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雑談インタビュー〜福元ひろこさんの歩く旅、巡礼の路〜その2

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世界中の巡礼路を歩く旅人の福元ひろこさんとの雑談インタビューの二回目です。

前回はサンティアゴ巡礼の旅に至るまでのいきさつバナシでしたが、

(前回はコチラ:http://docue.net/archives/contents/fukumotohiroko_1

いよいよ旅のお話に突入していきます!

 

(文章・写真=池ノ谷英郎/聞き手=山本喜昭)

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福元>

フランスのルルドという聖地があって、私はそこから歩いたんですね。

それっていわゆるサンティアゴの正規ルートからは外れるんですけど、

私の中でこだわりがあって、キリスト教徒ではないんですけど

どうしてもルルドから歩きたかったんです。

ちょっと変則ルートではあるんですけどね。

でも、私はフランス語が出来ないのと体力が無いこともあって

最初の5日間は毎日泣きながら歩いていたんです。

泣きたくて泣いてるんじゃなくて、本当に

勝手に涙がこぼれ落ちてくるんです。辛くて(笑)。

私は栗城(史多)さんみたいな山男ではないから

10数㎏の荷物を背負って歩くなんて慣れてないし、

しかも正規ルートじゃないのでルルドからの道は地図が無かったんですよ。

かろうじて手に入れた地図はA4のプリントアウトした紙をホチキス留めしただけの簡易なもので、しかもフランス語だし(笑)

道も正しいか分からないし、荷物は重いし。

重いと、腰とか足より、肩が痛くなってくるんですよね。

で、泣きたいわけじゃないけど気が付くと頬を涙がツーっと(笑)。

だから一歩一歩、歩きながら

「今日でやめよう、今日でやめよう」

って感じでした(笑)。

 

 

山本>

へぇ~。ルルドって、地図でいうとどの辺になるんですか?

でも正規じゃないから載ってないってことですよね。

 

 

福元>

そうですね。正規ルートじゃないから今手に入るサンティアゴ巡礼路の

ガイドブックとか地図にはほとんど載ってないと思いますね。

(2014年時点)

一般的に巡礼される皆さんがスタートするのは

サン・ジャン・ピエド・ポーというところで

ピレネー山脈の麓の近く、フランス側です。

ピレネーを越えるとすぐにスペインに入ります。

道の特徴としては、フランス国内はアップダウンが激しくて

スペインに入ってからは結構平坦になるんですけど。

とにかく私はルルドから毎日泣きながら歩いてました(笑)

 

 

山本>

ある意味、右も左も分からないって状態ですよね。

 

 

福元>

本当に分からない状態です。前も後ろも分からない!

 

 

山本>

(笑)

 

 

福元>

もっと言うと、どこにいるのかも分からないということですよ。

地図の中の(笑)

 

 

山本>

地元の人たちはサンティアゴ巡礼の道を知っているんですか?

聞けば教えてくれそう?

 

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福元>

私が泣きながら歩いていたエリアの人たちは、

サンティアゴ巡礼路自体は知っているけど、そこからどうやって

(どの道を歩けば)サンティアゴに行けるのかは知らなかったですね。

なんども繰り返してしまいますが、私が出発したルルドは

(メジャーなルートから)外れている場所でしたから。

ただ、(サンティアゴ巡礼の象徴である)ホタテ貝の威力ってすごくって、

ホタテ貝を着けているともう巡礼者だと分かってくれます。

特にルルドはキリスト教の聖地だから

特にそうなのかも分からないですが、

ホタテ貝をリュックに付けていると

「巡礼者なんだね。がんばれ!」

って感じで笑顔で応援はしてくれます。

ただ、彼らは道は知らないですから教えてはくれません。

ルートには一応道を示すサインはあるんですけど、

フランス国内はスペインとサインの種類が違うし、

フランス国内ではロングトレイルが流行っているのか、

いろんなルートのサインがあるんです。

サンティアゴ巡礼路以外のルートのサインが。

そんな感じだから、もうフランス国内では毎日迷子って感じでしたね(笑)

 

 

山本>

その時の宿泊はどうされていたんですか?テント泊とか?

 

 

福元>

いや、私はテントは背負っていなくて、

フランス国内はジットと呼ばれる、日本でいう

山小屋やペンションみたいなものがあって、

そこに泊まってました。

 

 

山本>

右も左も分からない中で、なんとかそれを見つけて…?

 

 

福元>

それがですね、歩いていたら幸運なことに

1組の巡礼者を発見したんです。

その時私は道を間違えたと思って引き返していたんですけど、

ちなみにルルドを出発して20分くらいしか歩いてない地点で

すでに迷って(笑)。

とにかく、とりあえずルルドの聖域に戻ろう、と思って、

来た道を戻って歩いていたら、

ホタテ貝を着けた巡礼者が来て

「あなたいったいどこに行くの!?サンティアゴはあっちだよ」

って言われて。

私も「分かっているけど、道を間違えたんだ!」

みたいな感じで答えました。

それが出会いでした。

「私は今日から(巡礼の道を)歩き始めて

右も左も分からないんです」

って言ったら、彼らが

「じゃ、一緒に行こう」

って言って、一緒に歩きはじめたんです。

フランスの大学に留学している、オーストラリア人の女の子と、

スコットランドの男の子の2人組だったんですけど。

そんな感じで3人で歩いていて、小さな村についたんです。

そうしたら、その村のバルで、ずーっと外を見ているおじいさんがいて、

私たちを見つけると、「君たちは巡礼者か?」みたいな話になり、

この村には巡礼者のためのジット(宿)があるよ、と教えてくれたんです。

実はそのおじいさんも巡礼者だったんです。

おじいさんはフランス人で、英語が分からないのですが、

フランス留学中のオーストラリア人の女の子が通訳してくれて。

それで、彼ら、というのはルルドから一緒に歩いてきた2人ですけど、

2人はまだ歩けるから予定どおり1つ先の村まで行くことにし、

私はもう歩けないから、この村で泊まる、と伝えました。

そうしたら、オーストラリアの女の子が、

フランス人のおじいさん巡礼者の方にフランス語で私のことを

説明してくれたんです。

「この日本人はフランス語が出来ないけど

サンティアゴまで行きたいそうなんだ。

右も左も分からなくて、しかも地図も持ってないけど、

彼女をよろしくな!」

みたいな感じで。フランス語分からないから、内容は推測ですけど(笑)。

それ以降はそのフランス人のおじいさん巡礼者、

ロジャーという名前なんですけど、にひたすらついて行きました。

ロジャーはフランス語で一生懸命話しかけてくれるんだけど、

申し訳ないくらい、意味がわからない。

そして私が一生懸命英語で返すんだけど、驚くほど伝わらない(笑)。

まぁ途中からは、言語を超えた何かによって分かり合ってましたけど(笑)。

フランス国内はそんな感じで歩いてました。

本当はフランス国内では宿は予約していないとダメなんですけど、

ラッキー、というか、本当にありがたいことに、ロジャーが毎日、自分が予約をしていた宿に「もう一人増えたからよろしく」

って電話をしてくれたので泊まることが出来たんです。

 

 

山本>

じゃ、フランスを抜けるまではロジャーと

一緒に行動していたんですか?

 

 

福元>

そうですね、ほぼ一緒でしたね。
途中のメジャールートに合流してからは他の巡礼者とも

出会えたのでその人たちとも一緒に歩いたりもしました。

 

 

山本>

メジャールートに出ると巡礼者にも結構出会うものなのですか?

 

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福元>

メジャールートにもいくつか種類があるんですけど、

一番有名な道が「カミーノ・フランセス」っていう

「フランス人の道」というルートなんですね。

そこは出会うどころか巡礼者ばかりで、一歩間違うと

まさに蟻の熊野詣状態です。

私が歩いた年はたまたま“聖年”という、

「この年にサンティアゴ巡礼路を歩くと、

カトリックにおけるすべての罪が許される」

といわれる年で、巡礼者がすごく多かったんです。

だから「フランス人の道」に入ってからは、

(原宿の)竹下通りとは言わないけど、

まぁかなりの数の巡礼者がいました。

 

 

山本>

その聖なる年に行ったっていうのも、たまたまだったんですよね?

 

 

福元>

たまたまです。というか、知らなかったですし(笑)。

もっとも、聖年じゃなかったらサンティアゴ巡礼路の

ガイドブックなんて書店で平積みになっていないですよね(笑)。

 

 

山本>

なるほど(笑)。そしてスペインの平坦な道に入り…

 

 

福元>

泣きながら歩いていたのになんで帰らなかったのかと言うと、

ピレネー山脈の麓のどこにいるのかも分からないような

小さな村々を歩いていたので、帰りたくても帰れなかったんです(苦笑)

 

 

山本>

はっはっは(笑)

 

 

福元>

分かります!?帰れないんですよ!

 

 

山本>

帰りたいけど分からなかったんですね(笑)

 

 

福元>

バスも無いし、電車も走って無いし、タクシーも無いし。

だから、空港に行ける交通機関があるくらいの規模の町や村に

着くまでは、私には歩くしか帰る方法が無かったんですよ!!

だから私は帰国するには歩くしかない、

歩くしかないから歩いている、そんな感じでした(笑)

でも、5日間くらいアップダウンのあるところを歩いていたら、

だんだん体力もついてくるし歩き慣れて来るし、

歩き方みたいなものも身に付いてくるものなんですね。

その頃に交通機関のある大きな町についたのですが、

ちょうど英語が出来る人にも出会うようになって、

お話をしたりしているうちに楽しくなってきたんです。

歩くことが。

それで、「もうちょっと歩いてみるか」

って気持ちになれたんです。

 

 

山本>

5日間くらいは帰るために歩いていたわけですよね(笑)

 

 

福元>

そうですね、やめるにも大きな町に行くしかないって感じで(笑)

 

 

山本>

その5日の間に帰らない事柄が起こる。

うまいこと…なってますね(笑)

 

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福元>

それが私がサンティアゴへの道を歩いた中で得た

一番大きなことだったんですよね。

つまり、「この世の中は、本当にうまくいくようになっている」。

その他にもいろんなことが起こったんですけど、

全部“うまいこと”なっているんです。

最初の巡礼者との出会いだって、別にその巡礼者に出会いたくて

引き返したわけではないのに、

道に迷って引き返したからこそ出会うことが出来た。

そういう体験の連続だったんです。

それで、「本当はこの世の中は心配しなくてもうまくいくんだな」

ということを、この道を歩くことで体感出来たんです。

 

 

山本>

へぇー面白い!その他に起こるべくして起こったことはどんなことですか?

 

 

福元>

毎日そういうことが起こるので、これって言いづらいんですけど、

分かりやすいのを言うと…。

私、スペインに入ってからは歩くのが本当に楽しかったんですけど、

唯一日本に帰りたいと思ったことがあったんですね。

 

 

山本>

第2回帰国願望が(笑)

 

 

福元>

はい、第2回帰国願望は、虫にやられたんですね。

旅人の方はよくご存知かもしれないですけど、

チンチェスという、日本でいう南京虫らしいんですけど。

とにかくある日から原因不明の発疹が出来て

すごく痒いんです。

昼間は平気なんだけど夜になると猛烈に痒くなって、

朝見ると自分が無意識にかきむしった後で

血が出ているくらいなんです。

薬局で買った薬でも日本から持っていった薬でも治らなくて、

日に日に増えていくんですよ。

私がそのとき悟ったのは、人は痛いより

痒いほうが苦しいんだなってことです(笑)。

本当に痒くて痒くて眠れないし、

眠れないで昼間20kmくらい歩くからフラフラするし、

で、夜になると猛烈に痒い。その繰り返しです。

もうやだ、日本に帰りたい!って思いましたよ。

とにかく、その痒みについては、

誰に聞いてもどの薬局に行っても分からなかったんですけど、

ある時、前の村から5kmくらい歩いたところに、

なぜかボブ・マーリーの旗が立っているところがあって…

 

 

山本>

ボブ・マーリー??

 

 

福元>

そうです。

なんかそういうレゲエな感じの雰囲気のところで(笑)。

で、なんとなく気になったので

「失礼しまーす」

って感じで一歩一歩入っていったんです。

そしたら中でおじさんたちがビールとか飲んでいて。

向こうの人たちって優しくて、

特にスペインではホタテ貝を着けていると歓迎してくれるんです。

私が

「失礼!ここは人の家の庭でしたね」

って後退していくと、

「いやいや、ここはバルだし、実はここはアルベルゲなんだよ。

お前は泊まりに来たのか?」

って言うんですね。

で、泊まりに来たつもりはまったく無かったけど…、

だって出発してから5kmしか歩いてないし。

つまり1時間ちょっとですよ。

だけど、なんか、なんとなく、とりあえず中を見せてもらおうかな、

と思って。

それで中を見せてもらったら、すごく素敵な場所だったんです。

巡礼路を歩くときは毎日だいたい20km〜35kmくらい歩くのが

平均なので、5kmしか進んでないのに

ここで泊まるなんてありえない感じだったんですけど、

なんとなく「あ、もうここに泊まろう~」

と感じて、泊まることにしたんです。

そしたら宿の世話をしてくれる女性がやってきて、

宿泊の手続きとかをするのに私が腕をまくったら、

「!!ちょっと!その腕見せて!これはチンチェスだわ!

こっちへ来なさい。いいからいいから!」

って言われて。あとはもう言われるがままですよ。

シャワーを浴びて、持っているものを全部熱湯で洗濯して、

リュックサックの中身も全部出して

それから黒いビニール袋に入れて熱湯をかけて

リュックサックを消毒して、とか。

寝袋も全部洗わないとダメだとか言って、

すべてやってくれたんです。

しかも全部洗っているわけだから、

シャワー浴びた後の着替えがないわけですよ。

そしたら彼女が下着から何から全部貸してくれて。

恐ろしいほど身長も体型もほぼ同じでピッタリ、みたいな(笑)。

でも、もし私がふらっと立ち寄らなかったら

永遠に痒い痒い言っていたかもしれないんです(笑)

 

 

山本>

そうですよね。とっくに日本に帰ってますよね(笑)

 

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第2回の雑談はここまで。

お話はさらに、まだまだ続きます。

どんどん濃密な話にご期待ください。

 

 

雑談インタビュー〜福元ひろこさんの歩く旅、巡礼の路〜その1

http://docue.net/archives/contents/fukumotohiroko_1

 

 

 

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