降り注ぎ、風が吹き荒れた。
パイロンは大きく左右に揺さぶられ、風によりパイロンがダウンする場面もしばし見れた。
(室屋パイロットの機体から見た会場)
コースも特有で、コース上には木々が生い茂り、
トラック上では木を交わしてコース取りを余儀なくされていた。
時には機体と木の距離が1m 近くまで迫る場面も見受けられた。
しかし誰もがトップパイロットらしく、木に触れる事は一度たりとも無かった。
(会場に設置されたコースと観客)
3回のターニング・マニューバ(180度の旋回)があり
誰よりも早く飛んでいたのは室屋義秀選手である。
トップ12ではマシーンが1世代前というハンデを物ともしない同等の6位に付けた。
しかし、その後のトップ8で水平飛行を早めに行ってしまい2秒のペナルティーでファイナル4を逃した。
このペナルティーがなければ2位に付ける好成績だった為に、悔やまれる。
だが室屋選手の研究熱心さには目を見張るものがある。
コース取りを他の選手とビデオで比較して研究している。そして自分のフライトをコマ送りして確認する。
毎回、欠かさずそれを行っている。
フライトシュミレーターを使っているはずのハンネスは大荒れだった。
コース取りを間違えたり、スモークの出し忘れやペナルティーを犯したりとこれまで見た事が無いくらい崩れていた。
最終的に勝負を制したのは、地元ボノム(1位)とラム(2位)のワンツーフィニッシュ。
スーパー8での7位、8位からの劇的勝利である。
そして、3位は今季初の表彰台をゲットしたニコラ・イワノフ(フランス)で終わった。
(フライトに向かうチーム、カービー・チャンブリス)
これまでトップ争いを繰り広げていたオーストリアのハンネス・アルヒ(現在1位)と
カナダのピート・マクリード(現在2位)は共にミスが重なりファイナル4から外れてしまう。
エアレースは3次元のモータースポーツ。
風、雨、気温、地形、様々な要素を考慮して選手達は飛び方を変えなければならない。
次戦はぐっと気温が高くなるダラス、テキサス。
更に標高も700m近くと高いので空気が薄く、エンジンのパワーが出にくい。
また一波乱がありそうな予感がする。
次回のレポートをお楽しみに。
チーム室屋 ハイライト映像
https://www.youtube.com/watch?v=kZNC6mSKWWk&list=UUoeLHQ4FQlfcvoeUmGrN8Pw
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これまでの帯同記はコチラ↓↓↓
クロアチア篇 http://docue.net/archives/contents/rbar2014croatia
マレーシア篇 http://docue.net/archives/contents/rbar2014malaysia
ポーランド篇 http://docue.net/archives/contents/rbar2014poland
<室屋義秀>
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