さかのぼること2年。
北欧はラップランド(※)のロングハイクの旅に出た二人の夫婦。
松本卓也・望夫妻。
ハイキング、トレイルランニングなどのアウトドアアクティビティの経験豊かな
お二人がラップランドに旅されたと聞き、その経緯と旅で感じられたことなどを
ゆるーく雑談インタビューさせていただきました。
今回はその一回目です。
(※ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアのコラ半島にまたがる北緯66度33分以北の北極圏一帯の広大な寒冷地。)
(文章・写真=池ノ谷英郎/聞き手=山本喜昭)
山本>
今日はよろしくお願いします。
いきなりですが、なぜラップランドに行こうと思ったんですか?
松本望(以下、望)
そもそもはこの本(森山伸也著「北緯66.6°」)がきっかけです。
山本>
あ、旅とかを考える前にこの本を読んでいたってことです?
望>
はい。
松本卓也(以下、卓也)>
この本が出版されたのが2014年10月23日ですね。
本が出たのは去年なんですけど、その人(著者)が行っていたのは
2009年頃ですね。
その時は「BE-PAL」とか「PEAKS」とかにも広告があったので、
本が発売されたのを知ってすぐに買ったんです。
望>
読んでみたらすごく面白くて、どこにテントを張ってもいいし
何をしてもいい、きまりが無いところにすごく惹かれて、
読み終わった時にはお互い「行けたらいいね」という感じだったんです。
義姉がヘルシンキに住んでいて、私は毎年クリスマスカードを
書いているんですけど、そのクリスマスカードに
「ラップランドの本を読んだのでいつか行ってみたいと思っています」
って一言書いたんです。
毎年暮れに実家に帰っているんですけど、
私がその年の暮れに体調を崩していて夫には1人で実家に帰ってもらったんですけど、
その時にお姉さんがたまたま帰って来てたんです。
山本>
ヘルシンキから?
望>
そうなんですよ。
山本>
それは結構めずらしいことなんですか?
卓也>
めずらしいですね。
望>
で、私がクリスマスカードに「ラップランドに行きたい」って
書いたことをダンナは知らなくて、お姉さんから
「あなたラップランドに行きたいんだって?」
って言われたらしく、実家から戻ってから
そんなことがあったと話をしていました。
山本>
お正月の家族の団欒でですね(笑)
望>
そうです(笑)
それで私はと言うと、お正月が明けて再び病院に行ったら
手術するとかしないで結構もめまして(苦笑)
結局手術はしないということで事無きを得たんです。
ちょうど仕事が忙しい頃にそんな風に体調を崩したりしたので、
なんとなく「人生何が起こるかわからないな」って
思うようになったんです。
そんな最中、お正月実家に帰ってラップランドに
行きたいって話をして来たよって話を聞いたものだから
急に私が「行こうよ!」って夫に切り出したんです。
山本>
なるほど。
ちょっとした生命の危機を感じたから、
「出来るうちにやっておかないと!」ってことですよね。
望>
そういうことです(笑)
というわけで、何があるかわからないと思ったのと、
ちょうどこの本を読んでいたこともありまして。
山本>
いろんなことがシンクロしていたんですね。
望>
そうですね。
それで「(ラップランドに)行こう!」って話になりまして、
今度は私の実家に帰った時に
「ラップランドに行こうと思うんだよね〜」
って言ったら、「いいね〜!」って言うんですよ、
ウチの親も(笑)
誰かしら止めてくれるんじゃないかと少し思っていたんですけど、
私の元職場の社長に話しても
「行ってきなよ、いや、行くべきだよ!」って(笑)
と、長くなりましたがそれがラップランドに行くきっかけです。
山本>
あらゆるものに後押しされた、ということですね。
と、このままの展開だと、今までいったい何をしてきた人なのかが
さっぱりわからないので(笑)
望>
そうですね(笑)
山本>
その辺をサラッとお話しいただけますか? 自己紹介的に。
卓也>
ではまず僕から。10年前に…、
いや、生まれてこのかたずっと鼻炎を患っていまして、
望>
あ、そこから?(笑)
卓也>
で、それをずっと放っておいて、あと扁桃腺も腫れちゃったので、
扁桃腺を取るのとレーザーで焼いて鼻通りを良くするという
手術を受けたんですよ。
山本>
10年前に?
卓也>
はい、10年前に。
そしたら朝の目覚めが良くなって妙に健康的になっちゃって、
そうなるとなぜか「運動しようか!」って思い始めたんです。
山本>
それまでは運動はしていなかったんですか?
卓也>
まったくしていなかったんです。
で、いろいろ友達と何をしようかと話していたんですけど
あまりにも不器用すぎて何も出来ないので、
ランニングだったら、そのうち他のことも
出来るようになるんじゃないかと思って走り始めたんです。
初めはマラソン大会(出場)で、やがてそれがトレイルランニングになり
山に入り始めて、それで山(登山)をやり始めたのが8年くらい前です。
それからハイキングしたりキャンプしたり。
で、今から6年前にサハラマラソンを走ったんですけど、
それから1年後か2年後くらいに妻と知り合いました。
その時はまだ会社に勤めていたんですけど、
それを辞めてハイキング用品のお店を始めたんです。
3年くらいお店をやって、閉じて、ハイキングに行きました。というところです。
山本>
その行き先がラップランド、ということですね。
卓也>
はい、そうです。
望>
では次は私が。自己紹介用のメモが…(笑)
山本>
なぞる人もめずらしい(笑)
オリジナリティーがあっていいと思います!
望>
私も走り始めたのが8年くらい前なのですが、
山本>
卓也さんと同じくらいの時期なんですね。
望>
そうですね。
健康のためとかダイエットのためとか
そういう軽い気持ちで友達と走り出して、
走るうちにいろいろな走る人たちと
知り合うようになったんですけど、
なぜかウルトラマラソンとかを走る人の
知り合いが多くなりまして(笑)
山本>
なるほど、ご自身がウルトラマラソンを始めるとか言うよりも、
まずは知り合ったわけですね。そういう人たちと(笑)
望>
はい、だからフルマラソンより先にサロマ(サロマ湖ウルトラマラソン)の
50㎞が初めて出たレースなんですよ。
山本>
あ、そうなんだ!初レースがサロマのハーフ!(笑)
望>
その後、宮地さん(宮地藤雄さん:トレイルランナー)とも
知り合ったんですけど、その頃はすごく貪欲で
いろんな人と知り合いになりたいと思っていて、
自分からTwitterとかで情報を見ては
イベントに参加したりしていたんです。
宮地さんが仲間内でやっていたナイトランのイベントに
「私も仲間に入れてください!」って飛び入り参加したりして(笑)
他にもセミナーに1人で参加したり、
1人でトレイルラン二ングのレースに出たりとか、
とにかくいろんなところに顔を出してましたね。
山本>
アグレッシブだったんですね。
望>
そんな感じで走ることにのめり込んで行ったんですけど、
トレイルラン二ングの方が面白いなと思って
はまっていきました。
山本>
あ、サロマの50㎞の後はトレイルラン二ングに行ったんですね。
望>
そうです。
第1回の神流トレイルレース(群馬県)が
トレイルラン二ングのデビュー戦でした。
神流にはその頃に入っていたSNSつながりの
ランニングチームの仲間たちと一緒に行ったりしてたんですけど、
その仲間たちとは他にも萩往還の140km走に出たりしておりまして…
山本>
(笑)
望>
あ、でも一応フルマラソンも走っています。
山本>
萩往還140kmの後に初フルマラソン(笑)
望>
初マラソンは湘南国際マラソン(神奈川県)で、
その時が一番速くて自己ベストで4時間20分だったんですね。
サブ4になりたかったんですけどなり切れなかった、
という感じで(笑)
山本>
そういうところもアグレッシブだったわけですね(笑)
望>
そうですね、アグレッシブでしたね(笑)
で、宮地さんから
「サハラマラソンを走った人の報告会があるから来ない?」
って誘ってもらえて、その報告会で
「あ〜、変わった人がいるんだな」
って思って、それが夫との出会いですね(笑)
でも、それで出会ってすぐ結婚したわけではなく、
その翌年くらいにまた会う機会がありまして。
山本>
二人の馴れ初めみたいになってきました(笑)
卓也さんはサハラマラソンの後、いろいろレースに出たんですか?
卓也>
一応出てはいたんですけど、サハラの前の方がいっぱい走っていて、
やはり少し燃え尽きた感がありましたね。
引退した人がちょこちょこレースに出てはゆっくり走って
「みんながんばっているね〜」って言っているようなのって
よくあるじゃないですか。
そんな時期がしばらくあったんですけど、
それよりはハイキングや登山に力を入れていた時期がありました。
望>
私は結婚してからですね。
登山、ハイキング、ボルダリングとかはじめたのは。
それまで、そういう世界を知らなかったので。
私はもともとは文系でインドアな人間だったんですけど、
体を動かし始めてからはお友達も増えて楽しいなと思ったし、
それまで自分が今まで知らなかった世界を知ることが
すごく楽しかったんです。
絶対出来っこないと思っていた50㎞走ることだとか、
そういうのが出来るようになるとやったことが無いことを
どんどんしてみたいと思うようになったんですね。
それまで縦走って言葉も知らなかったんですけど、
新婚旅行は北アルプス3泊4日の縦走だったんです。
何日もお風呂に入らなかったり重たい荷物を担いで
山を登るというのも考えられない世界だったんですけど、
いざやってみるとすごく楽しかったんですね。
顔も汚れて頭もかゆくてどうしようもないんですけど、
そんな今までにない自分がすごく新鮮でした。
でも、今回のラップランドはさらに長いんですよね。
そうなったら自分はどうなるんだろう?
トレイルへの興味よりそっちに興味がありましたね。
山本>
どんどん好奇心と言うか自分の中の未知なる世界に
興味が湧いてきたんですね。
望>
たまたまラップランドだっただけで、
もしここに「アメリカのトレイル」って言う本があったら
「アメリカに行こう!」ってなっていたかも
知れないなって思います。
(つづく)
次回は、いよいよ旅で感じられた日常と非日常についてのことなどドドーンと
話していただいてますのでお楽しみに。