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アイスクライマーズ・エッセイ 〜八木名恵の氷壁アックスボンバー〜 その5

アイスクライミングW杯アメリカ戦Day2

Speed競技に出る為の早起き2日目でもあるこの日、いつも通りの準備をして05:30にホテルを出発。無事1番乗りで会場入り。

今回のアメリカ戦のSpeedはW杯ツアーポイントに加算されないという(理由はきっと写真の通り氷がないからだと思われる)。大して早く登れないのに全戦参戦する身としては1戦でも多く参戦して、少しずつでもいいからポイントを稼ぐという作戦が通用しないので残念なお知らせではある。だからといって参加しないというのはまた別のお話。

基本的にSpeedの練習をする場所は日本では皆無に等しいので実践で練習していくしかない。

とにかく「登る」というチャンスが目の前に来たら迷わず、脳を経由せず瞬時に”YES”と答えるだけだ。

結果は写真の通り。世界のトップから比べれば、鈍足と言っても過言ではない。

ハッキリ言って「カッコ悪いなぁ~」と思う。出ることすら躊躇う時だってある。

でも、このSpeedに最初に出ると決めた時から、自分への約束がある。

 

1.どんなに遅くてカッコ悪い登り(フォーム)でも絶対に途中で投げたり、諦めたりしない。

2.可能な限り「不参加」を選択しない。

3.真摯に取り組む。

4.リザルトを残す。

5.登るからには試行錯誤と工夫をすること。

 

日本ではSpeedという競技の馴染みが薄く、W杯に参戦したての頃なんてルールすらよくわからなかった。今でも細かなルールについては理解が及んでいない部分もあり、辞書を片手に英文を睨みつけなければならない。

それでも、私が挑戦するのは、前述の通りである。

 

そして、私が今までの経験から感じていること―

17歳から10年以上に渡りあらゆるコンペ(リード、ボルダ―、アイスクライミングとジャンルを超えて、ユースのコンペやW杯、アジア選手権や国内トップのコンペは勿論、ローカルコンペに至るまで)に出続け、それと同時に10年以上クライミングに関わる仕事に携わってきた。「エキスパート」と呼ばれる方から「今日、初めてクライミングをする」という方にも出会った。

この出逢いの中で私は、人生で初めてクライミングをする人も、クライミング経験が豊富で、卓越したテクニックがある人も同等にクライマーのキャラクターが登りに現れてると思っている。

粘り強い人、熟考する人、大胆な人、飽きっぽい人、丁寧な人、諦めない人…本当にその人の性格がそのまま登っている姿勢に出ている。

だから、私はコンペでいい加減な気持ちでトライはしない。

 

W杯に行けば、世界中に「○○の誰々」と呼ばれる。私なら「日本のNae Yagi」と記憶される。

その時最低でも「あの、遅いけど頑張ってるヤツね」とか「絶対に諦めない日本女子ね」となりたい。

仕事でいい加減な人とは進んで仕事を一緒にしたいと思わない様に、「あのいい加減な登りのヤツと話してみたい」とはならないから。

日本人のマナーの良いところや、勤勉なところや、そういった良いイメージを台無しにしたくない。

小さなことや地味なことをコツコツ積み重ねる。すると選手だけではなくジャッジ(審判)や運営スタッフやらボランティアの人や各国のコーチ、ルートセッターからも声を掛けてもらえる様になった。

「Nae、元気か?調子はどうだい?」という具合に。「こっちに来いよ、一緒に食事しよう。」や「写真を撮ろう」と誘って貰えたりもする。

 

私はただの主婦で、愛国心が猛烈に強いわけではないけれど、”日本”の主婦でもある。

これは私のアイデンティティー。

 

Speedの1本目動画

 

Speedの2本目動画

 

(つづく)

(文・写真、動画提供:八木名恵)

※この文章は八木名恵の主観であり、クライミングに対する意見ではありません。 八木名恵はコンペティターであり、山岳全般の専門家ではありません。アウトドアアクティビティーを楽しまれる際は専門家の意見を参考にして頂き、安全やマナーに十分配慮して無理のない計画をお願い致します。

その1はコチラ↓

アイスクライマーズ・エッセイ 〜八木名恵の氷壁アックスボンバー〜 その1

その2はコチラ↓

アイスクライマーズ・エッセイ 〜八木名恵の氷壁アックスボンバー〜 その2

その3はコチラ↓

アイスクライマーズ・エッセイ 〜八木名恵の氷壁アックスボンバー〜 その3

その4はコチラ↓

アイスクライマーズ・エッセイ 〜八木名恵の氷壁アックスボンバー〜 その4

 

八木名恵プロフィール

プロアイスクライマー八木名恵(やぎなえ)