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栗城史多の夢「冒険の共有」〜新たなるチャレンジ〜その4

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現在、秋期エベレスト単独無酸素登頂中の栗城史多さん。

(2015/10/7現在)

ド級!が生まれたきっかけのひとつは栗城さんとの出会いでした。

冒険の共有という壮大なプロジェクトにチャレンジされている栗城さんとの雑談の最終回です。

(雑談は前回のエベレスト後、凍傷からの復活でブロードピーク登頂に成功された直後です)

 

 

第一弾:栗城史多の夢「冒険の共有」〜新たなるチャレンジ〜その1

第二弾:栗城史多の夢「冒険の共有」〜新たなるチャレンジ〜その2

第三弾:栗城史多の夢「冒険の共有」〜新たなるチャレンジ〜その3

 

(文章・写真=池ノ谷英郎/聞き手=山本喜昭)

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山本>

ネットで冒険の共有を配信をしながら、

全国で講演活動もされていますよね。

それはやっぱりリアルに体験を伝えるってことなんですね。

 

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栗城>

そうですね、講演は人と繋がれる、という思いがあるので。

僕が講演で意識しているのは、僕が一方的にしゃべって

終わりじゃないんですよ。

そのあとサイン会とかさせてもらっているんですけど、

そういう時に何をするかというと、

その人から話を聴くんです。

「今日の講演はどうでしたか?」とか。

それがやっぱり楽しいし、それが結構重要だなって。

 

 

山本>

そうすると一方通行じゃないですよね。

 

 

栗城>

はい。たとえば高校生とかがサイン会で

「今度受験なんです」って言ってくれたら、

カバンにサインと一緒に小さく「合格!」とか書いてあげて、

それが3年くらいたってから「合格しました!」って

報告に来てくれたり、そういうのがうれしいし、

そういうのが大切なんじゃないかなって思うんです。

講演は話すだけじゃなくて、ほんの短時間でも来てくれた人と

繋がれるというのは重要なんじゃないかなって思うんです。

でもやっぱり僕って講演に向いてないのかなって…

 

 

山本>

え、そうなんですか?

あれだけやっていて向いてないんですか(笑)

 

 

栗城>

よく言われるんですけど、滑舌が悪いって。

緊張すると滑舌が悪いんですよ(苦笑)

 

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山本>

話し出したら緊張しているようには見えないですよね。

 

 

栗城>

そういう風にがんばっているんです(笑)

終わった後は結構落ち込んだりとかありますし…

やっぱり向いているとは思わないですね。

 

 

山本>

話すより書く方(執筆)がいいですか?

 

 

栗城>

そうですね、僕はどちらかと言えば書く方が好きかなって思います。

 

 

山本>

映像にしても結構しゃべられています。

 

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栗城>

あ、それは大丈夫なんですよ。

やっぱりそこがどういう環境で

どういうところかとかレポートというか説明は必要ですから。

でもすごく難しいのは、カメラで撮影できている時は

まだ大丈夫なんですけど、本当に余裕が無いとき、

エベレストの西陵で凍傷になって下山した時とかは

まったく撮影できないんです。

シシャパンマ南西壁ってところで滑落して、

クレバスに挟まって助かったことがあるんです。

その時も死ぬかもしれないと思って

1日を過ごしたんですけど、もしかしたら撮ろうと思ったら

撮れたかもしれないんです。

胸元にiPhoneがあったので。

でも、やっぱり撮れないですよね、そういう余裕は無いです(苦笑)

 

 

山本>

そうですよね(笑)

 

 

栗城>

そういう時に撮れたらすごいだろうなって思いますよね。

今はそれを目指したい(笑)

 

 

山本>

それはものすごいリアリティーですよね(笑)

 

 

栗城>

あと、最近思うんですけど、ウェアラブルカメラって

あるじゃないですか、GoProとか。

僕も2008年からああいうのを使っているんですけど、

やっぱりGoProによって、いろんな人たちが

いろんなものを撮って映像表現できる時代になったんですけど、

僕の映像ではあんまり使っていない。

やっぱり手持ちのカメラが重要なんだなって(笑)

 

 

山本>

臨場感、ですか?それは。

 

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栗城>

そうですね…やっぱり伝える質が

もしかしたら違うのかもしれないですね。

手持ちのカメラで「今、こんな感じです」って撮るのと、

GoProをヘルメットに着けて撮るのとでは違うんです。

なんかこう…自分で自分を撮るナルシストみたいな人を

増やしたいのかもしれないですね(笑)

 

 

山本>

最近は世の中セルフィー(自撮り)ブームですからね(笑)

 

 

栗城>

じゃ、だいぶ流れが来てますね(笑)

 

 

山本>

次回のエベレスト挑戦は決めているんですか?

 

 

栗城>

はい、タイミング的には秋に登ろうと思っています。

それまでは1回春にヒマラヤにトレーニングで

登ったりとかする予定です。

なんとなく今回はちょっと自信があるんですよね。

 

 

山本>

それはどういうところから?

 

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栗城>

まず1つは、ブロードピークに登るにあたって

凍傷で2年間山に登れなかったんですけど、

そこで今まで見えなかったものが見えてきたというのが大きいです。

トレーニングの中に山の先輩に言われたのが、

「大きな事故の後には、いい登山ができるよ」

「たぶん(これからの)栗城君はいい登山ができるよ」って。

正にその通りで、それまでの自分というのはどこかで

がむしゃらに頑張る、頑張れば頑張るほど

心のキャパシティみたいなものがいっぱいになって

無理が来ていたんだと思うんです。

実際、2012年くらいって結構鬱になっていたりしました。

そんな状態でシシャパンマに行って、

出だしでいきなり足を捻挫したんです。

今までそんなこと一度もなかったので、それって不吉なんです。

本当はそこで止めるんです。すごい人はそこで止めるんです。

 

 

山本>

なるほど、五感で感じて「これはヤバい」というか。

 

 

栗城>

登山家のメスナーさんも言ってますけど、

「レコードみたいに針がぐるぐる回っていて、

その針とレコードが合わないときは登山を止めて

ベースキャンプにとどまる」ってことなんです。

続けていると不思議とそういうのが分かるみたいなんですけど、

僕はやっぱり分からなかった。

出だしで足を挫くなんて明らかにおかしいんです。

そこには「何かおかしい」って予兆があったんですよ。

だから止めるべきだったんです。

でも、これ我慢すれば行けるんじゃないか、

と思って頑張ろうというのが怖いんですよね。

悪循環で突っ込んで行って滑落して右手の親指を骨折して…。

で、本来はそこで止めておくべきだったんです。

でも、その3か月後にエベレストの予定があり、

ケガも治って自分なりに準備ができていたので行ったんですけど、

無理をしてしまって下山中に両手と鼻が凍傷になってしまったんです。

そういうのって実は僕だけじゃなくて

山の先輩方も同じように事故に遭っているんですね、不思議なことに。

 

どこかで自分の限界を超えてしまい、

帰らぬ人になってしまった人もたくさんいます。

自分が実際その状態になってようやく

「そういうものなのか」って見えてきたんです。

それがとても大きかったですね。

 

 

山本>

そういう予兆を感じられるようになったってことなんですか?

 

 

栗城>

そうですね。

一番いけないのは楽しんでなかったってことなんです。

「楽しくなかったら下山しろ」って

山の先輩も言っていて、楽しいから頑張れるし

楽しくないときは心に余裕が無いので

挑戦を続けていてもいい結果が出せないんです。

 

 

山本>

どこかに無理が来てしまう、と。

 

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栗城>

2012年の頃というのは「登れていない」という

プレッシャーがあったり、資金面とか

いろんなことがあったんですけど、

それを全部自分で背負っていたんですね。

目に見えない荷物が重過ぎたんですよ。

確かに山は好きだし挑戦するのも好きなんだけど、

本当に心の底から笑って

「じゃ、行ってきます!」って

言えていたかというと、なかなか難しかったかなって。

 

 

山本>

バランスが悪かったってことなんですね。

 

 

栗城>

そうですね。特にエベレストはもう不運の連続で、

2009年に中国側から登った時は、

中国政府にチベット自治区から外国人は全員出なさい!って
帰されちゃったり、

2011年は僕の仲間のシェルパがカトマンズの空港から

2機に分かれて行ったんですけど

1機墜落して亡くなっちゃったんです。

さらに初めて同行したカメラマンさんが

ベースキャンプに着いてすぐに急病で亡くなってしまったり。

山に登れるような状況じゃないのが続いていて、

本来ならそこで止めるべきなのに、仲間も亡くなっているし…

変にどんどん背負ってしまって最終的に鬱っていう

形になって表れていたんです。

だからこの凍傷とか滑落も突発的な事故とかじゃなくて、

前からつながっていたことなんです。

 

 

山本>

それだけ予兆があったってことですね。

 

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栗城>

そういう風になった時に全部見直して、

原点回帰して、ブロードピークは楽しもう!と考えました。

冒険の共有もあるしいろんなものを背負っていくんですけど、

本当に楽しかった頃の「冒険の共有」に戻ってやろうって。

(ブロードピークでは)それができたんですよね。

 

 

山本>

なるほど。

 

 

栗城>

もう1つ、

凍傷の治療などでいろんなお医者さんに会ったんですけど、

皆さん僕の活動を説明すると

「人間ってどうやったら無酸素で高い山に登れるんだろう」

って興味を持ってくれるんですよ。

「たぶんこういうことじゃないか」とか。

で、いろいろ教えてくれるんですよ、呼吸法とか。

それもたぶんブロードピークでは良かったんじゃないかなって。

 

 

山本>

それを取り入れたんですか?

 

 

栗城>

取り入れましたね。あ、でもこれは企業秘密です(笑)

 

 

山本>

企業秘密ですか(大笑)

 

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栗城>

全然大したことじゃないんですけどね(笑)

たとえば昔ならトレーニングなら

ジムでガシガシやるって感じだったのを、

バランス重視に変えて体幹を意識することに変えてみたりとか。

いろんなことを変えていったというのがあって、

それはすごく良かったんじゃないかと思いますね。

それと、エベレストに何度も登りに行っていると

なんとなくイメージができるので、

今回のブロードピークの挑戦の時にも

「こういう感じで行けるかな」というのがイメージできたんです。

 

 

山本>

成功のイメージができたんですね。

 

 

栗城>

昔は「これは行ってみて初めて見えるのかな」

って世界がすごくあったんですけど、

まあそれはそれで楽しみではあるんですけど、

今はだいぶ登るイメージができているんです。

 

 

山本>

そのイメージができているっていうのはすごいですね。

スポーツ選手が結果をイメージをして

試合に臨んだりするのと似たような感じですよね。

 

 

栗城>

そうですね。

 

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山本>

エベレストへの再挑戦、冒険の共有を楽しみにしています。今日はありがとうございました。

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栗城さんとの雑談はここまでです。

ド級!ではこれからも栗城さんの活動を応援していきます。

 

第一弾:栗城史多の夢「冒険の共有」〜新たなるチャレンジ〜その1

第二弾:栗城史多の夢「冒険の共有」〜新たなるチャレンジ〜その2

第三弾:栗城史多の夢「冒険の共有」〜新たなるチャレンジ〜その3

 

 

栗城史多さん公式サイト

http://www.kurikiyama.jp/

 

 

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