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高繁勝彦「アドヴェンチャー・ランナーは荒野を駆ける アメリカ横断篇」 その1

imgp0981s日本縦断二回、アメリカ横断、オーストラリア横断、ニュージーランド縦断を経て現在、ヨーロッパ周遊の走り旅をしている冒険家がいる。

 

アドヴェンチャーランナー 高繁勝彦。

 

三輪の手押しバギーに生活のすべての荷物をつみこんで世界中を走る。

 

そんな高繁さんのかつての旅のエッセイをドキュウ!でも転載。

まずはアメリカ横断5000kmの旅の1回目から。

 

(文・写真:高繁勝彦)


モハヴィ砂漠(The Mojave Desert) 2011年6月

ロスアンジェルスを出て、山を越えればそこはもうほとんど砂漠。

飛行機に乗って空から見れば分かるのだが、アメリカの西半分は結局のところほとんど砂漠で、町というのは人が意図的に木々を植え、家を建て、道路を整備して作り出したものに過ぎないのだ。

かつてオーストラリアのナラボー平原を自転車で横断して以来の砂漠の旅。

しかも今回は二本脚。

砂漠の旅に必要なのは水と食糧、あとは絶対に走り切ろうという固い意志のみ。

 

imgp0984モハヴィ砂漠のスタートがバーストウ(カリフォルニア州)。

ここからラフリン(ネヴァダ州)まで約300キロ。

これを6日間でノンストップで走るという計画。

1日50キロ平均。

幸い道はほぼフラット。小高い丘はあるものの足にダメージを与えるほどのものでもない。

ただ、問題は風と暑さと空気の乾燥した状態が続くということ。

時期的には初夏、ただ大陸の気候は時として予測がつかないもの。

普通に暑い日もあればとことん暑い日もある。

暑くない日もあるし肌寒い日だってあるに違いない。

かつてトライアスロンをやっていた頃、最高気温38度の中でレースを経験したことがある。

高温時に走る際には、体を内からと外からと同時に冷却しないといけない。

すなわち水を飲むだけでなく、頭から水をかぶったり、濡れタオルやスポンジで首筋や後頭部、火照った体を冷やす必要があるということ。

ただ、砂漠では水は貴重品。

極力水を節約するために、頭には日除けのフラップつきのキャップ(Gofield 提供のフリルネック)をかぶり、アームカヴァーとゲーターを腕と足に着用して肌を直射日光にさらさないようにした。

 

imgp0963sカリフォルニア州バーストウの町でオフを1日設けて、食糧や飲料水の買出しをしておく。

インスタントラーメンや缶詰の野菜や魚や果物。クッキーやパイの類。これにゲータレードや水が加わる。

愛車のMUSASHI号(バギー)には最大100ポンド(約45キロ)の荷物が積める。

本来は双子の赤ちゃん用のベビーカー、そこにあえてキャンプ用品や衣類等の生活必需品を積んで走るのが自分の旅のスタイル。

 

imgp0986s町から町の距離が40~50キロ程度なら1日で走れるが、60~70キロになってくるとややきつい。

それに、町があったとしてもトラックステーション(ガソリンスタンド兼コンビニ・レストラン)程度しかないところもある。

水や食糧は重いけれど多い目に用意するのがいい。

特に飲料水はぎりぎりの状態で走るのは精神的なストレスにもつながる。

これはレースではない。

よってエイドステーションもない。

すべてセルフサポートであるがゆえに自分の選択で決めるしかない。

 

imgp0996sハイウェイ40号線に並行して走るオールドナショナルトレイルハイウェイをたどる。

ここは歴史的国道ルート66。

たいていの車は州間高速道(インターステイトハイウェイ)を走って東に向かうので、このルートを通るのは観光目当てで走る車かバイクくらいのもの。

サイクリストもたまに通るのだろうけれど、自分が走っている時期には一人も会うことがなかった。

ましてやランナーやウォーカーは…。

ただ、道中で聞いた情報では、自分より一週間ほど前に、中国人の女の子が飼い犬と一緒に歩いてルート66をたどりシカゴを目指しているという…。

どこかで追い越せるだろうか…?
初日はLAのMASAさんが車で応援に駆けつけてくれた。

 

dsc_3374sMASAさんがLAのミツワで買ってきたガリガリ君を砂漠で食べる。

 

imgp1014s映画で有名になったバグダッドカフェでも休憩。

 

imgp1015s初日はニューベリースプリングスのRVパークでキャンプ。

 

imgp1017s夕食は、MASAさんがホッケの干物を焼いてご飯を炊いてくれた。

昼間はあまり気にならなかった風…ところが夜になって寝袋に入ってから、テントが激しくバタバタいう音で目を覚ます。

砂嵐だ。

テントのペグ(止め釘)が抜けている。

突風といっていいのだろう。

砂地にテントを張っているのでペグも完全に地中に埋まらない。

ペグが抜けないように大きな石を置いて固定するが、それでも砂嵐は容赦ない。

中に人がいれば吹き飛ばされることはないだろう…と多寡をくくったが、ひょっとしたら…という恐怖感も湧いてくる。

車の中で寝ていたMASAさんも気遣って夜中ペグを打ち直してくれたらしいが、自分はまどろみの中気付かなかった。

朝目覚めたら顔も口の中も砂埃でざらざら。

髪の毛の中もフケかと思うくらい砂まみれ。

テント内のフロアは砂で真っ白。

テントを撤収する際ペグの一本がなくなっていることに気付いた。

辺りを探すが見つからない。

突風でフライシートが煽られた際に飛ばされたのだろう。

この砂の中では見つかりっこない。

これがモハヴィ砂漠…。
いや、これはまだ砂漠で経験することの一部でしかないのだ。
アドヴェンチャー・ランナー高繁勝彦、おじけづいたか?
いやいや…何事も経験。

これしきのこと…。
とはいえ不安な気持ちがまったくないわけではなかった。

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(つづく)


<高繁勝彦プロフィール>

アドヴェンチャーランナー 高繁勝彦 (たかしげかつひこ)