category: |

登山家 佐々木理人とトレイルランニングレース

%ef%bc%93%e5%a4%a7%e4%bc%9a%e3%83%81%e3%83%a9%e3%82%b7

佐々木理人 27際。

デナリ(マッキンリー)やK2遠征などを経験し、

2017年には厳冬期のデナリ登頂を目指す若き登山家である。

彼のことを知ったのはほんの数ヶ月前。

2016年度の厳冬期のデナリチャレンジむけての

トークイベントに参加したときだった。

 

佐々木さんが、明大山岳部入部前に先輩から言われて

読み始めた植村直己さんの「青春を山に賭けて」。

山岳部の主将の時に、はじめての海外登山で植村さんが登った、

そして最後に消息を絶ったデナリの登頂に成功する。

さらに2013年、世界第二の高峰K2の遠征隊に誘われて参加。

途中おこった雪崩により登頂はならなかった。

そうして、今年度、再びデナリを目指していたのだ。

しかも植村さんが消息を絶ったのと同じ厳冬期に。

 

本記事を書いている私、山本も、中学のころからの植村直己ファン。

佐々木さんの挑戦の話を聴いてぜひドキュウ!で話を訊きたいと思い、

取材をオファーしたのだ。

 

で、である、何度か予定がお互い合わず、ようやくこの日っていう日程が

佐々木さんから連絡がはいった。

 

 

 

「今、地元の日光でトレイルランニングの大会を初めて作っていて、

デナリの計画との両立が難しい状況です。。。そのことを話してもいいですか?」

 

 

 

 

 

え、え、えええええ〜〜〜〜〜!!!

 

 

 

 

とは、さほど驚きもせず、

 

なぜ、デナリをめざす登山家が(しかも厳冬期の)いきなりトレイルランニングなのか?

トレーニングで山を走ってるのなら合点がいくが、なぜ大会を作ることのなったのか?

一体全体、佐々木理人とは、どういう男なのだろうか?

 

と謎が謎をよぶクライムサスペンス並みに、自分の好奇心が見事に沸き立ち

何事もなかったように、渋谷のとあるカフェでお会いすることになったのだ。

待ち合わせのカフェは結構なキャパのあるところで、少し遅れて入ったこともあり

キョロキョロ人探しレーザービームの熱視線をそこいら中に浴びせまくる。

 

トークイベントに参加したとはいえ、お互いほぼほぼ初めての顔合わせ。

探す相手は、ビロードの真っ赤なドレスにバラを刺して、

妖艶でウッフンな眼差しを投げかけているわけでは全くないので、

なかなか見つけられない。

 

なんて、御託を頭の中で並べていると、視線の先にいました。佐々木理人さん。

 

というわけで、今回彼が主催するトレイルランニングの大会

「日光国立公園マウンテンランニング」(http://www.nikkorun.com/

について色々話を聴いてきた。

 

(ちなみに9/20には定員に達したそうです。すごいですね。おめでとうございます。)

 

(インタビュー・文:山本喜昭)


 

佐々木>

すみません、デナリの話ではなくなってしまって。。

 

山本>

いえいえ、いいんです。

facebookでトレイルランニングの大会に携わってらっしゃるのは

お見受けしてたので、お手伝いされてるのかな〜?なんて思っていたのですが、

ガッツリ、主催、しかも発起人でらっしゃるということで、

俄然興味が湧きました。

 

 

ということで、冒頭の質問を実際にぶつけてみた。

「なぜ、デナリをめざす登山家が(しかも厳冬期の)いきなりトレイルランニングなのか?」

「トレーニングで山を走ってるのなら合点がいくが、なぜ大会を作ることのなったのか?」

 

 

佐々木>

はじめはデナリの方を優先して計画していました。

そもそものきっかけは地元栃木の鬼怒川が台風18号で

甚大な被害をうけたことでした。

自分の故郷がダメージをうけたのはショックでした。

そしてしばらくして地元に帰ってみると、

「なんとか自然を使って人をよんでほしい。」

って知り合いにいわれました。

「こんな風にすばらしい自然があるのだから、君だったら集められるだろう」

とも。

そんな風にいわれたものですから、真剣に考えました。

「トレイルランニングの大会とかだったら、できるんじゃないですか」

なんて話してるうちに盛り上がりスタートすることになったんです。

 

山本>

なるほど、そういう経緯があったのですね。

レースの運営ってはじめてですよね?

 

佐々木>

はい、はじめてです。

 

山本>

それは大変でしたでしょう?

特に形になるまでは。

コースや、組織、地元の協力要請、運営コスト、スポンサー探し、集客、広報などなど

初めてではわからないことがたくさんあったと思います。

 

佐々木>

そうなんですよ!

地元の人たちとやることが決まって、まずはお世話になってる

サロモンさんに相談に行きました。

そしたら、そもそも世界遺産だし、国有林みたいだけど大丈夫ですか?

って言われちゃいまして。

で、また地元に戻ってそのことを各所に確認したら、大丈夫!ってことになり、

それをサロモンさんに報告にいったら、みんな火がついて、

もりあがって、メインスポンサーになってくださることになりました。

幸先よくスタートしたんですが、企画から実務に遷ると許可関係が大変でした。

公共機関、地主、自治会などの調整です。

本当に大変でした 笑。

でも地元の人たちは総じて前向きで、だんだんと地元主体で

動かせるようになってきました。

そうこうしているうちに、デナリの準備の方が手がつかなくなってきて。。

いっとき精神くずれるんじゃないかというところまで追い込まれました。

 

山本>

うんうん、わかります。ぼくも大会の主催を立ち上げからしたことがあるので、

とってもよくわかります。

 

佐々木>

一緒にいくバディ(相棒の人のこと。いつも写真や動画に登山の様子をおさめてくれる

相棒がいるらしい)に相談したら、どっちかに集中した方がいいと

アドバイスをしてくれました。

日光は地元がやる気になってきたし、やめたら地元に帰れなくなるので

このイベントに集中できることになってある意味助かりました。

デナリは逃げないですし 笑。

 

とりあえず、いまは順調になってきていて、協賛もあつまりつつあり、

参加者もおかげさまで満員になりました。

 

トレイルランニングに関しても、地元のマウンテンランナーの星野由香理さんや、

HOUDINIローカルアンバサダーの佐藤千大さんら地元の有名選手が

すごく興味をもってくれて、マーシャルとかスイーパーとしてなど、

実行委員会メンバーにはいってくれたんです。

すごくこれはありがたかったです。

 

 

ということで、試行錯誤、トライアンドエラーを繰り返しながらも、

11月の本番に向かって、佐々木さんの表情は非常に明るい。

彼のそんな人柄がまわりの人を巻き込み、協力を得ていく原動力に

なっているのだろうと強く思った。

 

 

山本>

ところで佐々木さんにとって、登山の位置づけというか、この大会のことや普段のお仕事との

住み分けなどを聴かせてもらえますか?

 

佐々木>

登山はぼくにとってはライフワークです。

一瞬で打ち上げ花火のように終わらせるのではなく、

ずっと長くその時の自分にチャレンジし続けられる登山をしていきたいと思っています。

それに対してこの大会や普段のビジネスに関してもまったく無関係ではなくて、

元々「人と自然をつなぐ仕事」をしていくという目標をもっています。

 

山本>

人と自然をつなぐ仕事、いいですね。

具体的にはどういうことですか?

 

佐々木>

自分の田舎で小さい頃から慣れ親しんできた魚とりとかの川遊び、山遊びなどを、

都会の友人に教えてあげるとすごく楽しい自然体験として喜んでもらえる。

そういうことって大事なんだと思ったんです。

こういうことを友達だけではなく、もっともっと広げていくのは仕組みづくりが大切なんだと

思っていて自然にかかわるビジネスをつくっていきたいと思っています。

人が自然に触れる体験やそのきっかけになるような仕事です。

 

そういうビジネスが軌道にのったら、同時に自分の限界にチャレンジする登山を両輪として

やりやすくなります。

自分の登山だけして人に「僕ってすごいんです」って言えないタイプなんです 笑。

 

みんなに喜んでもらって、その上で自分の自由な登山をしていく、

そんなやり方がしっくりときます。

で、ぼくのやる登山ってある意味で危険なことをしているので、

仮に自分が山から帰ってこれなくなっても、別の人がまわしていけるような仕組み、

それがビジネスを作る意義だと思うんですよ。

 

山本>

それって、自分の生きた軌跡をのこしたいっていう意味もあるんですか?

 

佐々木>

そうですね。

今やっている仕事はアウトドアにまつわる動画やWEBをプロデュースする制作業務です。

これはこれで、人と自然をつなぐ仕事なんです。

そして今回の日光での取り組みも人と自然をつなぐ仕事。

日本から世界に発信するコンテンツづくりをしていると自負しています。

今後成長していきますよ〜 笑。

やっていく中で人を巻き込んでいく方法も少しずつわかってきて

今はすごく楽しくて充実しています。

登山は、一気に人を集めるという意味ですごく難しいです。

それに対して、トレイルランニングは人が一気に集められる可能性があると思ったんです。

だから企画しました。

デナリ、とくに厳冬期のデナリは当たり前ですが、(登頂するのは)簡単ではないです。

だから今年はあきらめて、日光の大会づくりに集中したんです。

 

山本>

なるほど、今回の大会に対しての想いがすごく伝わってきますし、

佐々木さんの登山と仕事の関係性もとても興味深いです。

ちなみに、登山やっていて自分で事業つくってる人って、どのくらいいるんですかね?

 

佐々木>

どうですかね 笑。

日本だとモンベルの社長さんやクライマーの平山ユージさんとかでしょうか。

 

山本>

自分のかかわている分野、つまり自然に関する分野で仕事をしながら、自分の生活をしているってすばらしいですね。

今日はありがとうございました。

 


 

こんな佐々木さんが主宰する日光マウンテンランニング、ドキュウ!では彼の山へのチャレンジとともに、今後も注目していきたいと思います。

 

「日光国立公園マウンテンランニング」

公式HP:http://www.nikkorun.com/

facebook:https://www.facebook.com/nikkoyamarun/